視角/ 丸山重威 (関東学院大学教授) (JCJジャーナリストより転載)12/05/15

 

米国の影

 安倍内閣時代の2007年5月、日米の外務・防衛閣僚による2+2会合で、日米間の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が合意された。「情報管理、政府前のめり」と新聞は書いたが、同年8月10日、麻生外相とシーファー大使の間で調印へ▼協定では、秘密取扱者を4段階のレベルで管理する米国の「セキュリティ・クリアランス」なみの秘密保護体制が求められた。政府は、内閣官房に「カウンターインテリジェンス推進会議」を設置。調印の前日、8月9日の会議で「カウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針」を決めた。法律はないまま、翌年4月から、任命権者の権限で「秘密取扱者適格性確認制度」が実施された▼その後は全く問題にされなかったが、福島瑞穂議員が質問主意書を出し回答があったことで、毎日新聞がこの4月11日「公務員5万3000人を本人に無断で身辺調査」と書き、やっとこの事実が明るみに出た▼情報保全体制では、厳罰主義とともに、秘密取扱者本人だけでなく周辺を調査し、それをのぞこうとする者を厳罰に処す「適正評価制度」が問題になっている。併せて「社会保障と税の一体改革」の名目で、国会に出されている共通番号制法案も無視できない。住基ネットと違って民間にも開放し、個人の「名寄せ」を進める国民管理体制の一環。明らかな憲法違反、人権侵害だ▼政府が個人の情報を集めて管理し、一方で秘密を強化する「ものを言わせない社会づくり」がいつの間にか進んでいる。ごまかされてはならない。

「秘密取扱者適格性確認制度」には、複数段階の取扱い区分がある