梅田 正己/ジャーナリスト)/著書『「非戦の国」が崩れゆく』(高文研)他)//日米同盟の「変革と再編」で突き進む日米両軍の一体化/06/05/11

 


日米同盟の「変革と再編」で突き進む日米両軍の一体化

だがその法的根拠はどこにあるのか?

           梅田 正己(編集者。著書『「非戦の国」が崩れゆく』他)

昨年10月末の「中間報告」の発表からちょうど半年後の5月1日、日米同盟再編についての最終合意文書が発表された。

今回の主報告のタイトルは「再編実施のための日米のロードマップ(行程表)」となっている。

昨年10月29日発表のいわゆる中間報告のタイトルは「日米同盟――未来のための変革と再編」だった。

つまり、「日米(軍事)同盟の変革と再編」のための「ロードマップ」が、今回の最終合意文書というわけだ。

「変革と再編」と題しているだけあって、この計画が実施されると、日米同盟のありようは一変する。わけても飛躍的に進むのが、日米両軍の一体化だ。

現在、ワシントン州にある米陸軍第一軍団司令部は新たな統合作戦司令部へと改編され、神奈川県のキャンプ座間へと移転してくる。

同司令部は、東北アジアから中東へと広がる「不安定の弧」をにらむ、米四軍(陸・海・空・海兵)の前線司令部となる。

そのキャンプ座間に、陸上自衛隊の中央即応集団司令部が、2012年度までに移転してくる。中央即応集団とは、「即応」の文字から分かるとおり、緊急時に対応できる特殊部隊や空挺部隊で構成される部隊のことだ。

その司令部が米軍の統合作戦司令部とキャンプ座間に同居するというのだ。

自衛隊が単独で「不安定の弧」へ出撃するという事態は、まずもって考えられない。

想定できるのは、統合作戦司令部による作戦の中に、自衛隊の特殊部隊や空挺部隊が投入されることだけだ。

今回の再編で、沖縄の海兵隊基地キャンプ・ハンセンを、沖縄駐屯の陸上自衛隊も使えることになった。これまでは演習地がないため、大分県の日出生台演習場などに出かけて訓練していたが、今後は沖縄でやれることになったのだ。

同じ沖縄の航空自衛隊も、米軍との共同訓練のために、嘉手納飛行場使えることになった。

現在、那覇基地に常駐するF4ファントムは、近くF15戦闘機に切り替えられることになっている。

今後は、日米両軍が、同じF15戦闘機を使って、嘉手納基地で共同訓練することになるわけだ。

一方、その嘉手納基地を含め、青森県の三沢飛行場、山口県の岩国飛行場にいる米軍機は、日本国内の航空自衛隊基地を使って訓練できることとなった。−−千歳、三沢、百里、小松、築城、新田原などだ。

ロードマップでは、「双方は、将来の共同訓練・演習のための自衛隊施設の使用拡大に向けて取り組む」と述べている。

「双方は」と言っているが、使用するのは自衛隊の施設なのだから、日本側が「取り組む」ということだ。

ところで、日米同盟の法的基盤は、いうまでもなく日米安保条約だ。その第5条「共同防衛」には、こう書かれている。

「(日米両国は)、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が」生じた際には、「共通の危険に対処するように、行動することを宣言する」。

つまり、在日米軍基地を含め、日本が攻撃を受けた際には、共同で対処するということだ。

ところが今回の「日米同盟−−変革と再編」では、遠く中東までも作戦対象域に含む米軍の統合作戦司令部を首都圏に置き、あわせてそこに自衛隊の特殊部隊、空挺部隊の司令部を置くというのだ。

ここに想定されている日米同盟の姿は、安保条約に示された「共同防衛」の域をはるかに突破している。

沖縄の海兵隊、非実戦部隊のグアム移転のため、7000億円を日本国民が負担することになるという。

安保条約第6条に規定された米軍への基地提供義務は、もちろん日本国内に限られている。

海外、まして米国領土に建設する基地に日本国民の税金を投入する法的根拠はない。

したがって、グアムでの新基地建設に国費を投入するには、当然、新たな法律の制定が必要となる。

同様に、この最終合意どおり日米両軍の一体化をすすめるためには、日米安保条約の改定が必要ではないのか。

もしもそれに目をつぶり、このまま「再編」を推し進めるとしたら、この国はもはや法治国家と呼ばれるには値しない国となるだろう。