視角/ 丸山重威 (関東学院大学教授) (JCJジャーナリストより転載)13/02/15

 

アベノミクス

 

実際はそんなに目新しいものではないのに、もっともらしくカタカナで命名し、素晴らしい政策であるかのように印象づける。総選挙前、11月から新聞に登場した「アベノミクス」という言葉は、そんな意図で始まったのではないだろうか。安倍内閣で官邸入りした世耕弘成内閣官房副長官と飯島勲内閣官房参与という「メディア戦略コンビのキャッチだった可能性もある▼2%目標の物価上昇、円高是正、大幅な金融緩和、という経済政策は、景気回復の保証はないのだが、円安の進行、株価の上昇などの数字が見え始めると、あたかも大成功のように見える。内閣支持率63%、「経済政策に期待」69%(毎日新聞調査)などといわれるとなおさら。メディアもアベノミクスに踊らされている▼しかしどうか。問題は、この円安、株高、物価上昇政策で、景気が回復し、失業率が改善し、国民生活もよくなることだが、既に価格破壊で輸入品頼みの庶民からいえば、とても手放しでは喜べない。既に、ガソリン価格などが上がり、輸入品を頼りにした衣料品の扱い店や100円均一の店の経営が苦しくなっているという。あまり報じられてないが、「日本は為替の引き上げ競争を煽っている」といった見方もある▼いまの日本経済の基本的な問題は、何といっても、国内消費の落ち込み。それもそのはず、労働者の平均年収は、2001年の454万円をピークに下落。11年には409万円余。2%の物価上昇は最初に庶民生活に響く。美名にごまかされるわけにはいかないのだ。