築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ−/連載「六日のあやめ 十日の菊」(40)8月の思い 二題08/08/14

 


 

8月の思い 二題

 

 元日本テレビプロデューサー 仲築間 卓蔵

 

 08年度のJCJ賞は、中国残留孤児二世・城戸久枝さんの『あの戦争から遠く離れて・私につながる歴史をたどる旅』が黒田清JCJ新人賞に。キャンペーン報道『揺らぐ安全神話・柏崎刈羽原発/中越沖地震からの警告』(新潟日報)、NHKスペシャル『セーフティーネット・クライシス/日本の社会保障が危ない』、(NHK制作局)、森達也さんが書いた『死刑/人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う』がそれぞれJCJ賞に。朝日新聞連載の『新聞と戦争』がJCJ大賞となった。

 

 Nスぺ『セーフティーネット・クライシス・・・・』には経緯がある。「社会保障全般について歴史的に検証」し、放送は5月11日に放送されたが、5月20日の参院総務委員会で磯崎陽輔議員(自民)が、この番組は「政治的に偏向した番組だ」と非難した。

 

 この質問をめぐって、委員会の理事会で議論が交わされたいう。その後、高嶋良充委員長(民主)は「本総務委員会は、NHKの予算や決算等の審議を通じて、放送の健全な発展と公共放送としての番組の政治的公平性の確立を図り、さらに、報道の自由や表現の自由を守っていくという責務を有している」「個別の放送番組に対する発言は、その内容が番組編成権の干渉に及んだり、放送番組編集の自由を阻害するおそれのないものでなければならない」「改めて委員各位にも認識を深めていただきたい」という趣旨の委員長見解を読み上げたという。

 

 「参院選効果」は、放送をめぐってもあらわれているといえる。まさに、民意が放送を支えているのだ。とかくNHKのダブルスタンダード(ドキュメンタリー番組は頑張っているが、肝心の報道番組は国民の立場にたっていないという)が指摘されている。NHKも頑張りどきである。

 

 『新聞と戦争』の受賞者の一人である朝日新聞編集委員の上丸洋一さんは、かつて(朝日の役員会は)「戦争協力は国民の義務だとして、権力に従うことを決定した」「国家の外に立つことは、そう簡単なことではないが、ジャーナリストである以上、(たとえ「愛国心」を疑われようと、将来あるかもしれない戦争について)国家の善悪を判断する力を持たなければならない。ジャーナリズムにゴールはない」と現場ならではの思いを語った。賞を贈る側も受ける側も、参加した市民のみなさんも、「いまが踏ん張りどき」を実感した“8.15市民とジャーナリストの集い”だった。

 

 

 番組も、連続性で見るとあらたな感動をおぼえる。8月7日に放送されたNHKスペシャル『解かれた封印/米軍カメラマンが見たNAGASAKI』と、9日の長崎平和祈念式典の中継だ。

 

 『解かれた封印』は、幼い弟の亡がらを背負って火葬の順番を待っている少年の写真で知られるカメラマン、ジョー・オダネルと、その意思を継いだ息子・タイグの生き方を描いている。原爆投下直後の長崎を撮った30枚の写真は長い間封印されていたが、オダネルは43年後に公表する。が、出版は断られ、「原爆投下は必要だった。謝る必要はない」「おまえは裏切り者だ。日本へいけ」などの迫害をうける。オダネルはあの時、あの少年に声をかけたが、少年は答えず、ただ唇を噛みしめていたという。

 

 写真展を見たアメリカの若者は、「原爆の写真を見て、こんなに心を動かされたことはない」「これがイラクで撮られた写真だったら、駐留を考え直すだろう」という。息子オダネルは、「小さな石であっても、波紋は少しづつ広がっていく」と、地道に写真展を続けていく決意を語る。

 

 オダネルは、あの少年を探しつづけたが、見つからぬまま07年、奇しくも8月9日に亡くなっている。

 

 8月9日、長崎平和祈念式典で、爆心地に近い山里小学校の児童たちが(永井隆博士作詞の『あの子』を歌った。「あァあ、あの子が生きていたならば・・・」の合唱に、あの少年の写真がオーバーラップして見えた。