梅田正己/編集者/■オスプレイの配備と訓練の問題――ハワイでできることが、沖縄でなぜできない? 12/10/02

 

梅田  正己 (書籍編集者)

10月1日、内閣改造を終えた記者会見で、野田首相は、この日に普天間に飛来したオスプレイについてこう繰り返した。

「日本政府として、安全性を十分に確認できたと考えています。」

政府が安全だといっている根拠は、次の二つだ。
(A)森本防衛大臣が試しに一回乗ってみて、安全だと思った。
(B)米軍が安全だと保証してくれた。
どちらも笑い話にもならない。

ハワイ・オアフ島には、30万人からなる太平洋軍の司令部が置かれている。
(※以下、琉球新報の松堂秀樹記者による9月4日からの連載記事より)
そのオアフ島の東岸、カネオヘ・ベイ(カネオヘ湾)の海兵隊基地にも、オスプレイ24機が配備されることになっている。
ただし、その時期は2014年度からである。つまり普天間の2年後だ。

自国の本拠地の基地への配備より2年も前に、出先の外国の基地に配備する、その理由は何なのか?
オスプレイが試験飛行で何度も事故を起こし、「未亡人製造機」とさえ言われたことは、誰もが知っている。
まず試しに、外国の基地に実際配備してみて、十分にテストした上で自国の基地に配備しよう、ということではないのか?

また、カネオヘ・ベイ基地は、その名の通り海に面している。その飛行場に着陸する軍用機は、東方面の海からやってきて降りる。湾の西の方には民間地が広がるからだ。
離陸のときは、もちろん東の海の方へ向かって飛び立つ。
ところが、普天間は内陸にある。周囲は住宅や学校などに取り巻かれている。民間地の上を飛ばないで離着陸はできない。

普天間に配備されたオスプレイは、訓練のため、嘉手納基地、キャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブ、そして北部訓練場に設置されるヘリパッドへ飛ぶ。
つまり、沖縄本島の上空を縦断して飛ぶ。米軍の資料でも、25の市町村の上空を飛ぶ。
したがって、騒音による被害、墜落の不安は、本島全体をおおうことになる。

カネオヘ・ベイ基地に配備予定のオスプレイについては、もう一つ、瞠目すべきニュースがある。
オアフ島の東南、50キロ離れたモロカイ島には、カラウパパ空港とモロカイ空港の二つがあるが、そこで予定されていたオアフ島のオスプレイの訓練が、住民の抗議によって撤回されたのだ。今年8月のことである。

新たな基地の建設や訓練地の確保に当たっては、アメリカ本国では環境保護法により、軍(この場合は海軍省)がアセスメントを作成し、それを公示して住民の意見を聞かなくてはならない。
そのアセスに対し、モロカイ島では住民がいっせいに反発、訓練計画は撤回せざるを得なくなったのだ。
あわせて、南方にあるハワイ島のウポル空港での訓練計画も撤回された。

ひるがえって、普天間はどうか。アセスメントはその気配すらない。
モロカイ島の場合、新たな基地の建設ではなく、訓練計画が問題だった。
普天間も、たんなる配備ではなく、25市町村を股にかけての訓練だ。
住民も、県知事以下こぞって反対している。

だが、わがノダ首相は、防衛大臣が一回乗せてもらっただけで、
「日本政府として、安全性を十分に確認できたと考えています。」
と、のたまわる。

アメリカは本国でアセスメントを行ない、住民の意見を取り入れた。
同じ、軍部と住民の間に生じた問題だ。ハワイでできたことが、沖縄ではなぜできないのか。
アメリカは法治国家、日本も同じ法治国家である。
本国で法にもとづいて行なっていることを、同盟国でなぜできないのか? その理由は何なのか?

もうオスプレイに乗せてもらうのはいいから、ノダ首相にはぜひとも、オバマ大統領に公開質問状を送って、そう尋ねてもらいたい。(了)