「連載」 亀井淳の「笑う犬」週刊誌ウオッチ（１）／週刊誌では「雅子妃報道」のラッシュ／06/01/15
Weekly Magazine Watch Dog!
憲法を守る立場からのメディア点検のうち、「週刊誌」にかかわる作業を試みる。
良くも悪くもセンセーショナリズムの週刊誌には、新聞や放送が遠慮して扱わない問題にずばりと斬り込むという傾向があり、その一つの分野が「皇室」である。
皇室問題では、皇位継承権をめぐって皇室典範の改正が通常国会の重要テーマになる。暮れから新年にかけて、いくつかの週刊誌が人目を惹くタイトルを掲げた。
「雅子さま静養３年目／朝日新聞皇室担当記者が投げかける東宮への疑問符」（週刊朝日1･6､13号、朝日新聞編集委員・岩井克己）
「『宮中と官邸』を震撼させた雅子さま『離婚説』」（週刊新潮1･5,12号）
「朝日」の記事は現職の皇室担当記者が、「東宮職医師団」が雅子妃の「ストレス因子」を指摘したことを「異常である」とし、8月15日に皇太子夫妻が那須でテニスをしたこと、天皇出席の夕食会などへの直前キャンセルも「一再ならず」と非難している。「新潮」は初めて「離婚」という言葉を使った。
同時期に発売の「アエラ」(1･2､9号)は12月9日の雅子妃誕生日の天皇・皇后を招く夕食会中止に至る同妃の体調について、「熱が38度…めまいをともなう腹痛から嘔吐…」などときわめて具体的で深刻な症状を東宮職員の話として伝えている。
年明け発売の「アエラ」(1･16号)は、「新潮」の用いた言葉に乗って、「別れさせたがっているのは誰か／『離婚説』の策謀」と題し、陰謀ばなしめいた記事を書いた。
続いて「週刊文春」（1･9号）は、「むずかる愛子さまを連れて…／雅子さま『2時間47分中座』天皇ご一家が夕食会で待ちぼうけ」。天皇誕生日の家族夕食会で天皇皇后をやきもきさせ、しかし翌日は皇太子と丸の内の「ミレナリオ」見物に出かけたという、非難めいた暴露になっている。月刊誌では「文藝春秋」2月号で三笠宮寛仁が、「なぜ私は女系天皇に反対なのか」と語っている。
雅子妃はその後も1月5日の新年夕食会を当日キャンセル、12日の歌会始も欠席…。
こうなると皇室典範の改正とか「女性天皇」論議よりも、生身の一女性の実存に注目が集まる。皇室典範の改正は将来の皇位継承の行き詰まりを打開しようとして提起されたのだが、その前に当面の皇室の危機が語られ始めた。その材料を提供しているのは、新聞、放送ではなく、週刊誌なのである。
むろん、週刊誌の皇室報道がすべて正しいと言っているのではない。「菊のカーテン」から透けて出る情報には不確実な部分もあろうし、病気というプライバシーに触れる問題も発生するかもしれない。
それでも、「女性天皇で男女平等が進む」ぐらいの気持ちで典範改正を許したり、「女系天皇では国が四分五裂」（三笠宮寛仁）という時代がかった発言に同調したりするよりは、市民一人ひとりが情報を読み込み、分析してそれぞれの天皇・皇室論を持つ必要があるのではないか。