仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ−/連載「六日のあやめ 十日の菊」(41)「目が見えなくなった」という それが問題だ08/09/10
「目が見えなくなった」という それが問題だ
仲築間 卓蔵
9月1日、防災の日。夜の9時30分、福田首相が記者会見をするというので注目した。「拉致問題でなんらかの進展があったのか」「太田農水大臣の更迭でも決めたのか」と思ったりしたのだが、なんと「辞める」という。辞任理由は「ねじれ国会で苦労した。新しい体制で臨時国会の審議に臨んでほしい」である。安倍前首相につづいて二度目の政権放り投げである。開いた口がふさがらないというのは、まさにこんな時のことをいうのだろう。
「まるでひとごとのように聞こえる」という質問に、「わたしは自分自身のこと
は客観的に見ることができる。あなたとは違うんです」と逆ギレぎみに答えていた。この質問は話題を呼んだが、ぼくがおもわず肯いたのは、「安倍前首相も唐突に政権を投げ出した」という質問に対する答えである。「安倍さんは、健康問題でお辞めになった。わたしは健康に問題はない。目が少し見えなくなったぐらい」と。
各メディアは首相の「軽口」と聞き流していたようだが、「目が見えなくなった」というところがおもしろい。年金、後期高齢者医療制度、テロ特措法、消費税、格差拡大など、解決しなければならないことが「見えなくなった」のだ。まさに自民・公明政権の行き詰まりを象徴する言葉として受けとめた。
翌日から自民党総裁選挙「劇場」がはじまった。パフォーマンス好きのメディアは直ちに飛びついた。「“小泉劇場”に振り回された反省をして、報道も自重しなければ」(鳥越俊太郎さん)という意見も出はじめているが、テレビ報道は、この騒ぎを止める気はないと思う。総裁候補の動向を報道すれば、「視聴率」がとれるのだ。新聞だってそうだろう。
だから、「やめてくれ」とは言わない。せめて、「自民党のタライ回し総裁選で、国民生活は変わるのか」、予算国会が控えているのだから、「この際、大企業優先の政策を見直す気があるのか、米軍のための“おもいやり予算”をなくすとか、防衛費を大幅に削減させるとか、アメリカ従属を断ち切って、対等・平等の関係をつくるチャンスなのだ」など視聴者、読者が切実に、身近に感じている要求を、総裁選報道と並行して取り上げることができたら、あの“小泉劇場”に振り回された教訓を生かすことができると思う。
国民の思いと総裁選のギャップが明らかになると思う。「知る権利」に応えることになる。みのもんたさんも『朝ズバッ』で、「安保条約を見直すわけにはいきませんかね」と、ゲストの国会議員に聞いていた。視聴者の多くは、国の予算の使い方を、この国の在り方を、真剣に考えはじめていることを知るべきだろう。
その期待に応えることができなければ、“小泉劇場”以上の「罪」をつくることになる。結果的に、自民・公明政権の延命に手を貸すようなことをしないでほしい。たのむよ!メディアは、かつてない大事な時期のど真ん中にいるのだ。