水久保文明(JCJ会員 元毎日新聞労組書記 千代田区労協事務局次長) 毎日・共同の提携を考える 09/12/30
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「ヘボやんの独り言」より転載 http://96k.blog98.fc2.com/
先月26日に毎日新聞社、共同通信社、共同通信加盟社による「包括提携」が発表されました。その内容の柱は、①毎日新聞社が各県を拠点とする共同加盟社の一部から地方版記事の配信の協力を受ける②毎日新聞社が来年4月1日に共同通信社に加盟する――というものです。
この動き、突然のようですが以前からくすぶっていたものです。とりわけ地方の取材体制が他の全国紙の朝日、読売と比べて弱い毎日は、その補強のためにも必要だという考え方がありました。しかしその一方で、共同通信の配信記事を利用するとなれば、毎日新聞の全国紙としての体制が崩れるのではないか、という意見もありました。
新聞社間の提携といえば、2007年10月1日に発表された朝日、日経、読売のそれがあります。この提携(週刊ダイヤモンドがスクープ。各社の頭文字を取ってANY/エニー構想と呼ばれている)は、3社が①インターネット分野での共同事業②販売事業分野での業務提携③災害時の新聞発行の相互援助――を展開することを中心としています。
このANY構想と今回の毎日・共同(便宜的にこういう言い方をします)の提携は、中身において少々違います。ANYは「ネット時代」に対応するための対策と、販売分野および災害時の危機管理を主としているのに対し、今回の場合は新聞記事そのものの扱いを主たる目標にしています。とはいえ、今回の提携の一つに今後のテーマとして『新聞販売網の効率化』があげられていることは、注目しておく必要があります。
今回の毎日・共同の提携は、ANY構想への対抗策のように見えますが、私には毎日新聞社の背水の陣に思えて仕方がありません。ご承知のように新聞業界は、経済状況を反映して広告収入が激減し、経営的に厳しいものがあります。なかでも毎日新聞はぜい弱な経営基盤にあって、他社のそれよりもより厳しくなっています。経営不振は、今年の夏と年末一時金回答に反映し、社員の生活を圧迫しつつあります。個人的には、毎日新聞の経営者は業務提携よりも社員の生活向上に力を注げ、といいたいところです。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
JOCの選手強化策27億円削減など、思いやり予算を少し移せば簡単に捻出できる!
今度の毎日・共同による提携のメリットは何でしょうか。まず毎日新聞側を考えてみましょう。これは分かりやすい。地方の事件や動きを共同通信と共同加盟社の配信を受けてカバーし、地方機関の人員をさらに減らして人件費を削減できる、というものです。これはある意味〝一挙両得〟かもしれません。一方の共同通信側はどうでしょうか。共同は記事配信を主な収入源としていますが、紙媒体を持っていません。かねてから共同内に「紙媒体を確保したい」ということがささやかれていました。それが今回の提携で、毎日新聞を通じて間接的に実現する形になります。
メリット論はそれとして、考えなければならない大事な問題は、この毎日・共同の提携によってジャーナリズムがどう活性化されるかという点です。率直に申し上げて、私には見えてきません。この提携の発表の場で朝比奈豊毎日新聞社社長は「これからの時代の新聞は、記事の正確さはもとより、深い内容、解説力がこれまで以上に要求される」と強調し「『脱発表ジャーナリズム』が(新聞の)進むべき道」(11月27日・毎日新聞)と言っています。
「脱発表ジャーナリズム」は耳障り良く聞こえます。「深い内容と解説力」も方向としては申し分ありません。問題はこの提携によってそれが額面どおり保障されるかどうかです。毎日新聞社というこの企業の体質からして、前述した人減らしは容赦なくすすめられることでしょう。新聞は人がつくるものです。新聞社の最大の財産の一つは人です。その「人」が減らされれば、脱発表ジャーナリズムも、深い内容と解説力も、日常の取材に追われてできなくなることは目に見えています。
同日づけの毎日紙面で春原昭彦上智大名誉教授は、毎日・共同の提携に対して「地方分権が進めばより一層、地方権力の監視は重要になる。今回の包括的な提携の内容が毎日と共同、地方紙との合同での調査報道にまで広がってほしい」と期待を寄せています。確かに宮崎、大阪、千葉、東京を例に出すまでもなく、地方権力の監視はますます重要になると思います。調査報道もしかりです。問題はこの提携によってそれらの強化につながるかどうかです。もし人減らしが行われれば〝ない物ねだり〟にとどまらず、絵に描いたモチになりかねません。
結果として残ったのは、人減らしだけだったということになってしまうのではないか、という懸念は払拭できません。そしてもう一つ、この毎日・共同の包括的提携の行き着く先に、「ひさしを貸して、母屋を取られる」があるのでは、という危惧感も捨て切れません。これらは過ぎたるもの、でしょうか。
次回は前出の「新聞販売網の効率化」問題を考えてみます。(次回につづく)
★脈絡のないきょうの一行
やはりねー。母親だもん、邦夫ちゃんにもあげるよねー。
発表された毎日・共同の提携のなかに、今後のテーマとして①共同通信社との航空取材の連携②紙面制作システムや印刷委託、新聞販売網の効率化など――があげられています。航空取材は飛行機を両社別々に2機飛ばすより、1機の方が環境にも優しいし経費削減にもなります。これはよしとしましょう。ただし、少ない数ですがここでも人減らしという問題が生じることを忘れてはなりません。
紙面制作システムや印刷委託は「母屋」を取られぬ程度であればいいかもしれません。しかし、印刷委託については地方紙へのそれを想定しているのでしょうが、分散印刷・別会社化で転籍を余儀なくされた毎日新聞社員がたくさんいる(た)ことを忘れては困ります。その人たちの仕事がなくなるような事態は許されません。
そしてもう一つの販売網の問題です。「効率化」をうたっていますが、具体的には地方紙の販売店に毎日新聞を扱ってもらう、ということでしょう。これは首都圏をはじめすでに行われていることです。しかも競走相手の読売や東京の販売店への委託が多々、見られます。私が住んでいるところは、毎日の専売店がつぶれて産経の店に委託されています。
他紙系統に委託した結果、毎日新聞の部数はどう変化したでしょうか。具体的なデータがありませんので分析のしようがないのですが、「増えた」ということは考えにくいのが、この業界の常です。たとえば、読売の店が委託された毎日を増やすということは、まずありえません。そうしてみると、つまるところこの政策は、販売経費の削減を目的としたものと断定できるでしょう。結果、部数がジリ貧になることは明らかです。
毎日新聞社内は現在、編集も営業も全ての部門で「経費削減」が強められているといいます。人件費も例外ではなく、年末一時金の回答は50万円を切りました。その現実を見る限り、今回の毎日・共同の提携はやはりこの項の冒頭に述べました「背水の陣」すなわち、経費削減を命題とした生き残るための方策、としか思えないのです。あなたはいかがお考えでしょうか。
★脈絡のないきょうの一行
普天間基地移設問題の結論、越年へ。強引に決められるよりまだましか。