仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ-/連載「六日のあやめ 十日の菊」(73)

ソマリア問題とテレビ 11/08/18

 

ソマリア問題とテレビ

 

仲築間卓蔵 (元日本テレビプロデューサー)

 

 東日本大震災の収束の、先は見えないままですが、ちょっとソマリアに目を向けてみましょう。
  世界保健機関(WHO)は8月12日、干ばつによる深刻な食料不足に見舞われている東アフリカのソマリアで、コレラ感染が広がっていることを明らかにしました。衛生状態の悪化が原因といい、今年に入り首都モガディシオでは181人がコレラの疑いで死亡したといいます。患者の7割以上が体力の弱い5歳以下の子どもといいます。

 そんなとき、日本テレビ系ニュース番組『ZERO』が8月16日、現地取材を交えてソマリア問題をとりあげていました。感心しましたねえ。
  ソマリアは長い間内戦がつづいています。疲弊しきっている人々に追い打ちをかけるような干ばつなのです。番組は、ソマリアから隣国ケニアに歩いて避難する人々の姿を伝えていました。ケニアが(避難民を)受け入れる許容量は9万人だそうですが、すでに44万人が流れてきているといいます。食料も 水も 医療体制も不足しています。「世界最大の危機にある」と報じていました。映像はその惨状を伝えていました。
  とかく見落としがちなソマリア問題をとりあげたことに敬意です・・・・・が、男性キャスターのコメントには違和感をおぼえましたね。「終わりよければ すべてよし」という言葉がありますが、終わりの一言で 折角の番組を「平易」なものにしてしまう場合があるのです。
  彼の一言は、「日本は、東日本震災で外国に支援されてきた。そんな時だけれど なんとかソマリア支援を考えねば・・・」でした。そんな程度のコメントなら 子どもにだって言えることですよ。もう少し掘り下げた発言にならないのでしょうかねえ。

    閑話休題
     ソマリア沖の「海賊対処法案」が審議されたのは2009年4月でした。
     24日本会議採決というスケジュールを1日前倒しで採決を強行しました。
     その日(23日)何が起きたか。SUMAPの草薙某が赤坂の公園で深夜、大声で   暴れた?というのでメディアは大騒ぎしたのです。彼の拘留は1週間つづきました。   その間、メディアは(とりわけテレビは)「海賊対処法案」のことなどそっちのけ   で草薙報道に目を向けつづけたのです。
     えてして、大事な時期に おかしな事件が起きるのです。

 「海賊対処法」は、自衛隊を海外へ派兵できるようにするための法案でしたよね。法案さえ通ってしまえば「一丁あがり」です。その後、ソマリア沖海賊問題がどうなっているのかなんて、大手メディアは無関心です。
  ソマリア問題を考える素材はあったのです。
  8月10日の衆院海賊テロ特別委員会はその一つでしょうね。赤嶺政賢議員が「2008年以来海賊対策として東アフリカ・ソマリア沖に各国が軍隊を派遣しながら、海賊行為の発生件数は逆に増加している」として、自衛隊派遣をやめるべきだと求めていました。
  赤嶺議員によれば、「今年の海賊行為の発生件数は177件と昨年同期比で1.6倍、発生地域は遠くインド洋やモザンビーク海峡にまで及ぶ」「軍隊が派遣されていない地域に発生場所が移っただけで、いたちごっこだ」とも。
  松本外相の答弁は「広い海ですべてをカバーすることは大変難しい」といいながら、「目の前にある犯罪を取り締まらなくてはいけない」です。
  赤嶺議員は、「大干ばつによる飢饉で危機的状況にあるソマリアに対しては、内戦終結と貧困解消など根本的な問題解決で役割を発揮すべきだ」と主張していました。・・・・・キャスターに この「視点」があったら 「鋭い番組」という評価につながったと思うのですが、どうですかね。
  ソマリア沖を航行する民間船舶の対応方針=「ベスト・マネージメント・プラクティス」(昨年6月公表)は、
  18ノット以上で航行していれば海賊に乗り込まれない。
  水面より8メートルを超える高さがある船舶は攻撃を回避できる可能性が高い。
と指摘しているといいます。「海軍の力だけでなく、船舶自らも防衛力を高める』必要があるとも。海運業界自身の努力も大事なんですね。

 ソマリア問題にしろ、原発問題にしろ、根本的な問題解決が求められるきょうこの頃なのでしょうね。


 

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