水久保文明(JCJ会員 千代田区労協事務局長 元毎日新聞労組書記)参議院選挙を振り返って③ 16/07/13

「ヘボやんの独り言」より転載 http://96k.blog98.fc2.com/

 マスコミのありようについて、もう少し突っ込んでみたい。事例を示そう。衆議院に小選挙区制を導入する過程(1989年から1994年)において、マスコミが果たした役割についてである。

 かつて「ハトマンダー」と呼ばれる小選挙区制導入の画策があった。1965年の鳩山一郎(鳩山由紀夫元首相の祖父)内閣のときである。メディアは民主主義に反するとして一斉に反発、日の目を見なかった。つづいて、1973年に当時の田中角栄首相が小選挙区制導入を提唱した。通称「カクマンダー」といわれるが、これもメディアの反撃で頭を出すことすらできなかった。

 ※注・マンダーとは/1812年にアメリカマサチューセッツ州の、エルブリッジ・ゲリー知事が、自分の所属する党に有利になる選挙区割りを行った結果、その形がトカゲ(サラマンダー)に似ていたことから、知事の名前をとって「ゲリマンダー」と呼ばれるようになり、小選挙区制の代名詞として使われている。

 ところが現行の小選挙区比例代表制(94年3月に成立)導入にあたって、それまでのハトマンダーやカクマンダーと本質的には全く変わらないにもかかわらず、メディアは抵抗せずむしろ推進に回ったのである。

 何故か。やや複雑になるが以下のような経緯がある。1988年に未公開株の贈賄をめぐる「リクルート事件」が発覚した。政財界個人(マスコミ関係者も含まれていた)に、値上がりが見込まれる株の譲渡をするという形の贈賄が行われ、大事件に発展したのである。

 この事件を機に、カネのかからない選挙、政治資金の透明化などを求める「政治改革」が叫ばれるようになった。そこに目をつけたのが選挙制度だった。ここはチャンスとばかりに、「政治改革」を旗印に小選挙区制を導入を画策したのである。

 このとき政府は、ハトマンダーやカクマンダーからしっかり学んでいた。何をか。マスコミを黙らせないかぎり、コトはうまく進まないことを、だ。結果、何をやったか。なんと選挙制度審議会に大量のマスコミ関係者を登用したのである。

 小選挙区比例代表制を審議したのは、第8次選挙制度審議会であった。この審議会は89年6月に発足した。問題はこの審議会に大量のメディア関係者が入ったことである。なんと、27人の委員のうち、メディア関係者は8人となっている。しかも、審議会会長に当時の新聞協会会長(読売新聞社社長)の小林与三次氏が就任したのである。(次回につづく)

★脈絡のないきょうの一行
鳥越俊太郎さん、都民のなかに飛び込んだ。参議院で示した野党共闘の力で、知事選に勝利を。

 

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