水久保文明(JCJ会員 千代田区労協事務局長 元毎日新聞労組書記)友人の解雇⑤――評議員会に理事解任の権限なしⅠ 16/09/19

「ヘボやんの独り言」より転載 http://96k.blog98.fc2.com/

 事件が起きて、私がBさんに最初に要求したのはA法人の「定款」を見せて欲しい、ということだった。それを読んでみて疑問に思ったのは、評議員が理事を選ぶという規定はある。が、その評議員を誰が選ぶのかという規定がなかったことだ。(※注・社会福祉法人は、法律で評議員会と理事会を設置することが義務づけられている)

 評議員は誰が選ぶのかをBさんに問い合わせたが、行政もその問題に疑義をはさむことなく、ゆるやかに「あなたにお願いしたい」という形でその法人内で人選が進められたという。株式会社ではないから株を持っている人が選ばれるわけでもない。ていたらくに言えば〝身近な適当な人にやってもらう〟ということになろう。だとしたらこれでは、あまりにも緩やかすぎる。

 そこで、もしやと思い社会福祉法を初めて紐解いてみた。正解だった。それを読みながら私は、自分の「社会福祉」に関する考えがいかにいい加減であったかを思い知らされた。

 同法1条は、「目的」として「この法律は、社会福祉を目的とする事業の全分野における共通的基本事項を定め、社会福祉を目的とする他の法律と相まって、福祉サービスの利用者の利益の保護及び地域における社会福祉(以下「地域福祉」という。)の推進を図るとともに、社会福祉事業の公明かつ適正な実施の確保及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図り、もって社会福祉の増進に資することを目的とする。」と述べていたのだ。

 考えてみれば分かりきったことで、社会福祉法によって保護されているA法人はこの目的に沿った運営が求められているのだ。ズバリ、営利ではなく社会福祉の健全な発展を目的としたものである。したがってこの目的に同意し、社会福祉に関心のある人は選挙などの手続きを経ることなく、理事や評議員になることができるのである。

 確かにA法人の定款の『評議員の資格』の項目には「社会福祉事業に関心を持ち、又は学識経験ある者で、この法人の主旨に賛同して協力する者」とだけ規定している。これは確かに社会福祉法の理念にかなっている。

 あわせて、営利に走ったり特定の個人の利益を規制するために、評議員の数は施設で働いている人(賃金を受けている人)の3分の1を超えてはならないし、定款には「その家族その他特殊の関係がある者が3分の1を超えて含まれてはならない」と施設利用者の家族などに関係ある人を制限しているのである。

 この考え方は実に合理的である。「社会福祉の健全な発展」を目的とした法律に基づいて設立される社会福祉法人は,営利を追求することのない運営の在り方を定めているのだ。したがって、評議員はボランティアであるし、社会福祉に関する一定の知識や経験を持った人でなければ就任できず、選挙で選出するなどの規定は不要なのである。

 前説(まえせつ)が長くなってしまって恐縮だが、評議員会が設置される理由と、その在り方を社会福祉法の立場から知っていただきたかったためである。その評議員(会)は、理事を選任することはできるが、「解任」の権限を有していないのである。

 それは、施設の運営にあたって、営利を求めないことを前提とした理事(会)に、フリーハンドを持たせるための保障であり〝便宜〟でもあるのだ。前述した合理的に定められているというのはこのことである。したがって、社会福祉法人の理事(長)が解任されるような事態は、かつてどこの法人にもなかったと推測できる。(次回につづく)

★脈絡のないきょうの一行
米政策研究機関「外交問題評議会」が、北朝鮮空爆の可能性を提言。知恵がなさすぎる。



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