三枝和仁/広告会社勤務/リーマン・ショックの世界金融危機を拡大させたテレビCM。
アメリカのテレビ局と広告会社はこの責任をとったのだろうか?/10/04/17 ![]()
リーマン ・ ショックの世界金融危機を拡大させたテレビCM
―アメリカのテレビ局と広告会社はこの責任をとったのだろうか?―
三枝和仁 (広告ユニオン組合員)
マイケル ・ ムーアの新作 「キャピタリズム―マネーは踊る―」 を見た。 全編、 アメリカ資本主義の利潤追求第一主義の犠牲とそれへの闘いが、 例によってムーア監督のズウズウしいばかりのカメラ取材で映し出される。
【サブプライム ・ ローン被害を広げたテレビCM】
その中でテレビCMに触れた部分がある。 21世紀の世界恐慌を引き起こしたリーマン ・ ショックの背景にあるサブプライム ・ ローンを勧誘するテレビCMだ。 若い女性が視聴者に向かって親しく話しかけるCM。 「あなたの住宅でお金が借りられます。 いま不動産の価格は上昇しています。 借りることが賢い選択です。」 若い美しい女性が微笑みながら、 このようなコメントを語りかけるテレビCMが映画画面いっぱいに映し出される。 その直後、 映像は女性のにこやかな顔はそのままに、 マフィアの語り口に変わる。 「お金が欲しいだろう。 都合してやるよ。 後のことは後で考えろよ。 金があるほうがいいだろう。」 と。
実は、 私はサブプライム ・ ローン被害の全体像をこの映画ではじめて知った。 以前はサブプライム ・ ローン被害は、 新たに住宅を購入した人の住宅ローンの金利が高いので返済不能になったことが原因かと思っていた。 しかし、 それだけではなく今住んでいる住宅を担保に借金をした人の返済不能も多く含まれていたのだった。 日本のバブル崩壊と同様に不動産バブルがはじけ、 銀行ローンの担保となっていた住宅価値が低下した。 それにより銀行は一方的に担保の差し押さえ、 住宅の競売を図って貸付金を回収したのだった。
【借金をしたおかげで家を失った多数の家族】
映画 「キャピタリズム―マネーは踊る―」 の中では40年来住んでいた家を借金のかたに取られた家族が出てくる。 その家主が家を立ち去るとき 「銃を持って乱射するヤツの気持ちがわかったヨ。 俺はやらないけどネ。」 と言うシーンがある。 不動産の価格は上昇している。 だからそれを担保にカネを借りても、 数年後には数分の一の借金になる。 こうテレビCMで説得されて借りてしまった人の絶望的な悲劇だ。
この多数の悲劇 (映画では、 地域によっては一つの街が成り立たなくなる程に被害世帯が多いと報じていた) が何故生まれたか。 映画ではグリーンスパン米連邦準備制度理事会 (FRB) 前議長が住宅を担保としたサブプライム ・ ローンの規制緩和を行ったことを 「火種」 として告発している。 ハゲタカ金融資本に儲け口を差し出したと。
借りる方が悪い。 いつまでも不動産が上がるわけがない。 との意見もあるだろう。 しかし、 日本のバブルも同様の “儲けられるゾ” に踊らされて本来は生まれなかった多大な犠牲を生み出したのだ。
【テレビ局、 広告会社に責任はどうだったのか?】
住宅担保ローンの規制緩和が行われ、 サブプライム層 (貧乏人) にもカネが貸せることで金融機関は儲け口が新しく出来た。 広告会社はさっそく金融機関に広告を出してさらに儲けましょうとプレゼンをしたことだろう。 そして、 テレビ局の考査も通り、 テレビCMをバンバン流した。 はじめは眉唾で見ていた視聴者も何度も流れるテレビCMに洗脳され、 住んでいる家がお金儲けにつながればとつい借りてしまう。 その結果が40年来住んでいた家を、 行き先もないのに手放すことになってしまったのだ。
テレビCMを金融機関に提案した広告会社、 それを放映したテレビ局は 「広告主の依頼を実施しただけ」 で済むのだろうか。 被害を生んだ共犯では? あるいはそれを拡大し世界金融危機を招いたことでは主犯に近いのではないか。 マイケル ・ ムーアの映画ではそのことには触れられていなかった。 また、 情報に疎い私はアメリカでテレビ局や広告会社が金融危機の責任を問われたとは、 まだ聞いていない。 しかし、 経過を見ても広告会社とテレビ局は共犯、 大目に見てもほう助罪にあたるのではないか。
よく政治家は政治権力を行使する立場にあるので倫理観は一般人より厳しく求められると言う。 マスメディアに携わるメディア企業 ・ 広告会社も、 その影響力は多大なものがある。 従って、 その影響力が国民にマイナスをもたらさないかを厳しく自己チェックすることが求められているのでないだろうか。 そして、 不幸にして被害が発生した場合には、 車のリコールと同様、 バラまいてきた情報が間違っていたとお詫びと訂正の情報を流す義務があるのではないか。
【日本ではどうなのか】
そう。 マイケル ・ ムーアの映画で思い出した。 日本でも同じ様なテレビCMがある。 高金利の消費者金融 (サラ金) のテレビCMだ。 このCMの誘いにのって気軽にお金を借りた結末がどうなるか。 多重債務者となり、 人生を棒に振る被害が生まれている。 国が認めている高金利だからと言って、 借りた人が自殺 ・ 一家離散 ・ 破産などの被害を受けるテレビCM、 広告を野放しにしていて良いのだろうか。 いまも多重債務で苦しんでいる人は数十万人を下らないと言われている。 そして、 相変わらず広告は流れている。
メディアは、 自殺者が年間3万人を越えたと 「社会問題」 として告発する報道を行っている。 しかし、 その原因を作っているテレビCM、 新聞広告を同じ会社の中で受注し、 利益を上げていることに言及した報道は寡聞にして聞かない。 まして、 広告会社おやだ。