仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ-/連載「六日のあやめ 十日の菊」(59)

地デジ化完全移行は 延期するのがいちばん

 

地デジ化完全移行は 延期するのがいちばん

 

仲築間卓蔵 (元日本テレビプロデューサー)

 

 

 来年7月24日。地上デジタル完全実施となっています。
  いま使っているアナログ受像機は、このままだとただの「箱」になってしまいます。

 各局とも地デジ宣伝につとめていますが、NHKの力の入れようはケタはずれです。名のある俳優を多数登場させて、ホームドラマ仕立てでアピールしてみたり、「地デジ化応援隊」というのをつくってみたり。応援隊には王貞治さんや萩本欽一さん、桂歌丸さん、高橋英樹さんなどがズラリです。アナログ受像機の右上には「アナログ」という文字が居座っています。まるで「脅迫」ですよ。

 本当に移行できるのでしょうか。
  2011年7月24日に移行すると決めたのは2001年。たしか小泉内閣のときでしたね。そのために電波法を「改定」したのです。
  2003年を「デジタル元年」と称して、有名アイドル歌手などを使って宣伝を開始しました。
  移行の理由は「電波の有効利用」だといいます。国策なのですかね。いや、デジタルに移行すると大変な経済効果が生まれると計算した向きがありますね。そりゃそうですよ。この国にある受像機数は1億2千万台とか1億3千万台とかいわれています。それが全部買い替えられたとしたら大変な金額です。放送局も、設備投資に莫大な費用をかけましたよ。NHKから民放までが費やした金額は相当なものですよ。そのために経営が苦しくなっている局だってあるはずです。

 ところで、本当に移行できるのでしょうか
  デジタル元年から今年まで、いろいろ宣伝してみたものの、受像機の普及率は(総務省調査では)80%程度だそうです。民間の調査だと70%だといいます。2003年から7年も経って70%~80%です。あと1年で20%から30%がデジタル受像機に変わるのですかね。
  ムリです。
  まず、「そうでなくても生活が大変になってきている。買い替えるなんてとてもできない」人たちがたくさんいることを知っているのでしょうかね。
  「買い替えたけれど、見えない」という家庭もあります。
  放送の原則は「あまねく見ることができる」ことです。いろんな理由で見れなくなる人たちを切り捨てていいのですかね。

 「放送は国民のため」と日頃から言ってきた放送局も、「完全移行しなければ困る」と言いはじめているのですよ。
  現在のアナログ放送とデジタル放送をいっしょにやっていると(これをサイマル方式というのですが)経費がかかるというのです。
  たしかに経費はかかるでしょう。しかし、20%~30%の家庭が見れないままだと、スポンサーは何と言うでしょうね。「だったら広告費を20%~30%安くしろ」というでしょう。当然の要求でしょうよ。
  現状のサイマル方式を続けていた方が、民放にはメリットがあるのです。
  NHKもサイマル方式にかかる費用は、受信料収入の1%未満だそうです。やたら金をかけて宣伝している費用はムダ金を使っているようなものです。

 テレビの歴史は白黒テレビからカラーテレビ。放送技術の発達を阻止しようなんて言ってませんよ。どんどん研究はすればいい。デジタル化だって悪いわけではないが、なぜ いま急ぐのですか。みんなの生活が楽になって、どこでもちゃんと見れるようになって、「もうそろそろ移行してもいいか」という時まで待ってみたらどうですか。
  2011年7月24日地デジ完全移行は、延期するしかないじゃありませんか。ねえ。

 

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