視角/ 丸山重威 (関東学院大学教授) (JCJジャーナリストより転載)12/03/15

 

社会保障改革

 「今後は、給付面で、子ども・子育て支援などを中心に未来への投資という性格を強め、全世代対応型の制度としていくとともに、負担面で、年齢を問わず負担能力に応じた負担を求めていくなど制度を支える基盤を強化していく」―。2月17日閣議決定した「社会保障と税の一体改革」の大綱だ▼「社会保障を改革する」と聞けば、普通は「いまの社会保障より充実していいものにする」と考える。ところがどうやら違うのが「政府・与党」流の「改革」。「消費税増税と社会保障の削減改革」というのが正しい読み方のようだ。項目で見ると「医療・介護サービスの提供体制の効率化・重点化」は「安上がり化」、「70 歳―75 歳未満の患者負担について世代間の公平を図る観点から見直しを検討」は「負担アップ」の意味。年金の「支給開始年齢の引上げ」はごまかしようがなかったのだろう▼もともと低所得者に高負担となる消費税と社会保障の考え方は逆だ。これを強引に結びつけて「一体改革」とした。財政破綻とか少子高齢化を材料に本質的な問題は抜きに、世論操作で「増税はやむを得ない」「社会保障水準低下はやむを得ない」に持って行く作戦だ。ついでに共通番号制や、議員定数削減、公務員人件費削減まで並べている。「財政」をいいながら防衛費も政党補助金も問題にせず、ただ真実を隠す言葉が並ぶ▼国民の健康で文化的な最低限度の生活への責任と改善努力を国に求める憲法25条を持ち出すまでもない。この「ごまかし改革」を認めるわけにはいかない。