水久保文明(JCJ会員 千代田区労協事務局長 元毎日新聞労組書記)

「ヘボやんの独り言」より転載 

労働組合としての今年の課題④改憲問題3     18/01/10

 自衛隊を明記した場合どんなことが起きるのかの前に、なぜあの人たちは加憲を言い出したのかを考えてみよう。これは、はっきりしている。9条は定着しており、そのものを変えることは国民の賛同を得られないと考えたからに他ならない。そこで自衛隊を憲法に書き込むこと(加憲)で、目的を果たそうという姑息な手段に出たのである。

 自衛隊が憲法に明記された場合どうなるかの本題であるが、この問題について過日、「平和と民主主義を推進する千代田の会」の合宿会議で議論した。弁護士の宮坂浩さんに問題提起してもらい、意見を出し合ったがその内容を紹介しながら考えてみたい。

 この「平和と民主主義を推進する千代田の会」という長ったらしい名前、歴史がある。横道にそれるが、紹介したい。結成は1985年。当時、国家秘密法案が議員提案され、この反対運動が千代田区内でも広がった。労働組合をはじめ法律事務所、民主団多いなどで「国家秘密法粉砕千代田共闘会議」をつくった。

 この会の運動は、ひきつづく拘禁二法や小選挙区制、PKO法反対などに引き継がれ、そのたびに名前を替えたが、平和や民主主義を守る恒常的な運動体にしようということで、この名前に落ち着いた。30年を超える取り組みを展開しているが、最近では改憲阻止を中心課題にしている。

 本題に戻るが、憲法に自衛隊が明記されればどういうことが起きるのだろうか。この裏にはとんでもないことが隠されている。①自衛隊明記によって、9条そのものの非武装論が否定される②集団的自衛権が憲法上容認される③「武力による威嚇禁止」などの平和に関する規範性が否定される――という問題が生じることになるのだ。ざっくり言えば、9条そのものが骨抜きになるということだ。

 推進派が考えているのは自衛隊を「防衛のための必要最小限度の実力組織」として憲法に明記することだ。あわせて、その指揮責任者を内閣総理大臣とし、国会の承認を必要とすることを入れようとしている。「防衛組織」として明確化することは、「戦力は保持しない」という現憲法を否定することになる。

 集団的自衛権については、ついこの間(2014年)まで政府さえ違憲としていたものである。それを安倍政権が剛腕で解釈をかえて現在に至っている。自衛隊を明記することは、自衛隊を公式に認めることであり、それは集団的自衛権を認めることと同意語だ。ということは、自衛隊を堂々と海外に派兵し、武器使用もOKということになる。

 現行9条は、武力による威嚇などを禁止している。これは「平和に関する規範性」と言われるもので、平和のためにはこうあるべしという「道標(みちしるべ)」でもある。自衛隊を明記することは、自衛隊が武器を持って戦闘行為に参加できることを意味し、平和維持のためという理由で武力行使を可能にするのだ。平和が、根底から崩れるのである。

(次回につづく)


★脈絡のないきょうの一行
首相、今度は国会の常任委員会の出席削減を提示。国会がそんなに嫌いなら、国会議員になるなよ。


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