視角/ 丸山重威 (関東学院大学教授) (JCJジャーナリストより転載)16/05/19

ニュースのすり替え

  5月の政治日程の焦点は、伊勢志摩サミットだったが、オバマ大統領の広島訪問が加わって、安倍首相には格好の宣伝の場になった。「財政出動」を理由に消費増税先送りもできるし、「未来志向」の名で「日米同盟」も強調できる▼昨年の「安保法」成立以来、自公両党と安倍政権、保守派の目標は、参院選で改憲勢力が3分の2を獲得することに向けられている。「何のために?」―そんなことはいい。数を取ってから、これも言っていた、あれも言っていた、と言えばいい。自民党改憲草案で「既にお示ししてある」という▼これに反対して野党共闘が進んだ。そこで展開するのは、内部からの「かく乱」と「反共キャンペーン」。「安保法を戦争法というのはレッテル貼り」、「アベノミクスは雇用を増やし成功した」と宣伝。そこで、ダブル選、もしかしたら都知事選も併せて、ガラガラポン?▼いまの安倍政権の特徴は、官邸が全ての情報をつかみ、野党の動きや世論動向を計算に入れて首相の行動や政治日程を決め、ニュース材料を次々投げてくることだ。選挙時期、公認決定、カネの配分、全てを握った政権は、官房副長官や補佐官も増員、今世紀初め186人だった内閣官房の定員も昨年は1007人に。「官邸主導」が徹底した。メディア対策も「支配」に進め、さまざまにニュースが「操作」されている▼本当に大事なニュースは何か、このニュースにすり替えはないか。今ほど厳しく、その「目」が問われているときはない。ごまかされたままで済ませるわけにはいかない。