河野慎二/元日本テレビ社会部長・ジャーナリスト/テレビウオッチ(41)鳩山首相は辺野古へのくい打ち移設を強行するな―千載一遇のチャンス逃さず国外移転で対米交渉せよ―10/05/20

鳩山首相は辺野古へのくい打ち移設を強行するな

 

―千載一遇のチャンス逃さず国外移転で対米交渉せよ―

 

河野慎二 (元日本テレビ社会部長 ・ ジャーナリスト)

 

 

  鳩山首相が13日、 米軍普天間基地問題について、 自ら設定した 「5月末決着」 を断念した。 「6月以降になっても、 まだ詰める必要があれば、 当然努力する」 と述べた。

 

  しかし、 6月以降努力すると先送りしても、 解決の見通しがある訳ではない。 というのは、 政府が辺野古沖にくい打ち桟橋方式の代替施設を建設するという原案を10日の関係閣僚会議でまとめ、 民意に敵対する愚行を改めようとしていないからである。

 

  そもそも、 鳩山首相は、 この政府案で県民が納得すると考えているのだろうか。

 

  5月4日、 就任後初めて訪問した沖縄で鳩山首相は、 県民から怒りの声の集中砲火を浴びた。 稲嶺名護市長は 「辺野古の海はもちろん、 陸にも基地は造らせない」 「辺野古に戻ってくるようなことが絶対にあってはならない。 このことはしっかりお引取りいただきたい」 と、 鳩山首相に明確に拒否を通告した。 各局のテレビニュースが全国に伝えた。

 

  住民との対話集会は、 世界一危険な普天間基地に隣接する普天間第二小学校体育館で開かれた。 集会では、 長女が同小学校に通う主婦が 「ただひとつ、 普天間基地をなくして欲しい。 子供たちに安心して、 安全に学校生活を送らせて」 と訴えた。 04年に米軍ヘリが墜落した沖縄国際大学の富川盛武学長は 「県民の総意を斟酌しなければ、 怒りのマグマが噴出する」 と警告した。 NHK 「ニュースウオッチ9 (NW9)」 などが報道した。

 

  同校で6年1組担任の下地律子先生が 「米軍の飛行機やヘリが飛んでくると、 騒音で授業が出来なくなる。 失われた授業時間は50時間にもなる」 と訴え、 子どもたちが書いた手紙を鳩山首相に手渡した。 日本テレビの 「バンキシャ」 (5月9日) が、 子どもたちのインタビューを交えて伝えた。 「国会議事堂の隣に、 基地を移したら?」 「いいね。 いいね」 という子どもたちの声を拾っていた。 「沖縄差別」 への強烈な反発と聞こえた。

 

■ 「海外移設もあった」 鳩山発言、 掘り下げて報道せず

  テレビ各局 『選挙公約』 『抑止力』 の問題発言も素通り

 

  テレビは鳩山首相の一連の行動や発言をどう伝えたか。 首相がこなした会談や集会、 普天間基地視察などは型通り伝え、 記者リポートで問題点を指摘した。 各局ともいわば〝定番メニュー〟のスタイルでそれなりの時間を割いたが、 問題点の掘り下げという点では十分だったとは言えない。

 

  一例を挙げれば、 鳩山首相は仲井真知事との会談で、 「海外 (移設) の話もなかった訳ではないが、 難しいという思いになった」 と発言している。 NW9がその発言をVTRで放送していたが、 この発言は普天間問題の解決策を探る上で重要なキーワードになる。 ところが、 NW9はこの発言の意味するものを掘り下げて報道せず、 他局は無視している。

 

  また、 鳩山首相は二つの問題発言をしているが、 当日夜の各局基幹ニュースは、 これをまともに取り上げて報道していないのだ。

 

  ひとつは選挙公約に関わる発言で、 「公約というのは、 党の考え方。 (最低でも県外とした発言は) 党としての発言ではなく、 私自身の代表としての発言だ」 と述べた。 選挙に向けた党首の発言が党の公約ではないと言うのは、 有権者を愚弄する以外の何ものでもない。

 

  もうひとつは、 「抑止力」 に関する発言だ。 鳩山首相は 「海兵隊は抑止力として沖縄に存在する理由はないと考えていた」 が、 「学べば学ぶにつけ、 沖縄米軍全体の中で海兵隊の役割は全てに連動している。 その中で抑止力が維持できるという思いに至った。」 と述べた。 一国の最高指導者としての資質に疑問符がつく発言だ。

 

  鳩山首相の 「海外移設検討」 発言や、 選挙公約と抑止力に関わる首相の問題発言に対して、 テレビ各局の感度は鈍すぎるのではないか。 事象だけをフォローすれば事足れりというスタンスでは、 視聴者の信頼を失うだけだ。

 

  鳩山首相は5月7日、 鹿児島県徳之島3町長と会談し、 米軍普天間基地の機能を一部受け入れるよう要請した。 これに対し、 3町長は移設に反対する2万6千人の署名を首相に渡した上で、 「移設には断固反対だ」 (大久天城町長)、 「基地を絶対に造らせないという決意は変わらない」 (大久保伊仙町長) などと反対を表明した。

 

  大久保町長は 「基地のたらい回しではなく、 オバマ大統領と軍縮の方向で (縮小を) 話し合ってほしい」 と鳩山首相に訴えた。

 

  米軍基地は受け入れないという住民の決意を込めた2万6千人の署名は、 普天間基地問題の解決に確実に大きな影響を与える。 大久保町長の発言も、 鳩山首相が沖縄や徳之島の住民の意向に沿った解決策を選択するかどうかの重要なヒントになる。

 

■ 「基地はNO」 沖縄の怒りの声オバマ政権を揺るがす

  ワシントン ・ ポスト紙のコラムに米政府高官が異例の謝罪

 

  沖縄県民の怒りの声は、 米国にも影響を与えている。 “お手並み拝見” と鳩山首相を突き放していた米政府が、 これまでの高飛車な発言を慎重な言い回しに変えている。

 

  米有力紙のワシントン ・ ポストが4月14日、 日本の首相を 「哀れで、 ますます、 いかれた鳩山首相」 と酷評した。 読売によると、 極めて異例なことに、 キャンベル国務次官補が22日 「不正確で感情を傷つけ、 不適切な描写だった。 非常に遺憾だ」 と謝罪した。 オバマ政権が沖縄県民の声に神経質になっていることを浮き彫りにしたものだ。

 

  米国の有力な外交問題の研究者や下院議員が、 普天間基地の国外、 県外移設について、 積極的な発言をしている。

 

  日本や中国など東アジア政治 ・ 国際関係の専門学者で、 「アメリカ帝国への報復」 などの著書があるチャルマーズ ・ ジョンソン日本政策研究所長は6日、 ロサンゼルス ・ タイムズ紙に寄稿し、 「米国は傲慢ぶりをやめて、 普天間を米本土に戻すべきだ」 と訴えた。 ジョンソン氏は鳩山首相の沖縄訪問について、 「私は臆病な鳩山首相よりも、 傲慢な米政府を非難する。 基地を維持することに取り付かれ、 受入国を顧みない」 と批判した。

 

  琉球新報によると、 米外交政策に影響力を持つ 「米外交問題評議会」 のシーラ ・ スミス上級研究員が4日までに、 日米両政府は普天間飛行場の代替地を県内に求める姿勢から脱却し、 県外移設の協議を本格化させるべきだとする論文を発表した。 スミス氏は、 4月25日の県民大会に9万人が参加したことの重要性を指摘。 地元の民意が明確に示された以上、 日米両政府は県外移設に焦点を絞った再編計画を練り直すべきだと主張している。

 

  スミス研究員は 「日米両政府は、 普天間問題に困難な決断を下す時期に来ていることを認識すべきだ」 として、 鳩山首相に県外移設の決断を促すと同時に、 普天間問題を日本任せにしているオバマ政権を批判している。

 

  スミス氏は、 2008年の大統領選でオバマ氏の対日外交政策顧問を務めており、 米政府の今後の政策決定に影響を与える可能性があると、 琉球新報は伝えている。

 

  米民主党のデニス ・ クシニッチ下院議員は先月、 米下院軍事委員会のメンバーで、 議会有力者のノーム ・ ディック下院議員 (民主党) に書簡を送り、 米政府は2006年の (日米) 合意に基づいた米軍再編計画を進める前に、 米軍基地に反対する地元住民の負担を考慮すべきだと訴えた。 しかし、 日本の大手メディアはニュースとして伝えていない。

 

■米世界戦略変化の中、 グアムが普天間より重要性増す

  NHKニュース (NW9)、 在日米軍基地をシリーズで特集

 

  日本のメディアでも、 少しずつだが、 論調に変化の兆しが見え始めている。

 

  NHKの 「ニュースウオッチ9 (NW9)」 は4月、 「在日アメリカ軍基地」 をシリーズで放送した。 そのコンセプトは 「日米安保条約が改定されて50年。 日本の安全保障はどうあるべきか、 在日米軍基地はどうあるべきかを考える」 (4月7日、 大越キャスターのコメント) というものである。

 

  横須賀基地 (4月7日)、 キャンプ座間 (9日)、 岩国基地 (16日) と取材をして、 最終回 (4月22日) は普天間基地の海兵隊を取り上げた。 NW9は 「海兵隊は日本を守るため駐留しているとされている」 が、 「戦略の要としての位置づけは少しずつ変わろうとしている」 として、 米カリフォルニア ・ ミラマー基地に 「米海兵隊が沖縄をどう見ているかの手がかり」 を取材した。

 

  ミラマー基地では、 オーストラリア空軍や日本の陸上自衛隊が参加して、 共同訓練が行われている。 米戦略が変化する中で、 海兵隊を指揮するラッセル ・ スミス大佐は 「日本政府は、 沖縄に多くの外国人軍隊の入国を好まないだろう」 とインタビューに答え、 海兵隊にとって沖縄が必ずしも適当な基地ではないとの考えを示した。

 

  NW9は、 「米海兵隊が大きな関心を寄せているのがグアム島で、 グアムには8千人の海兵隊員と司令部の移転が決まっている。 多国間の訓練場を造る動きもある」 と指摘。 「グアムは米領なので、 多くの国で共同訓練が可能だ」 とスミス大佐が答える。

 

  NW9は、 「2月の米国防戦略報告で、 グアムを新たな軍事拠点 (ハブ) とすることを明記しており、 アメリカはグアムを重視している」 と伝える。

 

  大越キャスターが 「普天間問題が政治的に混乱しているが、 それに隠れて将来展望を見失うことがないようにすべきだ」 としめくくった。

 

  NHKだけでなく、 テレビの基幹ニュースは米海兵隊のグアム移転をほとんど取り上げて来なかった。 その意味で、 NW9の取材は、 まだ十分とは言えないが、 米世界戦略が変化する中で、 グアムが新軍事拠点として普天間基地より重要性を増していることを明らかにしたという点で評価できる。

 

  NW9は、 「横須賀基地」 特集 (7日) では思いやり予算を、 「キャンプ座間」 特集 (9日) では自衛隊が米軍の軍事システムに組み込まれる実態を取り上げている。 NW9の取材はこれまでになく意欲的なもので、 今後に注目したい。

 

  民放テレビでも、 特に情報番組で積極的な報道が目立った。 今後の報道への可能性を感じさせた番組もなかった訳ではないが、 根本的な解決策にまで踏み込んだ取材や指摘は少なく、 情報が比較的多く提供されるという量的な拡大にとどまった。

 

  テレビ朝日の 「スーパーモーニング」 (5月5日) は宜野湾市とLIVE中継で結び、 伊波洋一市長が生出演した。 その中で同市長は 「8千人の海兵隊員がグアムに行くと、 日米は合意している。 (鳩山首相は) それを無視、 否定するのはおかしい。 外務、 防衛官僚の言い分を繰り返すのはおかしい」 と訴えた。

 

  TBSの 「朝ズバッ!」 (5月7日) には、 民主党の川内博史衆院議員が生出演し 「国内には、 どこにも米軍基地を受け入れるところはない。 沖縄はNO、 徳之島もNO。 民意は全て米軍基地はNOだ。 鳩山首相は、 その民意をはっきりアメリカに伝えるべきだ。 そこから交渉を始めるべきだ」 と力説した。 伊波市長の発言と同様、 正論である。

 

■朝日社説、 米海兵隊の沖縄常時駐留に疑問提起

  日米政府に 「日米安保の根本見据えた議論不可欠」 と提案

 

  普天間問題に対する新聞の論調は、 日米同盟、 日米安保を絶対視する視点に縛られているため、 真実が伝えられていないが、 ここへ来て沖縄県民の切実な声に耳を傾け始めているように見える。 ワシントンに気兼ねばかりする紙面づくりでは、 読者に愛想をつかされかねないほど、 情勢が激変していることに漸く気がついたのか。

 

  朝日新聞は5月14日、 「普天間移設問題  仕切り直すしかあるまい」 と題する社説を掲載した。 社説は通常、 二本立ての構成だが、 この社説は一本立て。 朝日として、 普天間問題を重視する姿勢を明らかにしたものだろう。

 

  社説では、 鳩山首相の 「5月末決着」 が 「絶望的になった」 ので 「いったん仕切り直すしかない」 とした上で、 米海兵隊について 「海兵隊はずっと沖縄にいなければ、 その機能を発揮できないのか」 と疑問を投げかけている。

 

  そして、 「日米安保の根本を見据えた議論を日米政府間で、 また日本国民を巻き込んで起こすことが不可欠ではないか」 と提案している。

 

  社説はさらに、 東アジアの安保環境の変化と海兵隊配置の問題や、 「将来的に」 との条件づきながら、 海兵隊の 「国外移転の展望」 に言及している。

 

  社説は最後に、 「米国政府も柔軟な発想で、 日本政府とともに、 真剣に沖縄の負担軽減を探ってほしい」 と米政府に注文をつけている。 「恐れ入りますが」 といった調子の低姿勢がピリッとしないが、 とにかくホワイトハウスへの要求は異例の社説である。

 

  この社説が朝日の 「社論」 の変化の始まりかどうかは分からない。 というのは、 5月5日の紙面で、 同社の船橋洋一主筆が 「拝啓  鳩山由紀夫首相」 と題する原稿を執筆し、 事実上ワシントンの意向を代弁するような形で、 普天間問題を自民党政権時代の対米従属型方針通り決めるよう、 鳩山首相に決断を迫っているからだ。

 

  それでも、 朝日は通常の紙面でも、 記事の内容に変化が見られる。

 

  5月13日には、 「痛み受け止めぬ本土にがっかり  『差別だ』 沖縄に広がる」 の見出しで1面と3面を使い、 1970年の 「コザ暴動と同じぐらいの怒りがたまっている」 などの県民の声を伝えた。 朝日が県民の声を正面から報道するのは初めてではないか。

 

  15日には、 「基地マネーは当て外れ」 とする記事を1面と11面に掲載した。 名護市には、 1999年から10年間で783億円が国庫から投じられたが、 一時的なバラマキ効果しかなく、 地域の経済への寄与度は低い。 市の財政構造もいびつなものになり、 赤字のツケは市民に回されようとしている。

 

  沖縄在住の作家、 池澤夏樹氏は朝日夕刊 (11日) のコラム 「終わりと始まり」 に、 「政治と時間  水俣と沖縄の長い夜」 を寄稿。 池澤氏はその中で 「アメリカ海兵隊の普天間基地の場合、 沖縄戦とそれに次ぐアメリカ軍の占領によって住民が住む土地を追い立てられてから65年になる」 「最も危険な普天間一つの変換さえままならないとしたら、 沖縄人が他国の軍事基地から解放される希望はどこにあるのか」 と訴えている。

 

■毎日 「米国を渋面させない同盟観が日本を思考停止に」

  日米同盟を聖域視せず、 正面から向き合う報道出始める

 

  日米同盟を聖域視せず、 正面から向き合おうとする報道は、 朝日以外でも見られるようになっている。

 

  毎日の布施広専門編集委員はコラム 「反射鏡」 (4月18日) に、 「『寝ても覚めても日米同盟』 の危うさ」 と題する論文を執筆している。 その中で布施編集委員は 「日本の多くのメディアは、 時の内閣より日米同盟の権威を重く見る価値観を持っている」 と指摘。 「『同盟とは争わないこと。 米国を渋面させないこと』 というユニークな同盟観に立って、 日本が思考停止に陥っていないか」 と警鐘を鳴らす。

 

  布施記者は 「思考停止」 の一例として普天間問題に関する論調を取り上げ、 「『現行案』 でないと抑止力が保てないという主張の正当性をうまく説明できるか。 米国がそれを望むからという理由で満足していいのだろうか」 と問題提起する。

 

  その上で 「日米の政権交代を機に、 世界と東アジアの安全保障を日米が改めて話し合い、 沖縄の負担軽減にも努力するのは、 本来なら意義深いことだ」 「普天間の決着期限に向けたカウントダウンの中で、 真に重要な問題を埋もれさせてはなるまい。 歴史がもたらしたチャンスを大切にしたい」 と結んでいる。

 

  布施編集委員の論は、 理に適った主張であり、 傾聴に値する。

 

  毎日は安保取材班を編成し、 4月から 「転換期の安保2010」 のタイトルで、 普天間問題と安全保障を検証する連載企画をスタートさせている。 内容は玉石混交で、 ばらつきが多いが、 今後日米安保問題の核心に切り込むことを期待したい。

 

  また、 横須賀 ・ 座間、 佐世保、 普天間 ・ 嘉手納など、 米軍基地取材を抱える神奈川新聞と長崎新聞、 沖縄タイムスの地方紙3紙が今年1月から合同連載企画 「安保改定50年  米軍基地の現場から」 を開始した。 4月22日の神奈川新聞はこの3紙合同連載企画に1ページを割き、 「第4章  同盟変容」 と題して、 「冷戦終結後の1990年代を境に、 大きく姿を変えた日米安保体制」 を特集した。

 

  その中で 「橋本首相とクリントン大統領が1996年4月、 『日米安全保障共同宣言』 を発表。 安保体制を 『アジア ・ 太平洋地域の安定維持の基礎』 と位置づけ、 協力目標を拡大した」 と指摘、 「周辺事態法」 や 「イラク特措法」 「国民保護法」 などの国内法を強引に成立させ、 事実上日本を準軍事態勢に方向を切り替えたことを明らかにしている。

 

■鳩山政権が 「国外」 を決断しないと沖縄の基地はなくせない

  メディアも解決策の核心へ、 掘り下げた報道を強化すべき

 

  遅ればせながら、 メディアの報道が変化し始めたこともあり、 普天間問題に対する国民の関心が高まっている。

 

  NHKの世論調査 (5月10日) によると、 鳩山首相が県外移設を断念し、 県内に機能の一部を残す考えを明らかにしたことについては、 「評価する」 が24%、 「評価しない」 が69%に達した。 断念した理由として 「抑止力」 を挙げたことについては、 「納得できる」 が34%、 「納得できない」 が60%だった。

 

  TBSの調査 (10日) でも、 国外移設を求める意見は48%に達している。 県外移設の12%を合わせると、 国民の6割が普天間に基地は置くべきではないと答えている。

 

  沖縄県民に対する朝日の調査 (14日) によると、 首相の県内移設方針には76%の県民が反対と回答した。 賛成は13%にとどまっている。

 

  16日、 土砂降りの雨の中、 普天間基地の無条件返還と県内移設反対を求めて、 1万7千人の沖縄県民が手をつないで13キロの輪を造り、 「人間の鎖」 で普天間基地を包囲した。 1995年に始まった同基地の包囲行動は、 今回で5回目。 伊波宜野湾市長や稲嶺名護市長らも参加し、 「鳩山首相は公約を守れ」 「いまさら辺野古は許さない」 と訴えた。 テレビ各局は、 トップニュースでこの 「人間の鎖」 を伝えた。

 

  鳩山首相はこうした沖縄県民の叫びを無視して、 辺野古へのくい打ち桟橋方式による新基地建設などの方針を強引に決めようとしている。 民意に背を向けた方針にどのような成算があるのか。 怒りのマグマに火をつけるだけではないのか。

 

  鳩山首相は、 稲嶺名護市長との会談で 「将来的には、 グアム、 テニアンへの移設もあり得る話と思っている」 と発言している。 首相は、 仲井真知事に対しても海外移設を検討した事実を伝えている。 つまり、 首相には 「国外移設」 のオプションがあるのだ。

 

  首相は6月以降の検討作業の中で、 国外移設を政策選択肢の最優先テーマとして、 俎上に乗せるべきである。 自民党から政権を奪取した鳩山政権が国外移設を決断し、 米国と交渉しなければ、 沖縄の米軍基地は永久になくならないだろう。

 

  鳩山首相は、 65年にも及ぶ不条理に終止符を打ち、 沖縄と日本の自立の礎を築くことの出来る立場にいる政治家として、 千載一遇の機会に恵まれている。 それにも拘らず、 対米従属の情報や旧来型の政策発想に取り込まれて、 みすみすそのチャンスを放棄するのは愚の骨頂である。

 

  メディアにも、 普天間問題の根本的な解決策の核心に迫る報道が芽生え始めている。 テレビや新聞は、 取材力に磨きをかけ、 掘り下げた報道を一段と強化してほしい。 感度を鋭くしでニュースソースに迫り、 正確な情報を多角的に提供すれば、 鳩山政権の政策決定が誤ることのない世論形成に資することができる。