「連載」 亀井淳の「笑う犬」週刊誌ウオッチ(2)

06/02/15 Weekly Magazine Watch Dog!

ホリエモンとオウムと小泉劇場

 この1ヵ月、週刊誌は「ホリエモン」で持ちきりである。この事件(ライブドア事件)は株価操作など証券取引法違反が本筋だが、週刊誌はしきりに沖縄で死んだ堀江容疑者の側近の死因を疑うミステリー話に関心を導こうとしている。

 衆院選に立ったいきさつで武部自民党幹事長など政界要人との関わりも取り沙汰され、それも見逃せない点だが、そもそもわずか33歳でこれだけ世人の注目を集めたホリエモンとは何者で、現象の本質は何であったのかが肝心だろう。

 あふれるほどの情報の中では、比較的以前から堀江に注目、密着していた「アエラ」の記事がリアルである。堀江逮捕後の同誌2月6日号によると、昨年8月、小泉首相が衆院を解散した日、それまで一度も投票をしたことがない堀江が、「選挙に出たい」と側近に漏らした。「ポスト小泉はボクしかいない」と真剣に思っていたのだという。その意思を伝え聞いた武部幹事長が夜中に六本木ヒルズに来て堀江と面談する。

 選挙落選後の彼の関心はもっぱら「宇宙旅行」に移る。年末に取材した「アエラ」の記者がビジネスの話に水を向けても、「話すのがつまらない」ともっぱら宇宙旅行の知識を語っていた。

「もともと風変わりな人ではあったが、もはや痛々しいほどに正気を失いつつあるように見えた」

 無名だった堀江がプロ野球への参入名乗り上げや民放株買収でで知名度を得、時価総額を膨張させていきなり首相の座をねらう。そして逮捕。ある側近は年末、「堀江は神になってしまった」と漏らしたそうだ。

 そんな堀江の軌跡を、「アエラ」記者はオウム真理教の麻原彰晃教祖のそれと重ね合わせる。

 同じくかつて堀江を取材し、その後もメールを通じてのやりとりを重ねてきた江川紹子氏は、対面取材では素っ気ない応答しかしない堀江が、メールだと率直に自分を表現する人間だと気づいた(アエラ2月13日号)。

 高校・大学時代、内気で目的を見いだせず、悶々としていた堀江がパソコン関連のアルバイト経験からライブドアの前身である「オン・ザ・エッジ」を立ち上げたのが、オウム真理教事件(地下鉄サリン事件など)から1年たった1996年4月である。極端な精神世界ブームが崩壊したあとの、「カネとモノ」信仰の時代を彼は象徴していた、と江川氏は書く。

  堀江が近鉄買収で知られるようになった04年は、「ニート」という本が出てその意味が認知され始め、「希望格差社会」も出版された。そんな時代の「勝ち組」に異常な注目が集まったのである。

 筆者(亀井)は昨年9・11選挙前後の「小泉劇場」現象を眺めながら、オウム真理教を連想していた。堀江と麻原と小泉。大小の差はあれ、一時期、ある領域の君主でありトリックスターである。

 今後どのような人物が踊るのだろうか。