水久保文明(JCJ会員 千代田区労協事務局長 元毎日新聞労組書記)

「ヘボやんの独り言」より転載 

労働組合としての今年の課題⑤改憲問題4止      18/01/11

 展開が長くなったが、もう少しおつきあいいただきたい。条文のうえでの危険性は分かったが、具体的にどういうことが起きるのだろう。紙数の関係で柱だけを表示してみると①土地収用の強制化②徴兵制の導入③一般人の命令違反者への罰則強化④軍法会議の設立⑤軍事秘密保護の強化と報道規制強化⑥軍事費の拡大⑦軍需産業の拡大⑧軍学共同の促進――などが起きる可能性がある。

 まだまだこれ以外にも戦前のような国民総動員、スパイ防止法の制定、有事の際の物資の拠出など、数えきれない事態が待っている。いわゆる「となり組」が復活するかもしれない。共謀罪法はそのための地ならし法だと断言できる。

 いくつか問題を掘り下げてみよう。まず徴兵制だが、今後、海外派兵が行われるようになれば、自衛隊員の応募者が減ることが予想され徴兵制〝必要性〟が生まれることは容易に想像できる。徴兵を国民が嫌うことは当然で、これを強制するには憲法に書き込むしかない。遅からずやってくるだろう。

 自衛隊が憲法に明記されると、〝何も変わらない〟どころかこのような激変が待っているのは間違いない。

 報道規制を考えてみよう。すでに2014年12月6日に「特定秘密保護法」が強行採決によって成立した。この法律自体も自衛隊の海外派遣・改憲の地ならしと言われてきたが、その通りだ。法律は公務員を対象としているが、それを聞き出したジャーナリストにも波及する。これがもっと拡大し国民全般に適用されることは明らか。

 南スーダンの「日報隠し」で、稲田朋美前防衛大臣は失脚したが、自衛隊が憲法に明記されたらあのような〝情報隠蔽〟は当たり前になる。情報不足の暗闇のなかでコトが進められ、気づいたら戦争がはじまっていたということになりかねない恐ろしさをはらんでいる。

 戦前、軍機保護法というのがあった。この法律を強化・改正するときに帝国議会で「一般国民に波及することはないのか」という質問がなされ、当時の政府と軍部は「ない」と断言した。そのうえで同趣旨の付帯決議を行ったのである。ところがどうだ。あっという間に国民をがんじがらめにしたではないか。

 その典型が元北大生・宮澤弘幸さん(戦後27歳で死亡)だ。宮澤さんの罪名は軍機保護法違反で、機密を漏らしたというものであった。機密の対象になったのは当時、絵葉書にもなっていた釧路空港を外国人教師に教えたというものであった。宮澤さんは無罪を主張したが、なんと当時としては最高の15年の実刑判決を受け、網走刑務所に送られたのである。戦後釈放されたが、獄中生活の厳しさがたたって27歳の若さで亡くなった。

 軍機保護法はえん罪の温床になった。秘密保護法、共謀罪法は同様の危険がはらんでいる。自衛隊が(軍隊として)憲法に明記されることは、「何も変わらない」どころか大変化をもたらすのだ。

★脈絡のないきょうの一行
安倍首相、平昌冬期五輪の出席見送り。慰安婦問題をめぐる韓国政府への当てつけだろうが、幼児的対応だねー。


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