仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ−/連載「六日のあやめ 十日の菊」(34)/ 他人事でない 映画「大いなる陰謀」 08/04/30

 


 

 ロバート・レッドフォードが7年ぶりにメガホンをとったという『大いなる陰謀』。彼は、たしかイラク戦争反対を表明している俳優の一人だったと思う。
 メリル・ストリ-プ演じるテレビの報道記者が、共和党の次期大統領候補と取り沙汰されている気鋭の上院議員(トム・クルーズ)に、ご指名で呼ばれます。
 アフガンの行き詰まりを打開する「新規作戦をやるから、報道してくれ」という。「新規とは”アメリカ軍の撤退”か」と彼女は問う。議員が進めている作戦は、雪山の頂上に精鋭部隊を運び、雪解けを待って現れるアフガン軍を頂上から殲滅するというものだ。
 局の上司は「特ダネだ」と、直ぐに報道しろという。彼女は反対するが、上司から返ってきた言葉は、「君も57歳。介護の母親も抱えている。職を失うようなことがあっていいのか」である。
 新規作戦は、速報でながされることになる。
 これが一つの縦糸のストーリー。

 もう一つの縦糸は、ロバート・レッドフォード演じる大学教授と学生のやりとりです。
 折しも成績発表の時期。
 成績はABCDのランクがある。教授は、ランク別に表現を変えながら今後のことを話しかけます。教授の持論は「現政権は当てにならない」「自分たちで決断するしかない」です。
 Aランクの学生2人は志願してアフガンにいきます。
 長期欠席の学生が呼ばれます。志願すれば成積はよくなりそうです。しかし彼は納得できません。教授は、「決めるのは君だ」「(あの2人について)ぼくは止めたんだが、自発的に志願した」といいます。その学生は、教授の意図を見抜きます。政権批判と「愛国心」。そして「自発的」決断を誘導しているのです。

 上院議員の「机上の新規作戦」は、最初からつまずきます。輸送ヘリの事故で、あの2人の学生は厳寒の山腹に投げ出されます。アフガン軍に発見されます。救援機がアフガン軍を攻撃しますが、2人も命を落とします。

 やり場のない悔しさを噛みしめながら運転するするメリル・ストリープ演じる報道記者の目に、アーリントン墓地の夥しい墓石がひろがります。

 まるでゲームを楽しんでいるかのような作戦計画。若者の命なんてどうでもいいのです。
 政権批判とセットの「愛国心」の植え付け。「自発的志願」を誘導する教授。
 
 そして、マスコミの「特ダネ主義」

 アメリカ映画も 捨てたものではありません。
 同じことがこの国でも進行しているのです。
 お暇なとき ぜひ。『大いなる陰謀』の紹介でした。