梅田 正己/ジャーナリスト)/著書『「非戦の国」が崩れゆく』(高文研)他)/辺野古――「合意」のたびに基地が大きくなる/06/04/15

 


辺野古――「合意」のたびに基地が大きくなる

     梅田 正己(編集者。著書『「非戦の国」が崩れゆく』高文研ほか)

 さる4月7日、額賀福志郎・防衛庁長官と島袋吉和・名護市長は、辺野古?をまたぐ米海兵隊の新航空基地建設案で合意した。
 新建設プランでは、滑走路が1本ふえ、V字型になっている。その分、辺野古サンゴ礁の側に張り出すとともに、大浦湾側にもせり出している。

 昨年10月29日の「中間発表」でも、当初の「ヘリポート」などとはケタ違いの、軍港機能まで併せ持つプランが提示され、闇討ちにあったような衝撃を受けたが、今回のV字型滑走路の提案も同様に「寝耳に水」の衝撃だ。
 また、前回の案では、当初の滑走路1本から、広い駐機場を持つ航空基地へと拡大されたが、今回はそれがさらに拡大されている。つまり、新たな「合意」がなされるたびに基地は大きくなっているのだ。

 

しかし例によって、現地・沖縄の衝撃と憤激を伝えるマスメディアの声は、東京新聞をのぞいて弱い。


 防衛庁長官と名護市長の「合意」が成立したのは、7日の夜だった。したがって各紙の社説は、翌々日の9日に出た。
 ところが読売新聞だけは、先だっての岩国の市民投票のときと同様に、翌8日の紙面に掲載された。表題は「早期移設へ着実に作業を進めよ」。

表題からしてえらそうだが、こう言っている。

《……中国の軍事力増強などで、地域の安全保障環境は不透明さを増している。在日米軍の再編は、北東アジアから中東に至る「不安定の弧」を視野に入れたものだ。こうした情勢の下で、沖縄の基地の重要性は一層高まっている。》
《今回の合意は、在日米軍再編に関する日米最終合意へ、一定の前進となる。》
《日本や地域の平和のために日米同盟を強化する上でも、政府は、責任を持って問題解決を急がねばならない。》
 いかにも“予定稿”らしく、日米両政府の主張をさらにトーンを強めて言っているにすぎない。「御用新聞」の面目だけは躍如としている。

 今回の防衛庁長官と名護市長との協議で問題となったのは、騒音、それも米軍機が集落の上空を飛ぶときの騒音だけだった。それを避けようと、滑走路を1本ふやしたのだ。
 しかし、辺野古に新航空基地を建設することの問題は、騒音だけではない。
 何よりも、新航空基地の建設によって、“基地の島”としての沖縄が恒久化することを、沖縄の人たちは怖れ、反対しているのだ。また、沖縄が今後もずっと米軍の出撃基地となることで、自分たちが意思に反して加害者の立場に立たされ続けることを、沖縄の人たちは拒否しているのだ。つまり、新たな基地の建設そのものに、沖縄の人たちは反対しているのだ。

 もう一つの重大な問題は、自然環境の破壊だ。辺野古のサンゴ礁は沖縄本島に残った最良のサンゴ礁だ。

基地が建設されれば、このサンゴ礁もまちがいなく破壊される。
 このサンゴ礁にはまた、世界最北端に生きるジュゴンの餌場となっている海草アマモの藻場がある。基地が建設されれば、この藻場も壊滅する。そしてジュゴンも、絶滅するだろう。

 

左写真転載(http://www.sdcc.jp/top.html)→

 V字型滑走路で騒音問題は解決、地元の合意が得られたと、小泉首相はじめ政 府は喜んでいるが、根本的な問題はまだそっくり未解決のまま残っている。そのことを伝えるメディアの使命もまた、そっくり残っている。(了)