山口真美/弁護士/問われる「テロとの戦い」「国際貢献」の意味/07/11/01


 

問われる「テロとの戦い」「国際貢献」の意味

 

山口真美(弁護士)

 

 11月1日、いよいよテロ特措法が失効し、インド洋に展開する海上自衛隊は派兵の法的根拠を失う。夏の参議院選挙によって参議院の与野党が逆転した政治情勢の中、テロ特措法の延長はもはや不可能となった。政府・与党は、自衛隊によるインド洋での給油活動を継続するため、10月17日、報復戦争参加法(テロ特措法)に代わる新法案(テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案)を国会に提出した。あくまで自衛隊の海外派兵を継続し、戦力の保持と武力の行使を禁じる憲法9条を蹂躙する解釈改憲の動きを押し進めようとしているのである。

 この給油新法の成立に賛成する議論の軸となっているのが「テロとの戦い」「国際貢献」というワードである。テロを根絶する、国際社会に貢献するということに反対する国民はほとんどいないだろう。しかし、こうした言葉自体が持つ肯定的なイメージが一人歩きすることには強い危惧を覚える。耳障りの良い言葉に惑わされて自衛隊のインド洋での活動の実態やアフガニスタンの悲惨な現状から目を背けるとき、私たちは真の意味でのテロの根絶や国際貢献からも目を背けることになる。

 給油新法の成否が国会で論じられている今こそ、アメリカが提唱する「テロとの戦い」によってテロは根絶されるのか、そして、今、アフガニスタンで行われていることは国際貢献なのかを問い直さなければならない。

 2001年10月にアメリカがアフガニスタンへの空爆を開始してから6年が経過したが、アフガニスタンでは戦闘が泥沼化し、国土は荒廃の一途をたどっている。現実には、空からの攻撃では民間人との区別はつかず、米軍の誤爆によって多数の民衆が犠牲となっている。海上自衛隊が06年9月に給油した米艦「イオウジマ」から飛び立った戦闘機は、アフガン南部の空爆に136回も出撃したことが明らかとなっている。罪のない多数の民衆を巻き添えにする米軍による空爆、それを助けているのが自衛隊による給油活動という図式である。

 自衛隊の活動は、国際法違反の米国の報復戦争を支援する兵站活動にほかならない。憲法が禁止する戦争行為そのものである。アフガニスタン民衆の怒りは米軍だけでなく、これを助ける自衛隊にも向けられている。さらに、9月21日発表の国連事務総長の報告によるとアフガニスタンでは武装勢力による自爆攻撃が急増し、2006年に123件だったものが、今年は既に100件以上に達している。

 国際的にもイギリスやスペイン、サウジアラビア、ヨルダン、エジプト、インドネシアなどで大規模なテロ事件が発生し、テロは世界中に拡散している。アフガンでは国連やNGO関係者を狙ったテロも増加している。こうしたアフガニスタンの現状は報復戦争ではテロが解決しないことを歴然と物語っている。

 アフガニスタン民衆が求める復興支援とは何かを考えるのであれば、アフガニスタンの現状を知ることが必要となる。タリバーンは自爆犯に多額の奨励金を出すとされており、治安の悪化で復興が遅れ、仕事が回ってこない若者にタリバーンがつけいるという構図ができあがっている。空爆によって町も工場も破壊されている。アフガニスタンの人々が安心して働ける環境を整備することが何より大切である。

 米軍などの軍事行動を大きな要因とする治安の悪化と国土の破壊が復興支援の大きな障害になっているのが現状である。もともとアフガニスタンは国民の8割以上が農民で自給自足の国であったが、砂漠化によって農地の大部分が失われつつあり、飢餓が深刻な問題となっている。干ばつ対策こそアフガニスタンにとって最重要課題である。アフガニスタンで医療や水源確保などの支援を続けてきた「ペシャワールの会」現地代表の医師中村哲さんの「殺しながら援助はできない」というコメントがすべてを物語っている。

 与党は自衛隊によるインド洋での給油活動の継続だけを論じ、民主党代表の小沢氏はISAFへの参加であれば認められるとしているが、ともに武力行使先にありきの議論である。こうした議論からは、テロの根絶の方法もアフガニスタンの国民が望む国際貢献も生み出されない。武力を用いない支援活動はいくらでもある。テロを根絶するためには民生の安定が不可欠であり、そのための人道支援こそが求められている。