視角/ 丸山重威 (関東学院大学教授) (JCJジャーナリストより転載)15/09/21

「戦争法」成立、メディアの責任

 「戦争法」が成立、自衛隊は、いつでもどこへでも行き、切れ目なく活動できる法制が整った。そして一方では、動員ではなく、一人ひとり個人として考え、発言する運動が始まった▼「私たちこそがこの国の当事者、つまり主権者であること、私たちが政治について声を上げることは当たり前なのだ」「いまの反対のうねりは世代を超えたものだ」「新しい時代はもう始まっている。もう止まらない」―。参院特別委の中央公聴会でのシールズの奥田愛基君の発言だ▼こんなにはっきりし違憲の法律を、ごり押しで成立させた安倍政権への怒りは、まさに列島中を覆っている。しかし法律の廃止と閣議決定の撤回を求める運動は、容易なものではない。例えば「違憲訴訟」は、国民の精神的被害だけでは実質的な審理に入ることも難しい。結局、次の選挙で政権与党を大敗させ政権を変えるしかない▼そこで、メディアが果たす役割と責任も大きくなる。まず落選運動。続いて、しっかりした原則と柔軟で信頼を強める共闘による「選挙協力」。求められるのは、違いを強調したり不協和音を拡大するのでなく、「共同」への努力を励まし広げる報道、そして「違憲」の問題意識を鮮明にした自衛隊や政府の行動の監視と告発。秘密保護法を乗り越える積極的な報道も求められる▼どういう世論を作るかはメディアの責任だ。中国、北朝鮮への反感を煽ったり歴史の歪曲はさせない、思慮深い、落ち着いた世論を作りたい。あくまで反戦、あくまで民主主義。その覚悟が求められている。