小川杏子(弁護士・三多摩法律事務所)首都圏建設アスベスト訴訟~あやまれ、つぐなえ、なくせ石綿被害~09/03/16
首都圏建設アスベスト訴訟
~あやまれ、つぐなえ、なくせ石綿被害~
小川杏子(弁護士・三多摩法律事務所)
アスベスト(石綿)は、耐火性・耐熱性等に優れ、かつ安価であることから「奇跡の鉱物」と言われ、日本でも、これまでに約1,000万トンの石綿が輸入され、その多くが建材に使用されてきた。ところが、石綿は、発ガン性を有する極めて危険な物質である。しかし、そのようなことを知る由もない建設作業員は、国の石綿建材使用推進政策のもと、長年にわたり、建設現場で発生する石綿粉じんに曝露した結果、その多くが石綿肺・肺ガン・中皮腫により次々と生命を奪われ、あるいは悲惨な被害に苦しんでいる。
このような状況のもと、2007年8月、東京・千葉・埼玉・神奈川各県在住の建設アスベスト被害者とその遺族は、石綿の危険性を認識しながら一体となって石綿建材の使用を推進してきた国と建材メーカーの法的責任を明らかにすべく、「首都圏建設アスベスト訴訟原告団」を結成した。そして、2008年5月16日、172名の原告が東京地裁に、次いで、同年6月30日、神奈川県在住の41名の原告らが横浜地裁に、国と建材メーカー46社に対する損害賠償請求訴訟を提起するに至った。
原告らの主張を簡潔に紹介する。
まず、原告らは、被告国に対しては、労働関係法令及び建築基準法に基づく国(労働大臣及び建設大臣(当時))の責任を追及している。
石綿被害は近年に始まったことではない。日本でも、戦前から石綿の危険性は認識されており、遅くとも1950年代半ばには肺ガンが、1960年代半ばには中皮腫が発症することが明らかになっていた。そうである以上、国は、法令に基づく規制権限を適時かつ適切に行使し、石綿の製造・輸入禁止措置や石綿吹付けの禁止措置をとるべきであった。
ところが、国は、経済政策・利潤追求を優先し、石綿の全面的な製造等禁止措置を2006年まで放置し、規制を行うどころか、石綿含有建材の指定・認定行為を行い、石綿の利用を推進してきたのである。
原告らは、このような、国の規制権限不行使、石綿含有建材の指定・認定行為が、国賠法1条1項の適用上違法であることを主張している。
次に、原告らは、被告建材メーカーらに対しては、石綿の危険性を認識しながら製造・販売行為を行ってきたことにつき、共同不法行為責任を追及している。
前提として、複数の行為者の行為が、結果の発生に対して社会通念上、全体として一体の行為を認められる程度の一体性を有していれば、共同不法行為が成立する。この場合、個々の加害行為と結果との間の個別の因果関係は不要である。
石綿建材メーカーらは、個別企業の枠を超えて、日本石綿協会等の業界団体に結集し、①石綿建材の大量製造・販売に不可欠なJISによる規格統一、②種々の宣伝活動、③石綿規制の動きに対する抵抗、④非合法のカルテルによる販売価格の統一など、業界を挙げて石綿の大量製造・販売促進活動を行ってきたのである。
このように、建材メーカーによる石綿建材の製造・販売は、形式上は、個々のメーカーによる個別の行為であるが、その実態に目を向ければ、その製造・販売行為は、社会通念に照らし、「全体として一体の行為」をなしているのである。
本訴訟は、原告213名(東京地裁及び横浜地裁の合計)のうち、96名が、すでに提訴前に壮絶な死を遂げており、提訴後、現在までの約9ヵ月の間に、すでに、18名の原告が亡くなった。このように、石綿被害は極めて深刻な状況にあり、その救済には少しの猶予もない。
原告らは、「自分たちはもとより全ての建設アスベスト被害者の救済と建設アスベスト被害の根絶の実現を」という思いを共有している。1日でも早く、この思いを実現すべく、すべての訴訟関係者が早期解決に向けた訴訟進行を展開することが要求されている。
以上
)派遣村に現れた法的問題09/03/02
首都圏建設アスベスト訴訟
~あやまれ、つぐなえ、なくせ石綿被害~
小川杏子(弁護士・三多摩法律事務所)
アスベスト(石綿)は、耐火性・耐熱性等に優れ、かつ安価であることから「奇跡の鉱物」と言われ、日本でも、これまでに約1,000万トンの石綿が輸入され、その多くが建材に使用されてきた。ところが、石綿は、発ガン性を有する極めて危険な物質である。しかし、そのようなことを知る由もない建設作業員は、国の石綿建材使用推進政策のもと、長年にわたり、建設現場で発生する石綿粉じんに曝露した結果、その多くが石綿肺・肺ガン・中皮腫により次々と生命を奪われ、あるいは悲惨な被害に苦しんでいる。
このような状況のもと、2007年8月、東京・千葉・埼玉・神奈川各県在住の建設アスベスト被害者とその遺族は、石綿の危険性を認識しながら一体となって石綿建材の使用を推進してきた国と建材メーカーの法的責任を明らかにすべく、「首都圏建設アスベスト訴訟原告団」を結成した。そして、2008年5月16日、172名の原告が東京地裁に、次いで、同年6月30日、神奈川県在住の41名の原告らが横浜地裁に、国と建材メーカー46社に対する損害賠償請求訴訟を提起するに至った。
原告らの主張を簡潔に紹介する。
まず、原告らは、被告国に対しては、労働関係法令及び建築基準法に基づく国(労働大臣及び建設大臣(当時))の責任を追及している。
石綿被害は近年に始まったことではない。日本でも、戦前から石綿の危険性は認識されており、遅くとも1950年代半ばには肺ガンが、1960年代半ばには中皮腫が発症することが明らかになっていた。そうである以上、国は、法令に基づく規制権限を適時かつ適切に行使し、石綿の製造・輸入禁止措置や石綿吹付けの禁止措置をとるべきであった。
ところが、国は、経済政策・利潤追求を優先し、石綿の全面的な製造等禁止措置を2006年まで放置し、規制を行うどころか、石綿含有建材の指定・認定行為を行い、石綿の利用を推進してきたのである。
原告らは、このような、国の規制権限不行使、石綿含有建材の指定・認定行為が、国賠法1条1項の適用上違法であることを主張している。
次に、原告らは、被告建材メーカーらに対しては、石綿の危険性を認識しながら製造・販売行為を行ってきたことにつき、共同不法行為責任を追及している。
前提として、複数の行為者の行為が、結果の発生に対して社会通念上、全体として一体の行為を認められる程度の一体性を有していれば、共同不法行為が成立する。この場合、個々の加害行為と結果との間の個別の因果関係は不要である。
石綿建材メーカーらは、個別企業の枠を超えて、日本石綿協会等の業界団体に結集し、①石綿建材の大量製造・販売に不可欠なJISによる規格統一、②種々の宣伝活動、③石綿規制の動きに対する抵抗、④非合法のカルテルによる販売価格の統一など、業界を挙げて石綿の大量製造・販売促進活動を行ってきたのである。
このように、建材メーカーによる石綿建材の製造・販売は、形式上は、個々のメーカーによる個別の行為であるが、その実態に目を向ければ、その製造・販売行為は、社会通念に照らし、「全体として一体の行為」をなしているのである。
本訴訟は、原告213名(東京地裁及び横浜地裁の合計)のうち、96名が、すでに提訴前に壮絶な死を遂げており、提訴後、現在までの約9ヵ月の間に、すでに、18名の原告が亡くなった。このように、石綿被害は極めて深刻な状況にあり、その救済には少しの猶予もない。
原告らは、「自分たちはもとより全ての建設アスベスト被害者の救済と建設アスベスト被害の根絶の実現を」という思いを共有している。1日でも早く、この思いを実現すべく、すべての訴訟関係者が早期解決に向けた訴訟進行を展開することが要求されている。
以上