連載」亀井淳/「笑う犬」週刊誌ウオッチ(6)/ 慎太郎神話の破綻−メディアはどこまで追及するか/06/12/22                                


この欄の執筆をだいぶご無沙汰してしまいました。忘れていたわけではなく、事情があって書けなかったのだが、またなるべく努力して寄稿します。

  

慎太郎神話の破綻−メディアはどこまで追及するか

 

 「石原慎太郎」という名前は長い間、週刊誌の世界ではアイドルであり、タブーでもあった。寄せては返す波のように何度も慎太郎待望論を演出し、望ましい次期総理大臣の調査をすると、彼の名前がダントツのトップとしてあげられたものである。民放テレビのニュースショーもゲストとして彼を出演させたがった。長年の国会議員のバッジを自ら捨て、東京都知事になってからも国政トップへというラブコールは続いた。その「石原神話」の神通力が小泉政治の5年間にだいぶ弱くなった。

 そこで石原知事は今年、「2016年オリンピック東京招致」というカードを使って三選出馬の理由づけをし、もういちどの慎太郎ブームをと仕掛けた。

 仕掛けたとたんに、彼自身と家族に関するバッドニュースが噴出したのは、まことに間の悪いことである。

キャンペーンの先頭を切ったのは共産党東京都議会議員団と「しんぶん赤旗」である。石原知事が就任以来、都の規定にも常識にも外れた公費を使う「豪華海外旅行」を19回も繰り返したことに始まり、若手芸術家の育成を名目にした「トーキョー・ワンダーサイト」(TWS)に異例の高額公費をつぎ込み、職員でもない知事の四男・延啓氏(40=画家)に「仕事」を与えて欧州出張なども再三させている。TWSの館長など主なスタッフはのお仲間だ。(写真はTWS本郷にある石原延啓氏の作品)

そのほか、かつて知事腹心として専横を極め、都議会で問責決議までされて辞任した浜渦武生前副知事が、いつの間にか都参与として知事の「名代」として欧州大名旅行をしている。

「都民の税金/慎太郎家臣団が食い漁る」とアエラ(12・18)はタイトルをつけた。そのほかの週刊誌もフォローした。

もっと詳しく石原知事の都政私物化を知りたい方のためのリンク→日本共産党都議団

 

 続いて「赤旗」が打ったのが、慎太郎知事と三男・宏高衆議院議員(42=自民)にかかわる裏献金疑惑だ。昨年9月11日の総選挙で宏高氏が初当選した3日後の14日、銀座の超高級料亭「吉兆」で、「当選祝い」と称して石原親子と糸山英太郎元衆議院議員、政商として知られる水谷建設元会長で、巨額脱税事件の被告として公判中の水谷功氏などが集まった。その料亭内で水谷氏側が用意した「500万円」が、石原サイドに手渡された、という。宏高議員の政治資金収支報告書にはその記載がなく、政治資金規正法違反か、脱税の疑いがある、という話だ。

 裏献金の金額はその後の各誌報道で「計2000万円」と巨額に跳ね上がり、関係者の証言も必ずしも一致してはいないが、伝えられる顔ぶれが伝えられる日時に会合したことは記念写真もあり、れっきとした事実である。

「今回の一件の裏には、ある恐喝事件が存在する」と、糸山氏は語っている(サンデー毎日12・24)。都の事業に絡む利権、右翼団体などという言葉も聞こえ始めた。相当奥深いものがあるのかもしれない。

 ともかく、糸山、水谷などいわく付きの人物が石原知事の周辺に存在することが明白になったわけで、石原ファミリー「神話」のイメージダウンは避けがたい。

 マスコミの今後の追及次第では、石原知事の三選出馬にも影響するだろう。

kuruma