水久保文明(JCJ会員 千代田区労協事務局長 元毎日新聞労組書記)労働者への責任転嫁だ 11/10/03

 

「ヘボやんの独り言」より転載 http://96k.blog98.fc2.com/

 9月28日の読売新聞ウェブは「福島第一原子力発電所事故の賠償支援のため、東京電力の経営状況を調べている政府の第三者委員会の報告書原案の概要が27日、明らかになった。2014年3月末までにグループの社員約5万3000人の約14%にあたる7400人を削減する。取引金融機関が融資した資金については東電の財務状況によっては、一部が返済できない可能性があると指摘している。第三者委員会は10月3日にも報告書を発表する。賠償金の原資を捻出し、電力料金の値上げを最小限に抑えるため、リストラの必要性を厳しく指摘。」と報じています。

 ちょっと待て、と言いたい。その前に、この第三者委員会なるものが何かをみてみましょう。今年5月24日の閣議で「東京電力に関する経営・財務調査委員会」として決定、発足したものです。その目的は「①迅速かつ適切な損害賠償のための万全の措置、②原子力発電所の状態の安定化及び事故処理に関する事業者等への悪影響の回避、③国民生活に不可欠な電力の安定供給」としています。

 委員会の構成(敬称略)は、委員長に下河辺和彦(弁護士)を置き、委員は引頭麻実(株式会社大和総研執行役員)、葛西敬之(東海旅客鉄道株式会社代表取締役会長)、松村敏弘(東京大学社会科学研究所教授)、吉川廣和(DOWAホールディングス株式会社 代表取締役会長)となっています。

 この名簿を見てお気づきの方があるかもしれませんが、有名人がいます。葛西敬之さんです。この人、あの悪名高い国鉄の分割民営化で、松田昌士、井手正敬の両氏らとともに「国鉄改革3人組」と呼ばれた一人で、1047名の解雇を強行した張本人でもあります。国労をはじめ国鉄闘争団は、国鉄分割民営化を政治的に動かした中曽根安弘元首相とともに、この葛西敬之氏を徹底批判してきました。

 この委員会が発足したとき、そういう人物が登用されたことに私は違和感を禁じ得ませんでした。その違和感は、冒頭の報告書原案で〝納得〟がいきました。国鉄の人減らしの実績が買われたのです。国鉄で1047人を冷酷に切り捨てた人が、今度は東電で7000人を超える人を切り捨てようとしているのです。(次回につづく)

★脈絡のないきょうの一行
沖縄密約事件の高裁判決、資料の「廃棄の可能性」を示唆。逆転判決もひどいけど、国もひどい。

     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

 東電福島第1原発のあの事故は、(全くなしとはしませんが)そこで働いていた労働者の責任だったのでしょうか。否です。責任はひとえに安全対策を怠った経営陣と、それを監督すべき立場の国にあったはずです。にもかかわらず、調査委員会の報告原案は7400人もの削減を行い、浮かせた人件費を賠償金に当てるというのです。

 この人員削減は労働者への責任転嫁です。破損事故に対して、東電とその関連企業の労働者は放射線の飛散拡大防止に全力をあげました。なかには基準値を超える放射線を浴びて、健康を害した人もいるといいます。現在も進行中ですが文字通り、身体を張って事故の収束にがんばっている労働者(も含めて)を切り捨てようというこの計画、断じて許せません。

 遅からずこの人減らしは労働組合に提案されるでしょう。東電の労働組合はどう対処するのでしょうか。誤解を恐れずに言えば、東電の労働組合は労使協調路線をとってきましたし、かつての活動家への賃金差別反対の闘争でも一切、協力しませんでした。東電労組が加盟する電力総連は、連合のなかでも有力単産で、連合全体としてもこの問題にどう対処するのか、カナエ(鼎)の軽重が問われることになります。

 よもや、復興財源づくりを理由に国家公務員労働者の賃下げを認めたことと同じ徹を踏むことはないでしょう。いやいや、「賠償金の財源づくり」という理由は、公務員の賃下げと同じ意味があり、認めてしまう可能性があるかもしれません。いやいや、今度の東電の提案は、カネではなくヒトを減らすものであり、容認する訳にはいかないでしょう。

 いま、東京電力は経営そのものが危機存亡に陥っています。こういうときこそ、労働組合の出番です。かつて毎日新聞社が倒産の危機(1974年~1977年)を迎えたとき、毎日新聞労組は「毎日新聞は労働組合が守り抜く」のスローガンをかかげてたたかいました。スト権を確立し必要な場面ではストも打ち抜きました。そのうえで言論・表現の自由を守る課題と結合させて、国民に依拠したたたかいを構築しようと外に向かって打って出ました。

 その運動は当時の総評も含めて理解され、結果的に銀行に倒産の引き金を引かせませんでした。毎日新聞労組のたたかいは、労働者の賃金下げが行われたり、人減らし「合理化」にさらされたとき断固としてたたかうことの重要性を教えています。毎日新聞社の経営危機と今回の東電の問題と質的に少し違いますが、労働組合がたたかう必要性は共通しています。

 「東京電力に関する経営・財務調査委員会」による7400人の人員削減案は、明らかに労働者に責任を転嫁したもので看過してはなりません。東京電力労働組合と連合が、毅然と反撃してたたかうことを期待したいものです。

★脈絡のないきょうの一行
大企業・製造業の景気短観は好転を示唆。ホントかなー。