水久保文明(JCJ会員 千代田区労協事務局長 元毎日新聞労組書記)『憂』-TPP 12/01/09

 

「ヘボやんの独り言」より転載 http://96k.blog98.fc2.com/

 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の問題点については、小ブログで昨年の同じ時期の1月7日と9日に触れました。今回はその後のこの問題の進捗状況と、背景について見てみたいと思います。

 昨年のこの時期の総理大臣は菅直人さんでしたが、いまは野田佳彦さんです。菅さんの前の2010年1月時点は鳩山由紀夫さんでしたから、ここ3年の正月は毎年、違う人が総理大臣として登場しています。不思議な国ですが、来年の今頃は誰でしょうか、楽しみです。

 という冗談はさておいて、昨年来急浮上したこのTPP参加問題は野田さんが総理大臣になって(11年9月2日)以降、にわかに動きはじめました。その動きは、「あわただしく」という形容がぴったりでした。おそらく、民主党党首選挙で海江田さんが勝っていたとしても同じ動きをしたでしょう。

 なぜならアメリカの大統領選挙が今年の11月に控えており、逆算すると昨11年の秋口から動かなければTPPへの参加が間に合わなかったからです。「えっ、なぜ米・大統領選挙?」と驚かれるかもしれませんが、アメリカにひたすら追随する日本の政府は、オバマさんには大統領をつづけてもらいたいと願っており、その点数稼ぎの意味があるのです。わかりやすく言えば、大統領選挙のバック・アップであり、オバマはそれを利用して選挙を優位に進めようという狙いがあるのです。

 現に、すでに紹介しましたが昨年11月の「千代田総行動」で経産省のこの問題の担当者に「いつまでに(TPP参加の)結論を出すつもりか」と質問したとき、ずばり「11月にアメリカの大統領選挙があるから、8月までに出すことになろう」と答えました。ここまで言っていいのか、心配になりました。では、なぜアメリカを意識しているのか、という問題が残ります。これは時間と紙数を要しますので、後に譲りたいと思います。

 目を転じれば、財界からも「TPPに参加せよ」という大合唱が強まっています。この大合唱、消費税増税と深く結びついている、と私は見ます。「あんたそりゃ、深読みし過ぎだよ」と言われるかもしれませんが、ご一緒に考えてみてください。

 消費税増税が強行されると、国民の購買力が落ちてモノが売れなくなることは前回説明したとおりです。財界もそのことを知っているはずです。そこで、売れ残ったモノを国内に留めておくことはできませんので、海外に向けて売りに出る必要があります。そのときに邪魔なのが関税です。TPPはその関税を撤廃する訳ですから、財界が〝喉から手が出る〟ほどの大声を上げる理由がそこにあります。(次回につづく)

★脈絡のないきょうの一行
アメリカ、新国防戦略で「中国の台頭は脅威」と発表(日経新聞)。きな臭さ強まりそう。

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 輸出はまだいい(必ずしもそうでない側面も。後述)のですが、輸入によって日本の産業がどうなるかは推して知るべし、です。なかでも農業は大打撃を受けます。たとえばコメですが、アメリカなどは日本向けのもの(日本人好み)を作っているといいます。ベトナムは1年に2回コメの収穫ができます。日本の農業はそういう大量生産に太刀打ちできません。

 現在、コメは770%の関税がかけられ日本のコメ作農家を守っています。これがゼロになったら、結果ははっきりしています。コメだけでなく果物や農産物も打撃を受けることになります。酪農も例外ではありません。当然、食の安全問題も生じます。つまり日本の農業全体が衰退し、食の安全が脅かされることになるのです。だから、JA・全中はTPP反対に全力をあげてたたかっているのです。

 この問題、視点を変えてみると防災問題とも深いかかわりがあります。田んぼや畑の存在によって、降った雨は土中に浸み込み防災の役割を果たしています。ところがコメづくりがストップし、田んぼがなくなったらどうなるか。

 降った雨は、全てが川に流れ込み濁流となって下流のまちを襲います。最近のタイ水害の原因は、田んぼや樹林帯を工場団地にしたためだといわれています。そういえば、八ッ場ダムの建設再開を行うとしていますが、よもやこのことを想定した上のことではないでしょうね。

 あまり問題になっていませんが、雇用問題も心配です。TPPはモノだけでなく、ヒトをも〝自由化〟します。海外の安い賃金労働者が入ってくる可能性があるのです。派遣法が改悪されようとしていますが、この問題を先取りしているゆえではないのか、と、私は疑ってみています。

 医療についても多くの関係者が問題を指摘しています。混合診療の導入と皆保険が崩れるのではないかというのが、その中心です。TPPは日本国民の健康をも損なうことになりかねません。

 最後に指摘しておきたいのは、輸出企業にとっても打撃を蒙る恐れがあることです。自動車を例にとれば、関税がゼロになったら、安くていいものが入ってくる可能性があります。もし国民がそちらに目を奪われたら、国産自動車が売れなくなります。それが何を意味するか、説明の必要はないでしょう。

 TPP参加は、やはり「開国」ではなく「崩国」であり、亡国を招くものでしかない『憂』の一つです。

★脈絡のないきょうの一行
いよいよ10、11日に小沢一郎被告の本人尋問。陸山会事件の真相に迫ってほしい。