水久保文明(JCJ会員 千代田区労協事務局長 元毎日新聞労組書記)私は捏造記者ではない――② 16/08/11

「ヘボやんの独り言」より転載 http://96k.blog98.fc2.com/

 まず、植村裁判の東京訴訟をみてみよう。これは、前述したように東京基督教大学教授の西岡力氏と文藝春秋社を名誉棄損で訴えた裁判。(※注・経過等は単行本「真実 私は『捏造記者』ではない」と週刊金曜日1016年5月の「抜き刷り版」を参考にした)

 2014年のことだからついこの前のはなし。そのころ植村隆さんは、朝日新聞の記者として北海道の函館支局長として活躍していたが、神戸の「神戸松蔭女子学院大学」がマスメディア論・文章論などを担当する教員の公募を知った。

 しかも新聞記者経験者を求めていた。植村さんは当時55歳で、家族は札幌に住んでいたが、単身赴任でもいいと考え同大学院の門をたたいた。結果、13年暮れに採用が内定した。いわば早期退職による転職である。

 植村さんが神戸松蔭女子学院大学の教員として内定したことを受けて、週刊文春14年2月6日号は「〝慰安婦捏造〟朝日新聞記者が女子大お嬢様女子大教授に」という見出しをつけて報道したのである。その中身は、1991年に植村さんが書いた記事が、捏造であったと断定した上で、である。

 植村さんが書いたその新聞記事のリード部分を紹介しよう。この記事は同年8月11日の朝日新聞社会面のトップ記事として扱われた。

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  【ソウル10日=植村隆】日中戦争や第二次大戦の最、「女子挺(てい)身隊」の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた「朝鮮人従軍慰安婦」のうち、1人がソウル市内に生存していることがわかり、「韓国挺身隊問題対策協議会」(尹貞王・共同代表、16団体役30万人)が聞き取り調査を始めた。同協議会は10日、女性の話しを録音したテープを朝日新聞記者に公開した。テープの中で女性は「思い出すと身の毛がよだつ」とかたっている。体験をひた隠してきた彼女らの重い口が、戦後半世紀近くたって、やっと開きはじめた」
                               ◇

 この記事に対して、現東京基督教大学教授の西岡力氏は、92年4月号の月間「文藝春秋」に、植村さんが「挺身隊」という言葉を使ったことについて「重大な事実誤認がある」と批判した。当時、「挺身隊」と「従軍慰安婦」という表記は明確に分けられておらず、報道機関は〝同意語〟として使用していた。それはのちに整理されて使い分けられることになるが、西岡氏は鬼の首を取ったかのように、批判したのである。

 朝日新聞社はこの問題について精査し、「問題なし」という結論に至っている。その23年も前の記事を引き合いに出して、週刊文春は植村さんに「捏造記者」というレッテルを貼ったのである。(次回につづく)

★脈絡のないきょうの一行
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