池田龍夫/ジャーナリスト・元毎日新聞記者/沖縄知事選の動向を気にする安倍政権 14/07/28

              沖縄知事選の動向を気にする安倍政権

                        池田 龍夫 ( ジャーナリスト ・元毎日新聞)

 滋賀知事選敗北で大慌て
  集団的自衛権や原発再稼働を目論む安倍晋三政権の強引な政治運営に〝怪しさ〟を感じる国民が増えてきた。安倍政権はやっと世論を気にし始めたのだろうか。その第一に挙げられるのが、滋賀県知事選挙(7月13日)での自民党敗北である。「卒原発」を唱える嘉田由紀子知事の後任に指名された三日月大造氏(元民主党)が、自公民推薦の小鑓隆史氏を僅差で破ったことに与党陣営は慌てている。10月26日に福島県知事選、次いで11月18日には沖縄知事選が行われる。来春には統一地方選を控えており、与党は〝安倍不人気〟を重大視。政府が秋の臨時国会に安全保障に関わる法案の一部を提出する予定を、来年の通常国会への提出に変更するなどの対応策を出したのも、沖縄知事選などへの悪影響を意識したものに違いない。

 「佐賀県にオスプレイ移転」も考慮
  一方、政府は22日、佐賀県に対し普天間基地で運用している米海兵隊の垂直離着陸輸送機オスプレイ受け入れを要請した。これも沖縄知事選をにらんだもので、移転予定地の名護市辺野古沖の工事を促進させる狙いもある。オスプレイ受け入れ先の自治体に交付金を拡充するというが、住民の反対が強く、今後の展開が危ぶまれる。

 安倍政治の〝右寄り〟を警戒〟
  サンデー毎日8月3日号の「倉重篤郎の時評」は、滋賀県知事選について、「この選挙の特徴の一つは、事前の世論調査のデータが目まぐるしく入れ替わったことであった。元民主党国会議員は出馬表明(5月9日)段階ではその露出先行でややリードしたが、自民が政権与党として本腰を入れると途端に逆転をくらい、一時は2桁ポイントまで差をつけられた。ところが、告示(6月26日)を挟んで次第に差が縮まり、7月に入ると両者は拮抗、追い越してそのまま逃げ切った形だ。元民主陣営の裏選対を仕切った馬渕澄夫民主党選対委員長によると、そのトレンドは昨年暮れから始まっていた。安倍政権が国家安全保障会議設置、特定秘密保護法強行、武器輸出の解禁、靖国神社といった一連の保守・右寄りの政策、言動を連射するに従って、国民世論にそれを牽制するアンチ安倍パワーが芽生えた、というのだ」(要旨)と断じている。

 自民党本部にも焦燥感
  仲井真弘多沖縄県知事は7月26日、11月の知事選に三選を目指して立候補の意向を表明した。辺野古移設推進派の仲井真氏に対し、反対を唱える翁長雄志氏が立候補する公算が大きく、保守分裂選挙になりそうだ。日経7月23日付朝刊によると、自民党県連の一部には翁長氏を推す動きがあって混乱。朝日新聞27日付朝刊も「自民党の情勢調査では仲井真氏が劣勢とされ、党本部側には慎重論がある。辺野古移設を進めたい安倍政権にとって、知事選で敗れればダメージは大きい。ただ仲井真氏に代わる候補者が見当たらず、混迷状態だ」(要旨)と分析していた。
  いずれにせよ、秋の国会運営は波乱含み。自公民にとって重大な局面になってきた。
    (いけだ・たつお)毎日新聞OB。

再編交付金拡大 県外移設に真剣に取り組め琉球新報2014年7月23日社説 

 政府は在日米軍再編で基地負担が増える都道府県を対象に、交付金を支給する新制度の創設を検討している。政府はこの創設を機に、普天間飛行場の代替施設を辺野古ではなく、県外に移転する
ことを真剣に模索すべきだ。
  仲井真弘多知事が普天間の5年内運用停止を求めていることに関連し、小野寺五典防衛相は「5年以内に(移設先の)辺野古の工事が終わらない場合、暫定的な利用を視野に入れたい」と述べ、佐賀空港に普天間の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを暫定配備する意向を示した。事実上、普天間の機能を佐賀空港が担えることを意味する。つまり県外移設は可能だったということだ。
  民主党政権時に森本敏防衛相は普天間の移設先について「軍事的には沖縄でなくてもよいが、政治的に考えると沖縄が最適」と話した。沖縄ではいくら反対しても押し切って基地移設を進め、県外では反発を回避して基地移設をしないという二重基準の政策を取るのが得策だということを意味する。
  22日に佐賀市長に要請した武田良太防衛副大臣は、辺野古の基地完成までの暫定使用だと断った上で「辺野古への移設は揺るぎない。佐賀への移転はあり得ない」と断言した。日本の国土面積のわずか0・6%に在日米軍専用施設の74%が集中している沖縄県に対しては、なぜ「沖縄への県内移設はあり得ない」と断言しないのか。差別以外の何物でもない。
  戦後の当初からこれだけの基地が沖縄にあったわけではない。1950年代に日本で反基地運動が激化し、海兵隊は出て行かざるを得ない状況に追い込まれた。そこで米統治下の沖縄に岐阜県や山梨県に駐留していた第3海兵師団が移駐した。普天間基地に駐留している第1海兵航空団も76年に山口県岩国から沖縄に移った部隊だ。
  沖縄の「地政学的優位性」は幻想だと分かる。森本防衛相が言う通り「政治的」に沖縄に押し込められてきただけだ。そもそも在沖海兵隊の抑止力も神話にすぎない。海兵隊の駐留そのものが不要である。
  われわれは海兵隊は日本に不要だと説いてきた。政府がどうしても海兵隊が日本に必要だというのなら、沖縄でなく県外に置くべきだ。3500億円以上の辺野古移設工事の費用を美しい海の環境破壊に使うのでなく、県外移設のための再編交付金に充当すべきだ。