視角/ 丸山重威 (関東学院大学教授) (JCJジャーナリストより転載)15/02/14

「イスラム国」と日本のあり方

  「イスラム国」(IS)問題は、実は日本の国と外交が、どの方向を向いているのか、日本国憲法が目指す世界はどんな世界かを改めて問いかけている▼言うまでもない。憲法前文は「平和を愛する諸国民の公正と信義」を信頼し、「専制と隷従、圧迫と偏狭」を除去しようとする国際社会と全世界の国民の「ひとしく恐怖と欠乏から免かれ平和のうちに生存する権利を有する」と確認した▼そして、9条の「不戦・非武装」や25条の「生存権」が誕生、「戦争をしない日本の70年」が日本の信用を築き、公・民を問わず、日本人の安全を保障してきた。アラブでも憲法9条の存在が知られ、日本の「中立」が信頼を集めてきた▼だが「9・11」以降、小泉内閣のイラク戦争支持で疑われ、「積極的平和主義」「集団的自衛権行使容認論」「戦後レジームからの脱却」で公然と改憲を掲げる安倍内閣で決定的に。身代金要求を知りながら「『イスラム国』と戦う周辺国」にカネを出し企業人を連れてイスラエルでISを非難した。日本は方針を転換した、といわれても仕方がない▼どう自衛隊を強くしても法制をどう変えても、力での人質救出はまずできない。信頼なしに交渉はできないし、カネに色はついていない。後藤さんらを見殺しにした安倍内閣は、事件をテコに改憲や自衛隊派遣を企てている▼一日も早く辞めてもらい「9条に基づく外交」を再構築し、世界に向かって宣言する以外に日本が生きる道はない。「日本には9条がある」という母の訴えを裏切ったのは国民の責任だ。