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4国民は何を選択したのか―2010年7月の参院選結果について―10/09/1

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三枝和仁/広告ユニオン組合員/

国民は何を選択したのか―2010年7月の参院選結果について―10/09/11


 

国民は何を選択したのか

 

―2010年7月の参院選結果について―

 

三枝和仁 (広告ユニオン組合員)

 

 

1  各党の議席数 ・ 得票数の確認

 

  2010年7月の参院選での各政党の議席獲得数は右図の通り。 選挙区で39議席を獲得した自民党が議席では勝利し 「ねじれ国会」 の再来となった。 選挙区を制するものが参院を制する形が示されている。 しかし、 選挙区で議席を確保した政党は4党と少数政党に議席が集中した結果が見られる。 1人区、 2人区の選挙区が殆どであることが比例での議席配分と異なる結果を生んでいる (この件は後に触れる)。

 

  各党の得票数を下の図に示した。 自民党が選挙区で39議席を獲得したが、 選挙区の得票数では民主党に300万票以上少なく、 得票数と議席数の乖離が見られる。 これも選挙区の多くが1人区であることから現れた、 民意と議席の “ねじれ” と言えるだろう。

 

  一方、 比例の得票数は議席数とほぼ 「比例」 しており、 民意を議席に反映させる選挙制度としては比例制度が勝っていることが示されている。

 

  この様に、 2010年7月の参院選挙では “自民圧勝” と報じられていたか、 民意から見ると昨年8月の 「政権交代」 総選挙と同じ傾向で、 自民党が政権党に返り咲くことを民意が望んではいないことが示された結果となっている。

 

 

2  過去3回の選挙での各党比例得票数の推移

 

  3年前の参院選、 昨年の衆院選、 そして今年の参院選と3年間の選挙で 「比例」 得票数がどう推移したかを右図に示した。

 

  3年前の参院選では安倍総理の率いる自民が敗北し、 “ねじれ国会が” はじまった選挙であった。

 

  安倍内閣の進める 「戦後レジューム」 からの脱却、 小泉内閣から引き継いだ規制緩和 ・ 構造改革路線に生活と平和に対する危機を抱いた国民が自民党に審判を下した最初の選挙となった。

 

  比例の得票数では、 自民1,650万票に対し民主は2,320万票と700万票近く自民を離して圧勝し、 安倍首相は退陣し、 その後自民党の首相が1年ごとに変わる事態を招来した。

 

  2009年8月の衆院選では、 民主が比例で2,980万票と自民の1,880万票を1,100万票上回る票を獲得し政権交代を果たした。

 

  「国民の生活が第一」 のスローガンが、 それまで自民政治の医療 ・ 福祉切捨て、 派遣労働推進に不安と不満を持つ国民の心を捉えた結果だろう。

 

  政権交代後の民主政権下で迎えた2010年7月の参院選では、 民主は比例得票数第一位は確保したが大きく減らしている。 2009年の衆院選からは1,100万票、 2007年の参院選と比べても500万票のダウンとなっている。 自民が国民の支持を回復していないことは先に述べたが民主も昨年の政権交代総選挙に比べると明らかに国民の信頼を失っていることが示されている。 後期高齢者医療制度の廃止、 派遣法の抜本改正など国民が期待を託した2009年総選挙マニフェストが実施されず、 基地問題では普天間基地を自民時代と同様に辺野古に代替基地を作るなどの迷走が国民の民主離れを起したものと思われる。

 

3  自民、 民主を離れた層はどこに向ったか

 

  2010年参院選挙で自民復調ならず、 民主も後退の兆しが見られる中で自民 ・ 民主を離れつつある民意はどこに向ったか。

 

  投票総数が選挙毎に異なるので、 右図に各政党の比例得票率で推移を示した。

 

  民主は3年前の参院選では得票率では39%と自民より11%高くなっていた。 昨年の政権交代選挙では期待を集め42%へと押し上げたが、 今年は32%に後退。 国民の民主離れが始まっていると言える状況だ。 国民が民主に期待した 「国民生活が第一」 の政治を、 政権を使って実施していかなければ民主離れは確実なものとなるだろう。 しかし、 今の民主の中枢は自民同様、 国民生活より 「財界 ・ アメリカが第一」 が本音だけに民主離れは時間の経過と共に進んでいかざるを得ないだろう。

 

  自民は28%、 27%と推移し、 議席を増やした2010年参院選でも比例では24%と全体の4分の1を割る得票率に後退している。 今後も国民生活を地方と雇用 ・ 社会保障で破壊し続けてきた自民政治を是とするなら、 自民への支持が高まることはありえないだろう。

 

  他の従来政党の公明、 共産、 社民、 国民新党は3回の選挙はほぼ同率で推移している。

 

  昨年総選挙で旗揚げした 「みんなの党」 が14%の得票率を獲得して気を吐いている。 民主 ・ 自民の得票率を合計すると67% (2007年) →69% (2009年) →56% (2010年) と推移している。 2010年は13%もダウンしている。 その受け皿として2010年に 「みんなの党」 は14%と公明党を抜く得票率を獲得した。 その他の中にも 「たちあがれ日本」 「新党改革」 なども自民票を受け継ぐところもあったが、 自民を離れ、 民主にも疑問を感じた層は 「みんなの党」 への投票に回ったことが伺える。 特に公務員 「改革」 を掲げ消費税を上げる前にやることがあるとの訴えは都市部の勤労市民を中心に共感を呼んだ。

 

  しかし、 公務員 「改革」 に見られるように 「みんなの党」 も民営化 ・ 応益負担の新自由主義路線を主張する政党であり、 国民の生活への公的サービスを切り捨て、 安心を奪う可能性があることが明らかである。 一人勝ちをおさめた 「みんなの党」 もその政策への支持とは言えず、 保守支持層が 「引き算」 の結果で支持を表明したのに過ぎなければ今後安定した支持を確保していくことは難しいのではないか。

 

4  革新政党が支持を獲得できなかった訳

 

  2007年から2010年の3回の選挙を概観したが、 自民を支持してきた従来の保守支持層が民主やみんなの党へ投票を移したことがこれら選挙の特徴となっている。

 

  いわゆる革新政党は支持層を広げていない。 正確に言うと “ジリ貧” 傾向が見られる。 なぜ革新政党は支持を広げられなかったのか。 これについて私見を述べる。

 

<社民党>

 

  民主党政権が出来るのと同時に政権に参加し、 普天間の辺野古移設に反対して参院選直前に連立政権を離脱した社民党は比例で220万票余りと昨年の総選挙、 3年前の参院選挙より票数を減らしている。 共産党同様議席も減らした。

 

  普天間と政治とカネで鳩山辞任があった情勢を踏まえれば、 護憲 ・ 平和の党として普天間の辺野古移設に断固反対し政権離脱を図った決断には一定の賛意が寄せられてしかるべきなのだが結果は思わしくなかった。

 

  その原因の一つは、 立候補者数が比例6名、 選挙区でも9名に留まったことにあるのではないか。 この立候補者数では宣伝力がゼロに等しい。 他党がテレビCMを含め、 テレビニュース、 新聞報道、 街頭宣伝、 チラシなど大量宣伝によって選挙期間中有権者との接点を確保しているのに対し、 社民党はこの狭間にあってかき消されてしまう状況ではなかったのか。 比例220万、 選挙区60万の得票にとどまったのは従来の支持者以外にほとんど影響を与えていないことの現われである。 大阪の辻本氏の離党により更に国民接点が少なくなっていくのではないか。 東京都議会には社民党議員は不在など地方議員数の減少ともあいまって危機的状況とも思われる。

 

<共産党>

 

  志位委員長が8月の創立88周年記念講演で、 消費税増税反対の主張は正しかったが、 それでも財政は大丈夫とまでの言及がなかったことが日本の財政赤字は大丈夫かと考えている有権者の支持を得られるまでにはならなかった、 と反省を含めた総括の一端を述べた。

 

  これは2010年選挙で100万票減らした理由の一つだろう。 しかし、 少なくとも以下の3点が得票を伸ばせなかった原因と考えられる。

 

  1)  政党スローガン:いわゆるポジショニングだが、 「確かな野党」 「建設的野党」 とここ数年の政党ポジションを野党に置いてきた。 政権交代、 新しい政治を多くの国民が求めている時に、 野党では反対はするが政策立案 ・ 決定には参画できないことを自らが表明していることになると多くは受け止める。 有権者が頭から対象外にせざるを得ないとの心情をこれらのスローガンが作ったのではないか。 野党ポジションではなく、 政治を国民本位に進めてきた実績 (派遣法抜本改正や高齢者医療制度廃止での全野党 (当時) 一致の努力) など新しい政治には必要な政党であることの理解を図るポジショニングが必要だった。 民主党の 「国民の生活が第一」 のスローガンと比較しても差は歴然だ。

 

  2)  政策内容の示し方:安保条約の破棄、 財界支配打破は50年来共産党が掲げて来た政策である。 国民が求める新しい政治を進めるには従来の自民政治からこの2点で政策転換を図らなければならないことは鳩山前首相の普天間迷走を見ても明らかだ。

 

  しかし、 政策内容とそれをトップダウン的に宣伝することとの間には隔たりがあるのではないか。 国民の85%は安保条約を必要と考えている。 トヨタやソニーなど日本の大企業は 「悪」 とは考えず日本の誇りと思っている人が大多数ではないか。 そこに最初から安保破棄、 大企業の横暴を押えると言われても受け入れがたい。 何回か聞いている人 (50年にわたって言い続けているので少なくはない) は 「またか」 とその後のことばには耳をふさいでしまう。

 

  安保破棄、 財界横暴阻止も国民の要求実現のための 「手段」 なのだから、 政策での位置付けも要求実現に必要なこととすべきではないか。 派遣法抜本改正には派遣労働をあそこまで拡大させた大企業に責任があることの理解を広げ、 大企業の政治介入を監視する必要があることの納得を作り出していく努力とあいまってトップダウンの政策への理解が得られるのではないか。

 

  3)  組織の高齢化問題 : 40万人の党員と公表されているが高齢化も進んでいる。 行動力の低下もさることながら、 ジェネレーション ・ ギャップが生まれていないだろうか。 世論調査などでの支持者年令を見ても男女とも50代以上しかいないのが実情だ。 40代以下の層とコミュニケーションの場がないことの反映ではないか。 1960年代、 70年代の運動のように学生の間に政治論議を起していく運動を真剣に取組む必要がある。

 

5  おわりに

 

  選挙制度は永年の闘いによって国民が獲得した民主主義を保障するものである。 それを小選挙区中心になどと民意を歪める形に後退させてはならない (小選挙区を続けて来たイギリスでもその見直しが始まっている)。 いま、 民主党政権は代表がどちらになっても衆院比例削減を進めようとしている。 これは民主主義に対する攻撃であり阻止しなければならない。 同時に民意を反映する選挙制度 (全面比例) に変えさせる世論を作ることが重要と考える。

 

  選挙制度 (特に国政選挙) は、 近年その結果により政権が変わり、 国家権力を担う階級が変わりうる制度となっている。 労働運動、 市民運動など様々な要求団体が要求実現の行動を行っているが、 その実現の保障は国会による制度作成と行政での実施にまたれるところが大きい。 要求団体と政党が連携をして制度実現だけでなく選挙闘争に取組み政権獲得を進めることが必要と考える。

 

<本当の政権交代を求める日本の現状>

 

  日本の現状は、 労働者の3分の1が不安定雇用、 200万円以下の年収世帯が1,000万と貧困と格差は拡大している。 不安定雇用は企業経営の安全弁に使われ、 派遣切りは今後も横行する。 それは派遣労働者の生活の将来設計を作らせず、 派遣労働と派遣切りを繰り返され一生貧困のままで過ごさざるを得ない状況まで追い込まれている。

 

  正社員労働者は長時間労働を強いられ過労死も引き続き発生している。 一端職を離れると不安定雇用しか職の場はない。 働く女性は子供をお願いする保育園がなく待機児童数は過去最大となっている。 仕事と子育てかの択一を迫られ、 少子化と貧困の再生産を強いられている。 女性の職場差別も先進国中異常に高く、 男性労働者賃金の60%の賃金に押えられている。

 

  中小 ・ 零細自営業者はデフレ ・ 円高の下、 大企業の単価引下げ、 売上げ減の経営を強いられている。 倒産 ・ 廃業は続き、 生産 ・ 流通の根幹が崩されていっている。

 

  米価は下がり農業経営は危機に直面している。 食料自給率は先進国最低の40%だが、 いまの農漁業経営の実態からは経営自体が成り立たす、 それをさらに下回る危険も出てきている。

 

  自殺は年3万人を越え先進国中異常に高い数値を持続している。 その多くが経済的理由からで、 生活破綻、 経営破綻から自ら死を選ぶ悲劇が日常化している。

 

 生産を担う勤労者の状況を見ただけで従来にない危機と様々な要求の高まりがある。

 

  勤労者だけではない。 読売の世論調査では現状の生活と将来に不安を感じている層が85%に達している。

 

  子供の貧困、 大学の学費の高さによる高等教育の断念。 新卒採用の最低下など青少年が社会に出るまでに貧困と社会の歪みの影を落としている。 その格差は就労まででなく一生続く貧困として個人の希望を奪っている。

 

  年金者は医療 ・ 介護保険、 税の上昇で年金だけでの生活が不可能になって来ている。 保険あっても医療 ・ 介護なしの状況は進み、 必要な医療 ・ 介護を受けられない高齢者が増加している。

 

  沖縄をはじめとする基地被害はすでに住民が耐える限界を越えており、 基地闘争は基地撤去まで続くだろう。

 

  これらはすべて従来の政治が法律 ・ 制度改定などで作り出したことだ。 その背景には国民を搾取し収奪を行う財界とアメリカの要望がある。 従って、 これらに追従する旧来の自民党型政治 (対米従属 ・ 財界奉仕) ではこれらの要求を実現させることは出来ない。

 

  従来の政治支配を変える為には、 これらの要求闘争を高め、 一つ一つ要求実現を目指すと共に、 本当に新しい政治を目指す政党とともに政治闘争 (要求実現の選挙闘争) を行って行く必要がある。 政党の政策待ちにならず要求を政党にぶつけ、 その実現に向けての協力を得る。 それと共に要求実現の議席を確保する運動を進める。

 

  政党も要求を実現する政策を作り国会で実現に向け行動を行うとともに支持者を組織し政権獲得の道を作り出す。 粘り強くこれらの取組みを進めなければならない。

 

  その結果、 政党と勤労者 ・ 国民の統一戦線が作り出され、 それが広がって行くことで更に国民と政党の結びつきは強まり、 それを選挙闘争に結び付けていくことで本当の政権交代が生まれる可能性は高まっていく。