水久保文明(JCJ会員 千代田区労協事務局長 元毎日新聞労組書記)国民的な被災者支援を 11/10/21

 

「ヘボやんの独り言」より転載 http://96k.blog98.fc2.com/

 10月8、9の両日『どうする復旧・復興!――全国交流集会2011inみやぎ』と題する集会が宮城県鳴子温泉・「農民の家」において開かれました。集会は岩手、宮城、福島各県の大震災被災者支援を行っている団体と、全国災対連(災害被災者支援と災害対策改善を求める全国連絡会)が実行委員会をつくって開催したもの。全国から230人が集まり、被災者支援や脱原発問題など熱心な討論となりました。私はこの全国集会にはほとんど参加してきましたが、200 人を超える参加者は初めてでした。災害の規模の大きさがそうさせたのでしょう。

 集会はひととおりの主催者あいさつなどを行ったあと、宮入興一愛知大学経済学部教授から「東日本大震災からの復旧・復興の課題と展望――人間の復興とくらしの復興」と題して講演を受けました。宮入教授は、この災害をどうとらえるか、復興のあるべき理念などについて語りました。

 今回の災害の特徴として①超巨大な複合災害②地方都市・農漁村型災害③超広域・多様化災害④前代未聞の「原発災害」⑤災害の長期化と跛行化――の4点をあげました。今回の災害は「四川大地震、スマトラ大津波、チェルノブイリ原発事故、大規模間接被害(風評被害)が同時に発生したに等しい。その意味では未曾有の巨大複合災害だ」と指摘。しかし「想定外だったかというと、決してそうではない」と他の大地震と比較しながらこの考え方を批判しました。

 災害の広域・多様化については、「被災地面積は阪神・淡路大震災の約8倍。沿岸部の市街地、農村、漁村、内陸部の液状化被害など複雑化している。したがって被災者も、さまざまな階層におよび深刻さは度を深めている。ここからの復旧・復興は被災住民と自治体の合意を形成しながらすすめる必要がある」と強調しました。

 原発事故については「東電の責任とともに、エネルギー・原発政策を推進してきた国の責任も明確にすべき。その上で急ぐべきは被災者への支援だ」と述べました。なぜなら「原発周辺の住民は、強制的な避難で将来展望が見えず、流民化・棄民化させられようとしており、とにかく救済を急がなければたいへんなことになるからだ」と警鐘を鳴らしました。

 復興のあり方については、「これまですすめて来た日本の災害復旧・復興制度を根本的に返還させなければならない。すなわち20世紀型から21世紀型に転換させる必要がある」と提起しながら、「たとえば阪神・淡路のときは市街地再開発、空港・港湾の整備、基幹道路の整備などを優先し投入資金の9割が地域外のゼネコンに流れた。結果、被災地域の復興は7割にとどまっている。これでは被災地の経済復興はままならず、これを教訓にするならば今回の大震災では、農民、漁民、中小業者の合意形成をはかる必要がある」と強調しました。

 これらに加え復興の諸課題として、原発事故対応、関連死・孤独死の防止、被災自治体への支援体制強化、「二重債務」の解消、など、個別の問題を重視する必要性も指摘しました。宮入教授は最後に『下からの復興』『脱原発路線』を強調するとともに、「災害からの復旧・復興は被災者の基本的人権の回復を基礎においた人間復興、生活・生業・労働・コミュニティの復興を第一に据えるべきだ」と結びました。(次回につづく)

★脈絡のないきょうの一行
国会で選挙制度問題の議論開始。比例定数削減を許さず、民意反映の抜本改革こそが重要。

   ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

全国集会は講演のあと、被災3県からの報告を受けました。概略は以下。

 ▼岩手県(東日本大震災津波救援・復興岩手県民会議)
  *9月1日現在で震災前の主な自治体の人口を比較してみると、陸前高田市・2,860人減、大槌町・2,388人減、釜石市・2,073人減、山田町・ 1,583人減、大船渡市・1,465人減、宮古市・1,264人などとなっており、県全体では13,481人減となっており、津波被災地で多くの犠牲者が出ていることが分かる。
  *雇用に関しては、求人倍率は好転しているものの正社員でみると一番高い北上市で0.33倍と厳しい。雇用保険受給者は、沿岸部で7,031人となっており、前年同月比で5,000人増となっている。
  *県の復興計画は「安全の確保」「暮らしの再建」「生業の再生」の三原則をかかげているが、3つの県立病院の再建の記述はなく、三陸縦貫道など大型開発・ハード優先になっている。
  *仮設住宅は13,984戸完成。入居決定率は92.1%となっている。漁業・水産業の再生はまだ軌道に乗っていない。特別の助成が必要になっている。中小商工業者で二重債務に苦しむ人が多く、この解決策が急がれる。

 ▼宮城県(東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター)
  *いまだに救助・支援の段階で復興問題まで至っていない。避難所に789人が生活しており、仮設住宅で孤独死も起きている。PTSDによって車中生活をつづけている人もいる。予告手当なしに解雇された労働者もいるし、便乗解雇も出ている。
  *取り組むべき課題として、前述以外に漁業権・水産特区問題、稲ワラ放射能汚染による牛肉問題、地すべり被害・マンション被害問題、女川原発問題など山積している。県は「復興会議」を設立して活動を始めたがその中に地元の人間は2人だけ。岩手県の全員が地元と比べて、被災者の声を反映できるか不安。
  *県や自治体などに対して原発、仮設住宅、子どもの健康と安全、義援金支給による生活保護打ち切り反対、車中生活者、地すべり被害問題などについて要望書などを提出し運動をすすめている。

 ▼福島県(ふくしま復興共同センター)
  *被害状況として死者・1,845人、行方不明120人、重傷・154人、軽傷・154人、家屋全壊・17,871棟、半壊・50455棟、一部損壊・ 141,697棟などとなっている。原発事故に関する避難者は、南相馬市・13,428人、浪江町・7.708人、富岡町・4,803人などとなっており、全県的には50,244人にのぼっている。
  *セシウムに汚染された牛肉の出荷停止は深刻。風評被害も広がっている。福島から子どもがいなくなるのではないかという心配もある。非難住民が戻れるようになるまでに、20年はかかるのではないかという話しもあり、厳しい状況になっている。
*今後の課題として原発事故の収束、放射能から子どもを守る取り組み、損害賠償請求問題などがある。6月25日には「原発なくそう集会」を成功させた。引き続いて10月30日の集会も成功させたい。ご協力を。

 ――などの報告が続き、このあと分散会に移りました。(次回につづく)

★脈絡のないきょうの一行
公明党の歩み寄りでたばこ増税の動き。党略的なキナ臭さ、いや、たばこ臭さが漂う。

   ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

 全国集会は、2日目のお昼まで分科会となりました。参加者が多かったこともあり10の会場に分かれて行われました。内容は①被災者の生活再建をめざして②生産者・利用者本位の第一次産業(漁業・農業・林業)の再生を③子ども、地域に寄り添った教育の復興を④防災に強く住民に安心な自治体の再生を⑤液状化災害からの救済と住宅・地盤の強化をどうはかる⑥放射能汚染からくらしと健康を守る⑦放射能被害の全面賠償を勝ち取る⑧被災地での安心・安全な雇用の実現を⑨被災地で地域住民が安心できる医療・介護・保育の拡充をめざす⑩被災地の地域経済の復興と中小零細企業支援を――の10分科会です。

 それぞれが切実な問題ばかりです。私は①の生活再建問題の分科会に参加しました。阪神・淡路大震災が起きるまではなかった個人補償が、現在では住宅再建に300万円までの補償が可能になっています。それまでの国の対応は「自然災害には補償しない」というものでした。しかし、被災者を中心とした運動によってこれを少しずつ是正させ、いまでは300万円まで確保できるところとなっています。

 しかし、これでは不十分です。「せめて500万円までは上げてほしい」というのが被災者の率直な声です。当面の運動の目標としてこの要求を国会・政府にぶつけていくことを確認しました。

 また、「衣食住」ならぬ「医職住」が深刻な事態も出されました。震災によって、医療機関そのものが破壊され、医者も少なくなっています。子どもやお年寄りにとって医療は切り離せません。仕事の問題も深刻です。たとえば、仮設住宅の建設でみてみると、大手住宅会社や建設会社に委託されるケースが多く、県外の労働者が来ているといいます。地元の中小の建設会社などに委託すれば、地元の雇用が確保できます。そういうとりくみも重要になっています。

 住宅問題では、夏場は過ぎましたが仮設住宅は暑くて生活できない状態が続いたといいます。これからは、東北にも冬がきます。その寒さにどう対応していくのか、心配が募っています。仮設住宅は寒冷地に必要な二重構造にはなっていないものもあり、寒さへの対策は不十分で、とりわけ高齢者が冬を越せるかどうかすでに不安の声があがっているといいます。

 二重ローンの問題も深刻です。この問題の解決は急がれます。折角、仕事が見つかっても二重ローンをかかえたままでは生活できません。やる気すら削がれます。これは住宅のみならず、中小業者にとっても深刻な問題です。今までどおりの仕事をつづけるとすれば、新たな資金を導入せざるをえず、ローンを組まなければなりません。生活再建のために、この問題の解決も急がれます。

 分科会ではこのようなさまざまな問題について意見が出され、交流が深められました。分科会終了後、全国集会は全体会議に移り分科会の報告が行われたあと、散会しました。この集会でもはっきりしたことは、運動こそが生きていくうえでの重要なカテゴリーであるということでした。黙っていては生きていけない、そのことを肝に銘じていつか自分にも降りかかってくるかもしれない災害対策と、災害が起きたときの復旧・復興には国民的運動と支援が必要であることを実感して帰ってきました。

★脈絡のないきょうの一行
臨時国会がきょう召集。大震災復興政策、TPP、選挙制度、普天間……目が離せないぞ。