小林 善亮 /弁護士 (三多摩法律事務所) / 憲法とミュージカルとマスコミと/08/01/23
 

憲法とミュージカルとマスコミと

小林 善亮
(弁護士 三多摩法律事務所)

 3年ほど前から、東京・多摩地域の「憲法ミュージカル」という企画に関わっている。
 「憲法ミュージカル」とは、憲法をテーマに、プロの脚本・振付・作曲でオリジナルのミュージカル作品をつくり、一般公募で集まった市民100人が4ヶ月以上の練習を重ねて上演するという企画である。1993年から2002年まで埼玉で同様の企画が取り組まれた。
 多摩地域の憲法ミュージカルは、まだ弁護士になって2,3年の若手が中心となって始まった。私を含め、この弁護士たちはそれまで憲法や教育基本法に関する集会やイベントに参加し、企画もしてきた。我々の共通の危機感は、そのような集会やイベントに自分たちと同世代の若い人たちが少ないということだった。もちろん、何とか若い人たちにもアピールをしたいと企画に工夫を凝らすが、憲法集会がマスコミで取り上げられることは少なく、若者との直接の接点でもなければ、若い世代へ訴えかけるチャンスが乏しかった。
 そこで、「若い人にメッセージが届く企画を!」と頭を寄せ合い、酒を飲みながら議論した。全くまとまりのない議論であったが、いつしか「憲法をテーマにした市民ミュージカル」に意見が集約されていった。
 とにかく大きい企画を目指した。その理由は、憲法の取り組みがマスコミで取り上げられない以上、多くの人に直接メッセージを届けなければならない、そのためには大きな企画で人の目に触れることが必須だと考えたからである。いわばマスコミに代わって自分たちで情報発信をしようとしていた。動員目標は6000人。無謀としか見えなかったであろう(実際多くの人にそう言われもした)。
 ところが、沖縄戦をテーマにしたミュージカルは、追加公演もふくめ、のべ6100名の観客が訪れ大成功に終わった。
さらに多くの人に憲法のメッセージを届けたいと今年も5月に、いわゆる「従軍慰安婦」の方の半生をテーマにした作品を上演する。
(詳細はこちらを:http://www008.upp.so-net.ne.jp/musical_in3tama/index.htm)。
 この企画は結果的にマスコミ各社に報道された。NHKでは特集が組まれもした。皮肉にも思えるが大きな企画がニュース性を生み、マスコミの関心をひいたようだ。しかし、記者が取材もして原稿も書いたが社内的な合意を取り付けられず記事にならなかった会社もあった。表現の自由を享受するマスコミで、憲法を記事にすることが、それほどまでにハードルが高いことなのかと驚いた。9条が改悪され戦争ともなったら、報道が統制されることは歴史の教訓である。憲法を記事にならない現在の状況は、自主的な規制という形でその統制が既に始まっているのではないかとすら危惧される。ニュース性のある目の前の出来事だけでなく、50年後の日本を見据えて警鐘を鳴らす。そんな記事がもっとあって良いのではないか。

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