三枝和仁/広告会社勤務/キヤノンの「経済制裁」、「朝日新聞からキャノンの広告が消えた?」/07/04/08![]()
朝日の「御手洗日本経団連会長二枚舌」記事につむじを曲げ、御手洗会長出身企業のキヤノンが朝日への広告出稿を止めた
【事実関係の確認】
・06年11月14日、朝日新聞「道路財源御手洗氏板挟み」の見出しで“御手洗氏らの「二枚舌」がこの問題を一層混迷させそうだ”と報じる。
・11月中までは朝日、毎日、読売三紙にキヤノンは同程度の広告を出していたが、12月に入ると差が現れてくる。
この差でも特に次の二つは目立った。
・12月13日の読売見開き30段・全2ページの一眼レフの広告。朝日にはなし。
・12月20日〜23日の四日連続、読売・毎日へ15段・全ページ広告。朝日にはなし。
11月まで三紙同等に出していたことと比べると明らかに朝日に少なくなっている。
結局、12月の広告金額は朝日が1億4000万円に対して、毎日は2億4000万円、読売は5億7000万円だった(共に正価料金、毎日が少ないのは広告料金が低いせいで、段数は読売とほぼ同じ規模。朝日と読売は一段単価がほぼ同じ金額)。ちなみに11月の金額は、朝日2億8000万円、毎日1億1000万円、読売2億3000万円だった。明らかに朝日を減らしている。
キヤノンが朝日への広告停止の手段に出たことは、先月号で「ジャーナリストの阿部和義氏がキヤノンの広報部に確認したところ事実として認めた」と記したが、その内容は12月だけで4億円以上の停止と判明した。
広告掲載の新聞社の原価は紙代とインク代なので、広告費はマージンを除いてほとんど純益としての収入だ。そこでの4億円の収入減は、年々広告費収入の減る新聞社にとっては大きな痛手だ。しかし、広告欲しさに言論をまげてはジャーナリズムが廃れる。朝日には頑張って欲しいところである。
【言論と経済的報復】
キヤノンの“経済報復”の中身は以上見てきた通りだ。
自由主義経済の下、広告主がどのメディアに広告を出すのも自由との論議でこの問題を見過ごしてよいのだろうか。ことは言論・表現の自由に対する“経済報復”なのだから。
市民はメディアを通じて事実を知る権利がある。これがなければ市民は目・耳をふさがれ事実を知らされず、自分にとって正しい判断、行動が阻害され生命・生活が脅かされるからだ。
時の為政者がその政治権力をカサにメディアの報道内容に介入したら、市民は“自らの自由が侵害される”と許さないだろう。NHKの従軍慰安婦国際法廷番組に対する安倍晋三首相(当時官房副長官)の介入を許さないのはこの視点からだ。
気に入らない報道をしたメディアには広告費を出さず、以降そうさせないとする“経済報復”は権力をカサにした政治介入と同等のもの。そしてこれらは「自分の意見に反する意見は認めない」とする民主主義に反する行為なのだ。見過ごしてしまえばメディアだけでなく、政党・団体や一般市民も弾圧するファシズム社会になる可能性がある。そうなってからでは手遅れ。それは戦前やドイツの歴史が教えている。
戦後六十年を過ぎた日本の政界・経済界の中心人物が、このような行動を取っている。民主主義に関する初歩的認識がないことは残念なことだ。御手洗さん、安倍さんに民主主義の勉強をしてもらうか、今の地位を降りていただくか。どちらかが必要と感じられる朝日キヤノン広告事件であった。おっと、石原さんも同等なのを忘れていた。