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山田 朗/明治大学文学部教授 / 名古屋高裁イラク派兵違憲判決の意義 08/07/11

 

名古屋高裁イラク派兵違憲判決の意義(4)

 

明治大学教授・山田 朗

2008年6月13日 映画人九条の会での講演

 

 

【資料】名古屋高裁証言要旨

 

 2008年1月31日 明治大学教授 山田 朗

 

第1 軍事史研究の手法の有効性

 軍事史は軍事学の基礎である。

 

 戦争の本質は、強制力をもって特定の政治的意思を相手に強制力をもって押しつけることであり、その性質は普遍的である。

 したがって、現在行われている戦争を分析・評価するにあたって、歴史(とくに20世紀の戦争の歴史)を踏まえて解釈することは有効である。

 さらに、現在の軍事が向かう方向を正しく評価するためには、戦争の一時点だけを見るのではなくどこからどこへ向かおうとしているのかという時間の流れを見ることが不可欠である。

 

第2 アメリカ軍は2003年以降現在まで、イラクで戦争を行っている

 

1 戦争/戦闘行為 については実態を捉えて判断すべきである。

 戦争が行われているかについては、実態を捉えて判断すべきである。

 伝統的な国際法上の定義である、国家対国家、あるいは政府対政府の戦闘であるかどうかという、狭い枠で戦争か否かを判断すべきではない。ナポレオン戦争以後の戦争では、正規軍同士の戦闘と同時に、非正規軍との戦闘も並行して進められてきており、国家対国家、政府対政府という狭い概念にとらわれると、戦争の実態を見誤ってしまう。 政治的な意図を強制的に押しつけようとする場合は相手が非正規軍であっても戦争である。政治的な目的のもとに武力が組織され、組織的に武力を用いた抵抗が行われ、戦闘行為が継続していて、軍事的な行動による被害者が多数出ていれば、その状態は戦争と評価すべきである。

 ブッシュ米大統領が主要な戦闘終結宣言を行ったり、イラクのフセイン政権が倒壊して新政府が成立したりしていても、そのような形式的な事柄をとらえて戦争が終結したということはできない。

 

2 アメリカ軍がイラク駐留を続けている現状は、戦争の一態様である。

 イラク戦争は、アメリカが圧倒的な軍事力をもって始めた戦争である。

 アメリカの圧倒的軍事力に対する抵抗として、正規軍以外の者による、組織的な武装闘争が全土で起こっている。自爆テロのように一見、アメリカに対する抵抗とは無関係に見える行為であっても、現在のイラク政府及び現在イラクへ駐留しているアメリカ軍の権威失墜を狙った、アメリカへの抵抗する意図をもった行為である。

 正規軍以外の者が圧倒的な軍事力に抵抗するために武装闘争を行い、それを圧倒的軍事力を持つ側が制圧しようとしている場合、それはゲリラ戦であり、戦争として評価すべき状態である。

 現在、組織的な武装闘争を制圧するために、アメリカ軍はイラク全土に駐留し、「掃討作戦」を実施している。アメリカ軍が大規模に、相当の機動力を用いてゲリラの制圧を行おうとしている実態は、まさに現在もイラクでアメリカが戦争を行っていると評価すべきものである。

 

第3 バグダッド及びバグダッド空港もまた、戦争が継続している地域である

 

 アメリカ軍は首都バグダッドでもゲリラ制圧のための戦争を継続している。

 バグダッド空港に輸送を続ける航空自衛隊は、ミサイル回避のためのフレアをイラクで使用している。制式兵器ではないフレアを航空自衛隊がイラクで用いていることは,ミサイル回避措置を講じなければならない,戦争が継続している地域で輸送活動を行っていることの現れである。

 バグダッド及びバグダッド空港もまた、アメリカが戦争を継続している地域である。

 

第4 輸送活動は戦争遂行・戦闘行為と不可分一体の軍事行動である

 

 戦争遂行には、戦闘行為とあわせて情報収集・分析、機器類のメンテナンス、兵員に対する衣食住の提供、医療行為、輸送・補給という作戦支援活動が不可避的に伴う。戦闘行為は、作戦支援活動を伴う戦争全体の一部にすぎず、また作戦支援活動なくしての戦闘行為は想定できない。輸送活動は戦争遂行・戦闘行為と不可分一体である。

 航空自衛隊はアメリカ軍の要請を受けて、人員(情報)、物資(医薬品、兵員が携行する武器)を輸送している。

 軍隊というものは、秘密保持等の点からともに行動を行う相手として軍隊しか選ばない。アメリカ軍が輸送活動を自衛隊に任せているということは、アメリカ軍が自衛隊を軍隊として考えているからに他ならない。航空自衛隊がアメリカ軍中央司令部内に空輸計画部を設けているのは、アメリカ軍の指揮の下で空自が輸送活動を行っていることを端的に表している。このことからも,アメリカ軍の戦闘行為と航空自衛隊の輸送活動の一体性・密接性は明らかである。

 アメリカ軍がイラクでの戦争を継続することと、日本の航空自衛隊の輸送活動は不可分一体の軍事行動である。

 

第5 航空自衛隊の輸送活動は憲法9条1項に違反する行為である

 

 1996年5月21日、大森内閣法制局長官答弁に従えば、現在、イラクで航空自衛隊が行っている輸送活動は、アメリカ軍の武力行使と不可分一体であり、憲法9条1項に違反する行為である。

 

第6 情報が隠匿されている状態はシビリアンコントロールに照らして問題が大きい

 

 航空自衛隊が何をどれだけイラクで輸送しているかという点についての情報が国会に対しても、司法府に対しても全く明らかにされていない。

 これは民主国家における自衛隊の在り方としてシビリアンコントロール上も問題が大きい。人道復興支援活動であるというのであれば、輸送内容を最大限公開すべきである。

 

第7 自衛隊はアメリカの戦略に沿って変容を遂げており、イラク派遣以後もアメリカの戦略に従って共同で軍事行動を行う方向へと向かっている

 

 1990年代以降、自衛隊はアメリカ軍の戦略の変化(冷戦下の核戦争対応から地域紛争対応、「対テロ戦争」対応)に従って変容を遂げてきた。

 具体的には装備の面からいえば、イージス艦建造、新型ヘリコプター搭載護衛艦の建造、弾道ミサイル防衛への参加などであり、遠征能力の向上である。また、アメリカ軍と共同して市街地戦闘訓練を行うことにより、戦闘能力も向上させてきた。

 今回のイラク派兵で,自衛隊に戦地に赴く戦闘能力があること,及び兵站能力があることが実証され,海外展開能力が完成したことが確認できた。

 次はアメリカ軍と共同しての戦闘行為への「前線参加」が想定されている。

 しかしながら、自衛隊がこのような変容を遂げていることについての国民的議論は全く不十分であり、その点が大きな問題である。イラクへの実態を直視し,現時点で自衛隊の変容を止めなければ、自衛隊が恒常的にアメリカ軍とともに戦闘行為を行う軍隊と化すことは間違いない。

 

 以 上

 

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