視角/ 丸山重威 (関東学院大学教授) (JCJジャーナリストより転載)14/07/18

「二枚舌外遊」

 「現行の憲法解釈の基本的考え方は、今回の閣議決定でも何ら変わることはありません」(1日記者会見)から「なるべく沢山のことを諸外国と共同してできるように、日本は法的基盤を一新しようとしている。法を守る秩序や地域と世界の経いをを進んでつくる一助となる国にしたい」(8日オーストラリア議会での演説)へ―。首相自身の言葉だ▼いくらなんでも支離滅裂。もともと、武力行使などできない憲法の下で、何とか「集団的自衛権」という言葉を入れたくて、「憲法上許容される武力の行使は国際法上集団的自衛権が根拠となる場合がある」と書いたが、理屈は成り立たない。だから、「外国防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使は認められていない」(公明党Q&A)などという説明になる▼しかしこれは外国でのパフォーマンスとは両立しない。「さあやるぞ」と胸を張りたい。そこで本音もはっきり出る。「いま、米国は『一強』ですが、弱くなりました。その間に日本は強くなりました。こんどは『一の子分』『代貸し』として、世界の秩序のために、沢山のことをやります。平和は守るのではなく、積極的に創るのです」―そう言いたかったに違いない▼第1次大戦前、英国はアラブの独立とユダヤ人国家の建国を約束、「二枚舌外交」として有名になった。今も続く、パレスチナとイスラエルの問題だ。この約束は約2年の間隔があたが、安倍首相の「二枚舌」はわずか数日。「厚顔無恥」外交はやめ、とにかく、閣議決定は撤回した方がいい。