池田龍夫/ジャーナリスト・元毎日新聞記者/避難住民の「心の荒廃」が心配ー12/02/01

 

 

避難住民の「心の荒廃」が心配

池田龍夫 (元毎日新聞 ・ ジャーナリスト)

 

 豪雪が続いて日本列島は震えているが、特に放射能汚染地域の福島県などの悩みは深い。事故原発「冷温停止宣言」(昨年12月16日)以降も除染作業は進まず、住民の不安はいぜん続いている。

    「14年3月までに除染完了」との工程表を示したが…
  環境省は1月26日、除染作業の見通しについて、またまた「工程表」を発表。「2014年3月までの完了を目指す」との目標を示したが、国民の多くは疑心暗鬼である。政府の被災地復興の動きが鈍く、地方自治体との認識の差が、不信感を増幅しているからだ。

   「飯舘村の苦悩」をルポした検証記事が光る
  毎日新聞29日付朝刊は「検証 大震災」の大特集を組み、被災住民の苦悩をリアルに描いていた。「計画的避難区域」に指定された福島県飯舘村に取材エリアを絞って、克明にルポした手法に、臨場感を感じた。「飯舘 心の荒廃懸念」との4段見出しで1面に本記を掲載、中面2㌻(広告ナシ)にルポルタージュをまとめた、大胆な紙面展開である。
  飯舘村は福島第一原発から30㌔も離れた地域なのに、放射能汚染が特に酷い。〝原発立地〟補助金の恩恵もないのに、一方的に被害を受けた気の毒な村だ。
  菅野典雄村長が開口一番「ストレスで避難民にイガミ合いが生じている」と述べ、「心の荒廃」を嘆いた言葉が、胸に突き刺さる。同村が先月まとめた住民アンケートによると、仮設住宅などに暮らす家族の5割は同居できず、収入が5割以上減った人が34・7%に上るという。不安を訴える村民が増えており、菅野村長が「天災ならゼロからスタートできるが、放射能汚染相手だと3年先、5年先でもスタートを切るのは簡単ではない」と語っていたのが印象に残る。
  見開き紙面は、飯舘村でユニークな豊栄地区のルポ中心で、教育長と農民の日記を随所に紹介しながら、震災後の苦闘を綴っている。同地区の開拓は、戦後旧満州やシベリヤ抑留から帰国した18人の若者が入植して原生林を開いたことに由来する。それだけに村人の結束は固かったが、無残にも全てが破壊されてしまったのである。
  飯舘村からの避難者は、福島市など県内が多いが、全国に散っており総計6525人に達する。もちろん村役場はなく、農産物や飯舘牛で有名な村が〝無人地帯〟に転落してしまったことは、悲痛の極みだ。

   「18歳以下の医療費無料化」に応じない野田政権
  異常事態を前に、政府は〝上から目線〟の対策にオロオロしている印象を受ける。平野達男復興相は1月28日、佐藤雄平福島県知事を訪ね、「知事が要望していた18歳以下の医療費無化を断念する」と伝え、知事を落胆させた。先の野田佳彦首相への陳情が実らなかったわけで、佐藤知事は「県単独でも、健康管理基金を活用して無料化を実施したい」と反発している。東北3県の中で最も過酷な原発被害を受けた福島県に対して、余りにも冷たい政府の仕打ちではないか。18歳以下の医療費無料化に必要な経費は、年間100億円近くだそうで、特別措置を取れないほど高額ではないと思う。