水久保文明(JCJ会員 元毎日新聞労組書記 千代田区労協事務局次長)国公法・堀越事件高裁判決の意義 10/04/13
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「ヘボやんの独り言」より転載 http://96k.blog98.fc2.com/
「憲法21条1項及び31条に違反するとの判断を免れず、被告人は無罪である」――。3月29日、東京高等裁判所で下された国公法違反に問われた、社会保険庁の職員・堀越明男さんのビラ配布事件の判決文の一部です。いうまでもなく、21条は言論・表現の自由であり、31条は法律の手続きによらなければ自由を奪われ、刑罰を科せられないということを謳ったものです。この判決の一行の解釈に拠ったのでしょう、一部メディアはこの判決を「違憲判決」と見出しに使いました。
判決の主文が読み上げられた瞬間、東京高裁の傍聴席から大きな拍手が起きたといいます。最近の司法判断の傾向からみて、支援者のなかには無罪判決が下されることは思いもよらなかったのでしょう。私はこの日、東和システムの不当労働行為事件の調査があり、東京都労働委員会にいました。都労委の控え室で同席の弁護士にケイタイで判決の内容を調べてもらいました。「逆転無罪になったようです」というその弁護士の話しに、私もつい拍手してしまいました。
この判決は、猿払事件(後述)の最高裁判決を踏襲し、国公法における公務員の政治活動の規制を温存したままではあったものの、堀越さんがビラを配布して逮捕されたことは言論・表現自由に違反する、と断じたのです。無罪となった理由の部分を判決から拾ってみましょう。(※判決文は難解なものもありますが、一番最後から読むのがコツです)
「なお、付言すると、我が国における国家公務員に対する政治的行為の禁止は、諸外国、とりわけ西欧先進国に比べ、非常に広範なものとなっていることは否定し難いところ、当裁判所は、一部とはいえ、過度に広範に過ぎる部分があり、憲法上問題があることを指摘した。」
「また、地方公務員法との整合性にも問題があるほか、かえって、禁止されていない政治的行為の方に規制目的を阻害する可能性が高いなど、本規則による政治的行為の禁止は、法体系全体から見た場合、様々な矛盾がある。」――まだまだ続きます。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
新党をつくるという与謝野馨さん、「どーんと消費税を上げる」論者。アブナイぞ。
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高裁判決文の引用がもう少しつづきます。がまんしてください。
「……猿払事件判決当時と異なり、国民の法意識も変容し、表現の自由、言論の自由の重要性に対する認識はより一層深まってきており、公務員の政治的行為についても、組織的に行われたものや、他の違反行為を伴うものを除けば、表現の自由の発現として、相当程度許容的になってきているように思われる。」
「また、様々な分野でグローバル化が進む中で、世界標準という視点からも改めてこの問題は考えられるべきであろう。」
「公務員制度の改革が論議され、他方、公務員に対する争議権の付与の問題についても政治上の課題とされている折から、その問題と少なからず関係のある公務員の政治的行為についても、上記のようなさまざまな視点の下に、刑事罰の対象とすることの当否、その範囲を含め、再検討されるべき地代が到来しているように思われる。」
判決文は多くの場合、難解なものが多いのですが今回のこれは解説なしで、読み込むことができます。ひらたく言えば、堀越さんのビラ配布に関しては言論・表現の自由に違反しており、公務員の政治活動の自由はグローバル化社会にあって検討されるべきものである、というのです。
ところが判決文はその一方で、「国家公務員による政治的行為を禁止する目的について判断すると、猿払(さるふつ)事件判決が指摘するとおりであり、当裁判所も、現時点においても、その正当性は十分認められると考えられる。」と述べているのです。この猿払事件判決とは、いかなるものか、以下、みてみましょう。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
与謝野馨代議士は自民党の比例区当選者。離党するなら議員を辞めるのがスジでは?
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猿払(さるふつ)事件の発端は、北海道猿払町で1967年(昭和42年)1月8日告示の第31回衆議院議員総選挙に際し、鬼志別郵便局に勤務する郵便局員が選挙用ポスターを公営掲示場に掲示したほか、その頃4回にわたり、同ポスター合計約184枚の掲示を他に依頼して配布したことを、「国公法違反」として摘発・起訴されたものです。
この裁判は、地裁、高裁で無罪となったものの、1974年(昭和49年)11月に最高裁大法廷で逆転有罪となり、国公法にある公務員の政治活動を制限する判例(根拠)となっているものです。
このときの公訴事実によれば、郵便局員の行為は国家公務員法102条1項に反する、としたのです。同法は、一般職の国家公務員に関して「職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。」と規定しています。
この条項に基づき人事院規則14―7が制定されているのです。少々長いのですが、猿払事件の有罪判決の根拠であり、今回の国公法・堀越事件の根源ともいえる条項となっており、ぜひ目を通していただきたいと思います。かなり長くなりますので、「適用の範囲」などあまり関連しないものは省かせていただきます。
人事院規則14―7(政治的行為)
(政治的目的の定義)
5 法及び規則中政治的目的とは、次に掲げるものをいう。政治的目的をもってなされる行為であっても、第6項に定める政治的行為に含まれない限り、法第102条第1項の規定に違反するものではない。
一 規則14―5に定める公選による公職の選挙において、特定の候補者を支持し又はこれに反対すること
二 最高裁判所の裁判官の任命に関する国民審査に際し、特定の裁判官を支持し又はこれに反対すること
三 特定の政党その他の政治的団体を支持し又はこれに反対すること
四 特定の内閣を支持し又はこれに反対すること
五 政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し又はこれに反対すること
六 国の機関又は公の機関において決定した政策(法令、規則又は条例に包含されたものを含む。)の実施を妨害すること
七 地方自治法(昭和22年法律第67号)に基く地方公共団体の条例の制定若しくは改廃又は事務監査の請求に関する署名を成立させ又は成立させないこと
八 地方自治法に基く地方公共団体の議会の解散又は法律に基く公務員の解職の請求に関する署名を成立させ若しくは成立させず又はこれらの請求に基く解散若しくは解職に賛成し若しくは反対すること
(以下、次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
核を保有しない国には核攻撃はしない、とオバマ大統領。新たな抑止力論と脅しに思えるが…。さて。
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昨日のつづき、人事院規則14―7(政治的行為)の内容です。
(政治的行為の定義)
6 法第102条第1項の規定する政治的行為とは、次に掲げるものをいう。
一 政治的目的のために職名、職権又はその他の公私の影響力を利用すること
二 政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し又は提供せずその他政治的目的をもつなんらかの行為をなし又はなさないことに対する代償又は報復として、任用、職務、給与その他職員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得ようと企て又は得させようとすることあるいは不利益を与え、与えようと企て又は与えようとおびやかすこと
三 政治的目的をもつて、賦課金、寄附金、会費又はその他の金品を求め若しくは受領し又はなんらの方法をもってするを問わずこれらの行為に関与すること
四 政治的目的をもって、前号に定める金品を国家公務員に与え又は支払うこと
五 政党その他の政治的団体の結成を企画し、結成に参与し若しくはこれらの行為を援助し又はそれらの団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員となること
六 特定の政党その他の政治的団体の構成員となるように又はならないように勧誘運動をすること
七 政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し又はこれらの行為を援助すること
八 政治的目的をもって、第5項第1号に定める選挙、同項第2号に定める国民審査の投票又は同項第8号に定める解散若しくは解職の投票において、投票するように又はしないように勧誘運動をすること
九 政治的目的のために署名運動を企画し、主宰し又は指導しその他これに積極的に参与すること
十 政治的目的をもって、多数の人の行進その他の示威運動を企画し、組織し若しくは指導し又はこれらの行為を援助すること
十一 集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること
十二 政治的目的を有する文書又は図画を国又は特定独立行政法人の庁舎(特定独立行政法人にあっては、事務所。以下同じ。)、施設等に掲示し又は掲示させその他政治的目的のために国又は特定独立行政法人の庁舎、施設、資材又は資金を利用し又は利用させること
十三 政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し若しくは配布し又は多数の人に対して朗読し若しくは聴取させ、あるいはこれらの用に供するために著作し又は編集すること
十四 政治的目的を有する演劇を演出し若しくは主宰し又はこれらの行為を援助すること
十五 政治的目的をもって、政治上の主義主張又は政党その他の政治的団体の表示に用いられる旗、腕章、記章、えり章、服飾その他これらに類するものを製作し又は配布すること
十六 政治的目的をもって、勤務時間中において、前号に掲げるものを着用し又は表示すること
十七 なんらの名義又は形式をもってするを問わず、前各号の禁止又は制限を免れる行為をすること
私も最初はそうでしたが、読みながらあきれ返った方が多いのではないでしょうか。ことほど左様に公務員は「空気を吸ってはいけない」と思われるほど、政治的活動について、がんじがらめに規制されているのです。目を覆いたくなる〝惨状〟といえます。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
新党名は「たちあがれ日本」だってね。あの人たちだと「立ち枯れニッポン」になるよ、きっと。
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猿払事件は、前述した国公法102条1項と人事院規則違反をタテに逮捕・起訴され、最高裁で有罪が確定したのです。しかし、これが判例となったとはいえ実質的に公務員は政治的活動をつづけてきました。それはこの規定があまりにも前近代的で、現実にそぐわないことがはっきりしていたからです。
ところが74年の最高裁判決から30年も経った2004年になって、突然、この〝亡霊〟がゾンビのごとく蘇り、社会保険庁職員の堀越明男さんが「国公法違反」容疑で逮捕・起訴されたのです。しかも、執拗な尾行やビデオ撮影など、なりふり構わぬ人権侵害の挙に出てまで。
なぜ公安警察はそこまでやらなければならなかったのか。今回はそれが主要なテーマではありませんので、簡単に私見を二つほど。一つは、この時期すでに自民党は崩壊の危機にあったと思うのです。言い換えると「自民党の終わりの始まり」の情勢にあったのではないでしょうか。2002年からつづいた小泉内閣(2006年9月まで)に翳りが見え始め、国民は「構造改革」の何たるかを見抜き始めていました。それを食い止めるために目先を共産党攻撃に変えて、堀越さん逮捕に踏み切ったのではないでしょうか。
もう一つは、公安警察の仕事が減ってきたことがあると思います。80年代後半から90年代、公安はオウム真理教を追い回していました。そこに彼らの〝活路〟(仕事)があったのですが、地下鉄サリン事件などの問題が明るみに出て、教祖の麻原彰晃らが逮捕(1995年5月16日)されて以降、間違いなく仕事が減ったのです。仕事がないということは、公安部そのものの廃止にもつながりかねません。そこで考えられたのが、国公法をタテにした共産党弾圧だったのではないでしょうか。自ら仕事をつくって延命を図った、ともいえましょう。
私見のそれはそれとして、今回の東京高裁判決は猿払事件最高裁判決の誤りをただすことはしませんでした。前出のように判決では、「国家公務員による政治的行為を禁止する目的について判断すると、猿払事件判決が指摘するとおりであり、当裁判所も、現時点においても、その正当性は十分認められると考えられる。」としています。確かに最高裁大法廷の判断は重いものがあり、それを覆すのは容易ではないでしょう。
ところが、そう言いつつも時代の流れのなかで、国公法における公務員の政治活動の規制は見直すべきであると、判決は言及したのです。これは「肉を切らせて、実は骨を切った」と言い換えることができるでしょう。聞くところによると、公務員の政治活動がこれほど規制されている国は、日本と南アフリカだけだというではありませんか。「グローバル化」をタテして物事を論じることを私は好みませんが、地球規模で民主主義のあり方を考えるとき、この人事院規則は撤廃すべき対象だと思います。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
調査の度に支持率低下の鳩山内閣。これじゃ、政権交代じゃなく政権後退だ。
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今回の高裁判決のすぐれている部分はもう一つあります。国公法の法的意義は認めながらも、言論・表現の自由を重用したことです。この項の最初に記したように、判決は「憲法21条1項に反する」ことを明確にしました。それを拠りどころとして、堀越さんを無罪にしたのです。判決は「国公法」と「言論・表現の自由」を秤(はかり)にかけて、「言論・表現の自由」を重くみたのです。
不思議なことに判決に触れられていない問題があります。公安警察による違法・不当な捜査方法についてです。堀越さん側は、尾行のみならずビデオ撮影までしたのは捜査方法を逸脱したやり方だと批判しました。この問題をめぐってビデオを公開すべきである、ということで裁判所と論争になり、裁判官を忌避するところとなりました。忌避は却下されましたが、それだけもめた問題について、判決には一行の言及もありませんでした。
何故か。理由は分かりませんが、堀越さんを無罪と判断した以上、捜査方法に言及する必要はなかった、と考えるのが自然でしょう。有罪であれば、それに触れざるをえないからです。いずれにしろ、国公法弾圧・堀越事件の東京高裁判決は司法がやっと国民の手に少しだけ戻ってきた、それを実感させるものであったといえます。
しかし、この高裁判決を快く思っていない人たちがいることを忘れてはなりません。4月4日付けの「世界日報」(統一教会の機関紙)の社説は、この判決は猿払事件の判例から逸脱している、と批判しながら「判決はネットの普及に触れ、表現の自由への認識が深まっているとするが、国民は無制限な何でも表現の自由と言わんばかりの風潮に批判的だ。最高裁は3月、『ネット中傷』に初めて有罪判決を下したばかりだ。表現の自由の濫用は許されず、『公共の福祉』の枠内にある。公務員の政党機関紙の配布は『蟻の一穴』となって、最高裁判決が危惧したように公務員の政治的中立を損ないかねない。政治活動を安易に容認すべきではない」(ウェブから)と述べています。
先週、4月7日に検察側は上告しました。上告の主旨は恐らく、前出の世界日報の社説と同じようなものでしょう。堀越さんを有罪とするには「言論・表現の自由に反する」と断じられて〝肉〟を切られただけならまだしも、国公法による公務員の政治活動の規制を見直すべきである、と〝骨〟まで切られたのですから、検察としては立場がなくなり上告したのでしょう。
いま、国家公務員法による政治活動規制の是非をめぐって熱く議論されています。5月13日には、もう一つの国公法・宇治橋事件(世田谷事件)の控訴審判決が出ます。私たち(千代田春闘共闘)は人事院に対して、公務員の政治活動を規制する人事院規則14―7(政治的行為)の改定を求めて、今週の金曜日・16日に陳情します。いま大事なことは、このような運動ではないでしょうか。
★脈絡のないきょうの一行
バンクーバー五輪で3回のトリプルアクセル(3回転半)成功にギネス。浅田真央ちゃんまた快挙。