梅田正己/編集者/2013年11月26・27日――眼前で進行する「民主主義の圧殺」2件 2013/11/29

             2013年11月26・27日――

       眼前で進行する「民主主義の圧殺」2件

                                 梅田  正己 (編集者)

◆歴史に刻まれた2つの「強行採決」

1960年5月19日、岸信介首相の自民党は、衆院に警官隊を導入、日米安保条約の改定を強行採決した。
新憲法の下、日本に根づきはじめた民主主義が、数の暴力と物理的暴力により、絞め殺された瞬間だった。これにより、今日につづく日本の対米従属路線が確定された。

それから53年、2013年11月26日、岸の孫・安倍晋三首相の自民党は、国民の目と耳、口を封じる特定秘密保護法を衆院で強行採決した。
数の暴力により、ふたたび日本の民主主義が絞め殺された。

27日、新聞各紙の1面には、「採決強行」の文字が躍った。
朝日「秘密保護法案 衆院通過/自公が採決強行 みんな賛成、維新棄権」
毎日「与党が採決強行/秘密保護法案 衆院通過『知る権利』懸念残し」
東京「秘密 政権意のままに/秘密保護法案 採決強行 衆院通過 修正案 根幹変わらず」

こうした中、読売には1面に「強行」の文字はなかった。
読売「秘密保護法案 衆院通過/自公のみ賛成 維新は退席」
加えて、読売は社説の冒頭で、「日本にも他の先進国と同様の機密保全法制が必要だとの意思が、明確に示されたと言えよう」と、その衆院通過を評価していた。

53年前の自民党の暴挙に対しては世論が沸騰、デモの波が連日、国会を取り巻いた。
それに対し、6月17日、在京の新聞7社は「暴力排除・議会主義を守れ」の「7社共同宣言」を出し、市民の直接行動に水をかけた。
2日後の19日、新安保条約は“自然承認”で成立した。

半世紀前のこの教訓を、新聞各社がどこまで記憶しているだろうか。
朝日や毎日が(立ち上がりは早くなかったものの)今回見せてくれた民主主義擁護のがんばりをどこまで貫くか、しっかりと見守りたい。

◆「筆端火を吐く」沖縄2紙の社説

秘密法の衆院強行採決の翌27日、自民党は沖縄でも念願の“戦果”を挙げた。
沖縄世論にささえられ普天間基地「県外移設」の主張を保持していた自民党沖縄県連を、自民党本部がついに切り崩し、屈服させて、「県内移設」方針に鞍替えさせたのだ。
これに対する沖縄の地元2紙の追及は厳しかった。
私の余計な解説は除いて、2紙の28日社説の一部を引用する。

◎まず琉球新報の社説の冒頭。

「自民党県連が県議の議員総会を開き、米軍普天間飛行場の辺野古移設容認を決めた。県議らは県外移設を公約していたから、公約の撤回だ。公約を媒介に有権者と候補者が契約を結ぶという代表制民主主義を根底から破壊した。
  それだけではない。沖縄の政治家も公約の軽さを全国に発信した。恫喝に屈して節を曲げる大人の姿を子どもたちに見せてしまった。自らが県民の命と人権を脅かす側に回る罪深さを自覚しているのか。
  公約を撤回する以上、有権者との信託関係は消滅した。自民党県連の県議は全員、議員の職を辞し、信を問うべきだ。」

「県議会は2010年2月、「県内移設に反対し、国外・県外移設を求める意見書」を自民会派も含む全会一致で可決した。ことし1月には超党派の県議団が県内の全市町村長とともに県内移設断念を求める「建白書」を政府に提出した。県連の決定は、民意もこれらすべても裏切る行為である。
  党本部は今回、離党勧告をちらつかせていた。自民党国会議員も県連も、自分の保身のために沖縄を売り渡したに等しい。沖縄の近現代史に刻まれる汚点だ。」

◎次に、沖縄タイムスの28日社説。

「沖縄関係の自民国会議員5人に続き、県議団(議員15人)も「県外移設」の公約をあっさり撤回した。「みんなで渡れば怖くない」を地でいくような雪崩現象だ。」

「東京・永田町の自民党本部で開かれた石破茂幹事長の会見の光景は、歴史の歯車が1879(明治12)年の琉球処分まで後戻りしたような印象を抱かせた。
  説明する石破幹事長は琉球処分官、一言も発する機会がなく、椅子に座ったまま硬い表情の国会議員5人は、沖縄から連行され、恭順を誓った人びと…。」

「国場幸之助衆院議員ら3人は、それまで「県外移設」の公約を堅持していた。離党勧告をちらつかせた党本部の圧力に耐え切れなくなったのである。」
「外堀から埋めていって、「オール沖縄」の構図を崩し、政治状況が変わったことを理由に仲井真弘多知事の翻意を促す―それが、安倍政権と自民党が一体になって進めてきた沖縄対策だ。」

「政府は辺野古が唯一の選択肢だと強調する。ならば、安倍政権は、他にどのような選択肢を検討したのか、どのプランのどこに問題があったのかをまず明らかにすべきである。
  それもせず結論だけを押しつけるのは情報操作と言うしかない。」
               *       *        *
「舌端火を吐く」という言い方がある。同様の言い方をすれば、「筆端火を吐く」となるだろう。
まさに、パソコンから炎が噴きあがるような激しい怒りの社説である。
半世紀以上にわたって犠牲を強い続けてきたのに、今後もさらに欺瞞と恫喝によって犠牲を強いようとする日本政府に対する怒りである。
しかもその政府の欺瞞と恫喝に真っ先に屈服したのが、自分たちの選んだ政治家たちだった。そのことへのやりきれなさが、怒りと入り混じってここに渦を巻いている。
タイムスの社説のタイトルはこうである。
――「自民県連 辺野古容認」恥ずべき裏切り行為

2013年11月26・27日、この国の今後のあり方を決定的に左右しかねない出来事が連続して引き起こされた。
これまでも崩れかけていたこの国の民主主義が、ガラガラと轟音を立てて崩壊してゆく、その間際に立たされているような気がしてならない。(了)