水久保文明(JCJ会員 千代田区労協事務局長 元毎日新聞労組書記)

「ヘボやんの独り言」より転載 

慰安婦問題の「日韓合意」を考える②止      18/01/18

 ナヌムの家のハルモニたちは、(日本に)きちんと謝罪して欲しいと言う。これが偽らざる真実だ。彼女たちは、日本を恨んでいるわけではないともいう。そういう社会にしたことへの反省を表してほしいという意味なのだ。

 この意見は実に深い。深層にあの戦争について日本が〝総括〟していないことへの批判がある。いや、逆説的に見れば、あの戦争責任を日本が明確にしていないところに、慰安婦問題を根底から解決できない原因があるのではないか。だから、日韓合意に「心からおわびと反省の気持ちを表明する」と盛り込んだところで空疎に聞こえるのだろう。

 もしかすると、この問題は日本側がまともな歴史の総括をしない限り解決できないのかもしれない。一方で韓国では安倍首相個人に対する根強い批判もある。従軍慰安婦問題でNHKに圧力をかけたことや、歴史修正主義を擁護する発言を行ったことへの反発もある。それらのことについても、韓国側は「新たな措置」を求めているのかもしれない。

 そういうことに気づく日本の総理大臣ではないが、あの人に「合意は国と国との約束で、これを守ることは国際的かつ普遍的な原則だ。」と言う資格はない。彼は何をやったか。一例に過ぎないが、集団的自衛権について政府自らが違憲であると確認し、憲法学者もそういう見解が大勢であったにもかかわらず、強引にこれを認め、戦争法(安保法制)を作った。政府間の合意とは質が違うが、自国の憲法を平然と破る人にそういう発言をする資格はない。

 そう考えてみると韓国政府の新たな提案に対する首相見解は、盗人が「盗人は悪い」と言っているようなもので、盗人猛々しい表明である。集団的自衛権は違憲である、ということこそ「普遍的な原則」だったのではないか。それを平然と破り去ったのは誰だったのか。無恥さ加減に辟易してくる。

 改めて申し上げておくが、国と国の協定(合意)は変更や破棄があっていいと考える。「合意」より重い「条約」には、通常、期限が入ったり破棄のための規定が入ったりする。日韓合意は慰安婦問題に特化されたもので条約ではない。「共に民主党」の姜昌一議員の発言のように、合意は「安倍晋三政権と朴槿恵政権の約束にすぎない」のであり、それに未来永劫に両国が縛られるということはない。

 今回はたまたま合意直後に朴槿恵政権が倒れ、新たな政権が生まれるという短期間に起きたことに過ぎない。政権が代われば合意内容に疑義が生じることを読み切れなかった、日本政府の関係者の責任もなしとしない。


★脈絡のないきょうの一行
希望の党と民進党の統一会派づくり破談。排除した側とされた側が一緒になるのは土台、無理。


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