仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ-/連載「六日のあやめ 十日の菊」(55)韓国哨戒艦 「天安」 沈没事件と 「メディアリテラシー」 ―そして、 長野県上田の 「無言館」 10/05/15

韓国哨戒艦 「天安」 沈没事件と 「メディアリテラシー」

 

―そして、 長野県上田の 「無言館」

 

仲築間  卓蔵 (元日本テレビプロデューサー)

 

 

  韓国海軍哨戒艦 「天安」 が、 黄海で沈没したのは3月26日夜でした。

 

  報道によれば  乗組員104人中、 46人が死亡。 韓国軍と民間専門家、 米軍調査チームは、 「水中での爆発」 が原因と発表。 爆薬を分析したら、 東欧圏で使われているものだということでした。

 

  また、 艦内からの爆破、 故障による破壊でなく、 機雷、 魚雷による可能性も高まったという説も流されました。

 

  となると、 誰しも 「北朝鮮によるもの」 と早合点しそうです。 「朝鮮戦争の再開」 説まで飛び出していました。

 

  しかし、 北朝鮮は関与を否定。

 

  韓国国民の多くは、 「冷静に対応すべきだ」 として、 一触即発?  の雰囲気はなくなりました。

 

  そして、 いまだに沈没の原因は確定されていません。

 

  この沈没事件を知ったとき、 どこかの 「自作自演」 かと思いましたよ。

 

  戦争の前には、 必ずといっていい 「自作自演」 がありましたからね。 古くは1898年、 アメリカがキューバをめぐってスペインと事を構えたときの 「メイン号爆破事件」 がありました。 あのとき、 多くのアメリカ兵は命を失いました。 何人かの日本人も含まれていたようです。 「自作自演」 でした。 そして、 対スペイン戦争。キューバはアメリカ支配となりました。

 

  ベトナム戦争のはじまりはトンキン湾事件。 仕掛けたのはアメリカでした。 新しくは 「9.11」。 いまだに謎に包まれていますが、 イラク戦争のきっかけになったことは間違いありませんね。 戦争の前には、 「えてして何かが起きる」 のです。 わたしたちは、 常にメディアリテラシー (読み解く力) を身につけておかなければなりませんね。 でないと、 とんでもないことになってしまう。

 

  感想を 「天安」 沈没事件に戻しましょう。

 

  「天安」 は、 真っ二つになって沈んだといいます。 機雷に触れただけで真っ二つになるのでしょうかね。 哨戒艦というのは、 そんなに柔なんですかね。 機雷でなければ魚雷ということになる。

 

  一つの情報では、 常時アメリカの潜水艦が黄海付近にいるといいます。 もちろん極秘の行動でしょうね。

 

  事件当日、 米韓合同軍事演習が行われていたそうです。

 

  極秘行動の潜水艦と合同演習。

 

  潜水艦のことを知らない哨戒艦が、 潜水艦を感知して攻撃する。 攻撃を感知した潜水艦が対応する。 結果は 「同志討ち」 です。

 

  そうだとしたら、 アメリカ潜水艦はどうなったのでしょうかね。

 

  いまだに原因が確定していないことに疑問を抱かざるをえません。 追跡報道を期待していますが、 どうやらうやむやになりそうな気がする。

 

  このような事態に直面すると、 かならず出てくるのが 「北朝鮮脅威」 論です。 「だから “抑止力” だ」 「軍備だ」 という人が声を大きくします。 「だからミサイル防衛網」 という人が出てくる。 それで利益を得ようなんて、 もう通用しないのではないでしょうかね。 人々は、 そんなに馬鹿ではありません。 もういい加減 「脅威」 を煽ることはやめてほしい。 どこの国の民衆も、 「戦争なんかイヤだ」 と思っていますよ。

 

  ことしは韓国 「併合」 100年です。 鳩山さんは、 まがりなりにも 「東北アジア共同体」 構想」 (いまどうなっているか定かでないが) をぶち上げたことがある。 北朝鮮脅威論とは相容れませんよ。

 

  そこで、 あらためて輝くのは 「日本国憲法九条」 だと思いますね。

 

  安保改定50年の年でもあります。 「九条」 を掲げて、 「日米安保」 をなくし、 新しく日米友好条約を結んで真の対等平等の関係をつくり直す時期だと思いますがねえ。

 

  北朝鮮 「脅威」 でなく、 「対話」 と 「交渉」 ですよ。 市民レベルで 「歴史認識」 について交流する必要もある。 遠回りかもしれないが、 これからの東北アジア、 いや、 世界は、 その方向に向かっていると思いますね。

 

 

  話は変わりますが、 5月半ば、 長野県上田にある戦没画学生慰霊美術館 『無言館』 を訪ねました。 20代で戦争に駆り出され、 死んでいった画学生の絵が、 無言で語りかけています。

 

  いい絵ばかりです。この人たちが生きていたらすばらしい画家になっていただろうと思わせる絵ばかりです。 戦争は、 文化の 「芽」 まで切り取ってしまうものだと思い知らされました。

 

  館長の窪島誠一郎さんは、 作家 ・ 水上勉さんの息子さんだそうです。

 

  窪島さんが、 開館の日 (1997年5月2日) に書いた詩も飾られていました。

 

  タイトルは 「あなたを知らない」

 

  遠い見知らぬ異国で死んだが学生よ

  私はあなたを知らない

  知っているのは  あなたが遺したたった一枚の絵だ

 

  あなたの絵は  朱い血の色にそまっているが

  それは人の身体を流れる血ではなく

  あなたが別れた祖国のあのふるさとの夕焼け色

  あなたの胸をそめている父や母の愛の色だ

 

  どうか恨まないでほしい

  どうか咽かないでほしい

  愚かな私たちがあなたがあれほど私たちに告げたかった言葉に

  今ようやく五十年も経ってたどりついたことを

 

  どうか許してほしい

  五十年を生きた私たちのだれもが

  これまで一度として

  あなたの絵のせつない叫びに

  耳を傾けなかったことを

 

  遠い見知らぬ異国で死んだッ学生よ

  私はあなたを知らない

  知っているのは  あなたが遺したたった一枚の絵だ

  その絵に刻まれたかけがえのないあなたの生命の時間だけだ

 

  一度、 『無言館』 を訪ねることをおすすめします。

 

  その日は、 静かな別所温泉に泊まりましたが、 シャトルバスでむかう途中の畑の中に、 「憲法九条を守ろう」 という大きな大きな看板がありました。

 

  なんという木なのか、 白い花が咲き誇っています。