梅田正己/編集者/語るに落ちた! 米国務省メア日本部長のホンネ 11/03/10


語るに落ちた!

 

―米国務省メア日本部長のホンネ―

 

梅田  正己 (書籍編集者)

 

 

  米国務省のケビン ・ メア日本部長の傲慢不遜の暴言は、 彼が沖縄総領事だったときから沖縄の新聞報道で知っていた。

 

  今回、 テレビでその野卑な顔つきを見て、 なるほどと合点がいった。 まさに、 この顔にして、 あの発言あり、 である。

 

  それにしても、 オバマ政権がこんな人物を国務省の日本部長に就けていたとは !

 

  しかし、 ここでいま私が取り上げようとしているのは、 今回のメア発言の沖縄・日本への差別意識丸出しの部分ではない。

 

  日米安保と憲法9条に関する発言部分である。

 

  そこに、 米国政府 (国務省 ・ 国防総省) のホンネが、 あからさまに表出されていると思うからだ。

 

■メア日本部長は日米安保をどう見ているか

 

  まず安保についてである。 こう語っている (以下、 発言は3月10日付け朝日 「メア日本部長の発言 (要旨)」 から)。

 

  ―― 「日米安保条約上の日本の義務は基地のための土地を提供することだ」

 

  この発言は正しい。 第6条だ。 「日本と極東の安全と平和のために」 日本政府は米軍のために 「施設及び区域」 を提供する、 とされている。

 

  普天間問題だけでなく、 日本における全ての米軍基地の問題は、 この安保条約6条から発しているのだ。

 

  問題は次である。

 

  ―― 「安保条約上の日米関係は非対称で、 日本に有利、 米国に不利だ。 日本は米軍が攻撃されても米国を守る義務を負わないが、 米国は日本の人々と財産を守らねばならない」

 

  よく聞く議論だ。 いわゆる日米安保 「片務論」 である。 米国だけが義務を負って、 日本は負わない。 米国の青年が血を流して日本を守る覚悟でいるのに、 日本は土地と金だけを提供してすましている、 と米国の高官の何人かが言った。 日本にも、 同じことを言う政治家がいる。

 

  しかし、 この発言は正しくない。 安保条約第5条にはこう書かれている。

 

  日米両国は 「日本国の施政の下にある領域における、 いずれか一方に対する武力攻撃が、 自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め……共通の危険に対処するように行動する」

 

  まわりくどい言い方になっているが、 要約すると、 「日本の領域にある、 いずれか一方に対する武力攻撃には共同で対処する」 ということだ。 つまり、 日本の領域内に 「米国」 が存在することを前提にしている。

 

  では、 「日本の領域にある米国」 とは何か ?

 

  もちろん、 米軍基地である。 沖縄を中心に、 三沢から横須賀、 岩国、 佐世保と、 日本列島の全域に点在する米軍基地が攻撃されたときは、 日本の自衛隊、 さらには民間の組織や人員も含め 「共同防衛」 に立ち上がる、 とされているのである。

 

  有事のさい、 最初にねらわれるのはどこか ?

 

  答えは言うまでもない。 軍事基地である。

 

  その最初の、 かつ最大の攻撃目標となる米軍基地を、 日本は自衛隊を中心に共同防衛することを義務づけられているのである。

 

  日米安保が 「非対称」 だなどと言うのは、 条文をちゃんと読んでないか、 または真実をごまかそうとしている人間の言うことである。

 

  まして日本は、 安保条約にも地位協定にもない 「思いやり予算」 まで組んで、 米軍を歓待している。 「非対称」 の恩恵をたっぷり受けているのは、 米国のほうなのだ。

 

  なお続けて、 メア日本部長はこう言っている。

 

  ―― 「米国には二つの理由で沖縄に基地が必要だ。 基地がすでにそこにあり、 地理的に重要だからだ」

 

  2番目の地政学的重要論はよくある説として、 1番目の 「基地がすでにそこにあり」 というのはどういう意味なのか。

 

  発言内容そのものが 「要約」 なので断言はできないが、 「既得権」 のことを言っているのではないだろうか。

 

  沖縄の基地は、 米軍が沖縄戦で大量の血を流して獲得した 「既得権益」 だ。 容易なことでは手放せないぞ。 そう言っているのではないだろうか。

 

  外務官僚とは思えない傲慢不遜な発言も、 こうした認識から発しているのかも知れない。

 

■メア日本部長はなぜ 「憲法9条を守りたい」 のか

 

  このあと、 言いたい放題の暴言を重ねるのだが、 そこは飛ばして、 最後の発言部分を取り上げる。 こう言っている。

 

  ―― 「憲法9条を変えるべきだとは私は思わない。 憲法が変わることは米国にとって悪い」

 

  憲法9条は変えないほうがいいというのである。 なぜか。

 

  9条を変えるということは、 日本の軍備拡大の制限を撤廃するということ、 また自衛隊の海外出動も (国際的な責務を果たすという理由で) 無制限とする、 ということだ。 すなわち、 自主防衛、 軍事国家の復活。

 

  となると、 「米軍に守ってもらう」 という事態は、 当然解消する。

 

  つまり、 米軍が日本に基地をおく理由はなくなる。

 

  従って、 米軍は日本から出てゆくことになる。 少なくとも、 これまでのように “お客様” 扱いで駐在することはできなくなる。

 

  このことを、 メア氏は、 続いてこのように表現する。

 

  ―― 「 (日本が自主防衛となると) 日本に在日米軍が不要になるからだ。 憲法が変われば米国は日本の国土を米国の利益を促進するために使えなくなる」

 

  ついにホンネが出た。 そしてさらに、 ダメ押しするかのように、 メイはこう言っているのだ。

 

  ―― 「日本政府が支払う高価な受け入れ国支援 (思いやり予算のことだ) は米国の利益だ。 我々は日本でとてもいい取引をしている」

 

  メア氏は冒頭で、 「日米安保は非対称で、 日本に有利、 米国に不利」 と言っていた。

 

  しかしここへ来て、 「我々は日本でとてもいい取引をしている」 と前言をひっくり返した。

 

  発言の中でメア氏は日本人の 「建前と本音」 について、 気をつけなくてはならないと言っている。

 

  何のことはない。 建前と本音を使い分けているのは、 ケビン ・ メア本人 (つまり彼を日本部長としている米国国務省) だったのだ。

 

「語るに落ちる」 とは、 まさにこういうことを言うのである。 (了)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

米国務省・メア日本部長の発言録全文


アメリカン大の学生らが作成したメア日本部長発言録全文は次の通り。
 私は2009年まで駐沖縄総領事だった。在日米軍基地の半分が沖縄にあるといわれているが、この統計は米軍専用基地だけ勘定している。もし、米軍基地と米軍と自衛隊の共用基地のすべてを考慮に入れれば、沖縄の基地の割合はもっと小さくなる。
 沖縄で問題になっている基地はもともと水田地帯にあったが、沖縄が米施設を囲むように都市化と人口増を許したために今は市街地の中にある。
 沖縄の米軍基地は地域の安全保障のために存在する。基地のために土地を提供するのが日米安保条約に基づく日本の責務だ。
 日米安全保障条約に基づく日米関係は非対称で、日本は米国の犠牲によって利益を得る。米国が攻撃されても日本は米国を守る責務はないが、米国は日本を守らなければならず、日本の人々と財産を保護する。
 集団的自衛権は憲法問題ではなく、政治問題だ。
 1万8千人の米海兵隊と航空部隊が沖縄に駐留している。米国が沖縄に基地を必要とする理由は二つある。既にそこに基地があることと、沖縄は地理的に重要な位置にあることだ。(東アジアの地図を見せながら)、在日米軍の本部は東京にあり、そこは危機において、補給と部隊を調整する兵たん上の中心に位置する。
 冷戦時に重要な基地だった三沢はロシアに最も近い米軍基地であり、岩国基地は朝鮮半島からわずか30分だ。さらに、沖縄の地理的位置は地域の安全保障にとって重要だ。
 沖縄は中国に朝貢していたが、独立した王国だった。中国の一部になったことはない。米国は1972年まで沖縄を占領した。
 沖縄の人々の怒りや失望は米国でなく日本に向けられている。日本の民主党政権は沖縄を理解していない。日本政府は沖縄とのコミュニケーションのパイプを持っていない。私が沖縄の人と接触しようと提案すると、民主党の関係者は「はい!はい、お願いします」という。自民党の方が現在の民主党政権よりも、沖縄と通じ合い、沖縄の関心を理解している。
 3分の1の人は軍隊がない方が世界はもっと平和になると思っているが、そんな人たちと話し合うのは不可能だ。
 09年の選挙が民主党に政権をもたらした。これは日本では初の政権交代だ。鳩山首相は左派の政治家だ。民主党政権下で、しかも鳩山首相だったにもかかわらず、米国と日本は2+2(外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会)の声明を(昨年)5月に発表することができた。
 〈メア氏は部屋を退出し、彼の2人の同僚が日米の経済関係について講義。メア氏が戻ってきて講義を再開すると、2人の同僚は部屋を出た〉
 米国は普天間飛行場から海兵隊8千人をグアムに移し、米軍の存在感を減らすが、軍事的プレゼンス(存在)は維持し、地域の安全を保障、抑止力を提供する。
 (米軍再編の)ロードマップのもとで日本は移転費を払う。これは日本による実体的な努力のしるしだ。日本の民主党政権は実施を遅らせているが、私は現行案が実施されると確信している。日本政府は沖縄の知事に対して「もしお金が欲しいならサインしろ」と言う必要がある。ほかに海兵隊を持っていく場所はない。日本の民主党は日本本土への施設移設も言ってきているが、日本本土には米軍のための場所はない。
 日本の文化は合意に基づく和の文化だ。合意形成は日本文化において重要だ。
 しかし、彼らは合意と言うが、ここで言う合意とはゆすりで、日本人は合意文化をゆすりの手段に使う。合意を追い求めるふりをし、できるだけ多くの金を得ようとする。沖縄の人は日本政府に対するごまかしとゆすりの名人だ。
 沖縄の主産業は観光だ。農業もあるが、主産業は観光だ。沖縄ではゴーヤー(ニガウリ)も栽培しているが、他県の栽培量の方が多い。沖縄の人は怠惰で栽培できないからだ。
 沖縄は離婚率、出生率、特に婚外子の出生率、飲酒運転率が最も高い。飲酒運転はアルコール度の高い酒を飲む文化に由来する。
 日本に行ったら本音と建前について気を付けるように。言葉と本当の考えが違うということだ。私が沖縄にいたとき、「普天間飛行場は特別に危険ではない」と言ったところ、沖縄の人は私のオフィスの前で抗議をした。
 沖縄の人はいつも普天間飛行場は世界で最も危険な基地だと言うが、彼らは、それが本当でないと知っている。(住宅地に近い)福岡空港や伊丹空港だって同じように危険だ。
 日本の政治家はいつも本音と建前を使う。沖縄の政治家は日本政府との交渉では合意しても沖縄に帰ると合意していないと言う。日本文化はあまりにも本音と建前を重視するので、駐日米国大使や担当者は真実を言うことによって批判され続けている。
 米軍と日本の自衛隊は違った考え方を持っている。米軍はありうる実戦展開に備えて訓練しているが、自衛隊は実際の展開に備えることなく訓練をしている。
 日本人は米軍による夜間訓練に反対しているが、現代の戦争はしばしば夜間に行われるので夜間訓練は必要だ。夜間訓練は抑止力維持に欠くことができない。
 私は日本国憲法9条を変える必要はないと思っている。憲法9条が変わるとは思えない。日本の憲法が変わると日本は米軍を必要としなくなってしまうので、米国にとってはよくない。
 もし日本の憲法が変わると、米国は国益を増進するために日本の土地を使うことができなくなってしまう。日本政府が現在払っている高額の米軍駐留経費負担(おもいやり予算)は米国に利益をもたらしている。米国は日本で非常にうまくやっている。