歌川学/科学者/科学レポート(1)/世界に広がる異常気象 地球温暖化進行で激化08/10/23

 

 

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世界に広がる異常気象

地球温暖化進行で激化

 

 最近、異常気象で被害が頻発、途上国を中心に大きな被害が出ている。

 異常気象には様々な原因があるが、その原因のひとつ、地球温暖化の影響が出始めていると言える。また、将来温暖化が加速すれば、異常気象の激化・多発と被害の激化が予想されている。

 

 温暖化の原因である温室効果ガス(CO2など)排出量の半分以上は先進国が占めるが、被害を最初に受けているのは排出の少ない途上国、とりわけ後発途上国の貧しい人々である。

 

 洪水や干ばつ、熱波、あるいは次に紹介する海面上昇などは、途上国にとっては国家安全保障の重大な問題といえる。先進国も、食料を輸入に頼る日本をはじめ、影響は不可避である。原因の一部が日本を含む先進国などの温室効果ガス排出にあるとすれば、責任も大きい。

 

 

■台風被害、洪水被害

 

 

 台風や洪水は、豪雨や激流で人命をうばい、また浸水で財産や社会基盤、農作物等を破壊してしまう。

 

 洪水被害は2002年夏の中欧の大雨・洪水が有名だ。数百年に1度という豪雨でブルタヴァ川(モルダウ川)、エルベ川などがあふれ、プラハ旧市街やドレスデン旧市街、ポーランドの諸都市などが水につかった。ドイツの被害は150億ドルと試算された。

 

 ハリケーン被害はアメリカを2005年に襲った「カトリーナ」が有名である。このときは人口50万人のニューオーリンズ市が水没し、1700人が死亡、被害額は100-250億ドルとされている。貧困層のすむ地域はいまだに復旧していないとも伝えられている。

 

最近の異常気象と影響
  特に大きな被害 当該国の被害 日本への直接の経済影響*
豪雨、洪水 中国揚子江流域(1998): 2.3億人被災 人命 食料輸入など
ミャンマー(2008): 死者不明約15万人 農業被害
バングラデシュ(2007): 被災800万人 資産や社会基盤の崩壊
ホンジュラス等(1998): 9000人死亡  
ハイチ等(2004):3000人死亡、30万人被災  
モザンビーク等(2000): 100万人被災  
干ばつ エチオピア等(2000): 1500万人の食料不足 農業被害 食料輸入など
ザンビア等(2002): 1500万人の食料不足 山火事
オーストラリア(2002-3)小麦収穫が半減以下に  
熱波 フランス等(2003):3.5万人死亡 人命・健康被害 食料輸入など
インド(1998):3000人死亡 山火事
インド(2003):1500人死亡  

 

 

 ところで、人的被害は途上国の方が大きいようだ。たとえばカリブ海沿岸諸国をおそったハリケーン被害をみると、ハリケーン「ミッチ」(1998年11月)が中米ホンジュラスなどを襲い、約9千人が亡くなった。ハリケーン「ジーン」(2004年9月)がハイチやバハマなどを襲い、ハイチを中心に3千人が亡くなり、また被災者は30万人に及んだ。1999年の南米ベネズエラ豪雨では5000-3万人が亡くなった。

 

 アジアでは、インド東部と中国揚子江流域が洪水被害の多い地帯だ。インド東部はインフラの問題もあって毎年数千人が被災している。最近はさらに、2007年にバングラデシュをサイクロン「シドル」が襲い、4000人以上が死亡、800万人が避難した。2008年5月にはミャンマーをサイクロン「ナルギス」が襲い、死者・行方不明者14.6万人と伝えられている。

 

 揚子江流域では、1998年夏に大洪水があり、3千人が亡くなり、2億3000万人が被災、被害額は300億ドルと伝えられている。

 

 アフリカは干ばつによる被害が大きいが、アフリカでも豪雨が猛威をふるっている。2000年2月に南部アフリカで大洪水が発生、後発途上国のモザンビークなどで数千人が死亡、百万人が被災する被害を出した。サハラ砂漠の周囲でも、2001年にはサハラ砂漠の北に位置するアルジェリアで豪雨が発生して5000世帯が被災、2007年にはサハラ砂漠の南で豪雨、150万人が被災した。

 

 強い台風や猛烈な豪雨は、将来温暖化が進行すると激化すると予想されている。日本でも、2000年9月の東海豪雨、2004年の10個の台風の上陸、昨今の「ゲリラ豪雨」などの以前にないような洪水被害が頻発している。洪水被害の激化は決して遠い国の話しではない。

 

 

■干ばつ

 

 洪水の頻発と同時に、干ばつも頻発している。干ばつは農業生産を直撃し、とりわけ灌漑設備が不十分で雨水に依存している途上国で被害が深刻である。

 

 まず、先進国の被害から。穀物輸出大国のオーストラリアがここ数年干ばつにみまわれ、2002-3年には小麦の収穫が平年の4割にまで落ち込み、その後も干ばつで被害が続いている。

 

 米国でも干ばつが頻発、米国東部では1998-9年に「過去105年で最悪」の干ばつで、農業被害が1200億円に及んだ。また、2003年には米国西部で干ばつと森林火災が発生、2003年にはカリフォルニア州で3000kmsの森林が消失した。

 

 ただし、前述の通り、干ばつは灌漑設備が不十分で雨水に依存している途上国の被害がとりわけ深刻である。

 

 アフリカはたびたび干ばつを受け、特に東アフリカやサハラ砂漠周辺、南部アフリカは深刻である。1999-2000年には東アフリカの干ばつでエチオピアやケニアで1500万人の食料不足、2002年の南部アフリカの干ばつでザンビアなどで1500万人の食料不足になった。

 

 中国では揚子江流域がたびたび洪水に見舞われていることを紹介した。同じ中国でも黄河流域は干ばつが続き、農業などに被害が出ている。

 

 

■熱波

 

 熱波も増加している。日本での調査でも最高気温30℃を超えると被害が出始め、気温上昇とともに急増し、死に至ることもある。

 

 熱波は、2003年夏の欧州の被害が有名だ。8月の最高気温が25℃程度のパリで、連日40℃の猛暑となり、欧州で3.5万人(ワールドウォッチの推計では5万人)が亡くなった。欧州は2006年、2007年にも熱波があり、2007年7月はイタリアから東欧にかけて45℃の気温を記録、千人がなくなったと報道された。また、8?9月にかけて山火事があいついでいる。

 

 インド西部は干ばつや熱波の大変多い地域である。1998年の熱波の際には3000人、2003年の熱波の際には1500人が死亡している。

 

 熱波は、温暖化の影響だけではないが、温暖化で平年気温が今後上がって来ると影響が大きくなる。熱中症による死者は日本の場合、日最高気温が30℃を超えると増え始め、高温になると急激に増加する。いまのところインフラ等、適応力のない途上国での被害が目立つが、今後は被害が拡大することが懸念されている。

 

 

■まとめ、異常気象発生と温暖化

 

 

 これらの現象は、洪水被害であれば、台風など従来からの被害や偶然の特異な気圧配置、被災地周辺や上流での森林伐採や乱開発、都市部であればヒートアイランド現象などの影響もある。しかし、温暖化が激化すると異常気象が増加すると予想されている。今の被害の一因になっていることが予想される。

 

 今回は、近年おこっている異常気象をとりあげた。異常気象は多くの原因があり、温暖化の進行はそのひとつの原因と考えられる。冒頭に述べたように途上国の被害が大きく、産業基盤や生存基盤を奪うような被害もある。今後地球温暖化が進行すると、こうした異常気象の頻度も規模もともに大きくなり、これは人類の基盤に関わるレベルになりかねない。

 

 

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 次回以降、気温上昇やその被害、被害を抑えるための削減、その具体的対策等を紹介して行く。