水久保文明(JCJ会員 千代田区労協事務局長 元毎日新聞労組書記)参議院選挙を振り返って② 16/07/12

「ヘボやんの独り言」より転載 http://96k.blog98.fc2.com/

 選挙結果についての、論考追加である。

 私の友人は選挙結果について、「国民がばかだから」と一刀両断した。つい笑ってしまったが、笑えないことに気づいた。見方を変えると、「バカになる状態にされているから」と言い換えることもできるからだ。もちろん生まれていなかったが、戦前の世相と似通っているのではないか、脈絡のないそんなことを考えていた。

 以前、小ブログにも書いたことがあるが、一つの国を制するには3つの分野を制すればいいという。「教育、司法、マスコミ」がそれである――ということを。この3つのカテゴリーを精査してみていただきたい。

 教育はどうか。教育の憲法ともいうべき教育基本法が改悪され、モノ言う教師は放逐される。日の丸・君が代の押し付けに反対する教師が処罰され、従軍慰安婦の記述や沖縄における日本軍による県民逆殺が教科書から消える。〝ゆとり教育〟という名の詰め込み教育で子どもたちは塾通いを強要される……。

 大学に進学しても奨学金を借りなければならず、卒業と同時に数百万円の借金を背負い返済が始まる。そんな教育をされ、教育環境にあればモノを深く考えることすらできなくなる。実際に18歳選挙権を得た若者の40%から50%が自公与党に投票したという出口調査結果もある。あの人たちがめざしてきた教育の〝成果〟である。

 司法はどうか。イラク判決のように時折、いい判決が出ることがある。私たちは拍手するが、よく考えてみると憲法と照らし合わせてみると、ごく当たり前の判決なのである。それが光って見えるのは、権力寄りの判断が圧倒的だからである。労働裁判は、「最高裁に行ったら負ける」とまで言われ始めた。

 労働審判制度が導入された。解雇や賃金差別について早期解決をめざすという触れ込みだった。が、これもよくよく考えてみると、〝解雇自由〟を司法面から支えているのではなかろうか。結果、労働委員会の役割が薄められている。裁判員制度も、国民の司法参加といいながら、実は冤罪の片棒を担がされる結果になってはいないか。

 マスコミに至っては、目を覆いたくなる惨状だ。「マスゴミ」と揶揄する言葉もあるが、笑っていられない。特定秘密保護法を導入するときのメディアの対応はどうだったか。自らのクビを締めることになる法律制定を促した、その神経を疑う。

 戦争法もしかりだ。集団的自衛権行使の政府解釈は無理があることは、どの角度から見ても明らかだった。しかし、それを助長し法案成立の後押しさえした。メディアの対応は二分したが、二分する問題ではなかったはずだ。変だ。どこか歯車が狂っている。(次回につづく)

★脈絡のないきょうの一行
都知事選挙候補者に鳥越俊太郎さんの名前。今の危険な政治に、居ても立ってもいられない気持ちからだろう。


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