仲築間卓蔵/連載「六日のあやめ 十日の菊」(26) //07/06/15


ベネズエラの大手民間テレビ局RCTVの
           閉鎖問題を考える

5月末 テレビニュースが 「ベネズエラの民間テレビ局ラジオカラカステレビ(RCTV)は
放送免許が切れる27日、 クーデターを策謀したテレビ局の免許更新は認められないとする政府方針
どおり閉鎖された」と伝えていた。
「言論・表現の自由に背く」と叫ぶ人々の姿や 「RCTV最後の日のスタジオ風景」が映し出されていた。
 ニュースを見るかぎり「ベネズエラで独裁が始まった」ような印象をうけたものである。ベネズ
エラで いったい何が起きているのか・・。とりあえずベネズエラの歴を調べてみた。
 1830年に独立国になっている。
 1958年の民主化以降 文民による民主主義政権によって統治されている。

  1. 新憲法で大統領権限が強化されている。
  2. 普通選挙でウーゴ・チャベス再選。貧困層重視の政策は富裕層 中産階級 以前の有力政党と結ぶ労働組合から強い反発をうけた。

 2002年4月 軍部ク―デターでチャベス逮捕。しかし 大衆の大規模デモ 軍内部の反乱によってて失敗。
     12月から03年2月、石油産業でチャベス辞任を求めるストライキ。経済は大打撃をうけた。
 04年8月 大統領リコール国民投票。結果は58% 42%で否決。野党は選挙結果を認めず 05             年の議会選挙で主要野党は選挙ボイコット。
 06年12月 チャベスは63%の得票で三度目の当選。野党も選挙結果を承認している。

 

 「日刊ベリタ」は“チャベス政権の放送局閉鎖は本当に強権的か“”黙殺されるRCTVの放送理規約違反“という見出しで 「米欧を中心に各メディアはここぞとばかりにチャベス政権の措置を“強権的な言論弾圧”と批判した。だが 02年4月の政変で チャベス大統領が2日間政権を追われた際 RCTVは他のテレビ局と共謀してク―デターを扇動する役割を果たした。以降も 政権転覆を扇動するなどベネズエラの放送倫理規約に違反するRCTVに対し チャベス大統領は刑事訴追はせず放送免許更新の拒否にとどめた」「RCTVに代わり5月28日から放送開始した新しい公共テレビ(T
VES)は ベネズエラ国民に様々なニュース番組を提供する。この国のメディアは庶民のための
ものではなく エリート主義のビジネス利益に代表される有力企業に掌握されている。TVESの
副社長は“新テレビ局開設で ベネズエラ国民全てが今まで以上にニュース報道に参加し関わるこ
とができるだろう“と話している」などの外信を伝えていた。

 

 ロサンジェルス・タイムズ(5月30日付け、元AP通信 ベネズエラ在住8年のバート・ジョー
ンズ記者の寄稿)は「RCTVがチャベス打倒のために行ったもっとも悪名高い行動は 02年4月
11日のチャベスを狙ったクーデター工作のときだった。反乱前の2日間、RCTVは予定されてい
た通常番組をとりやめて、チャベス打倒をめざすゼネストの報道で埋め尽くした。次々と現れる解説
者が チャベスを痛烈に攻撃する言葉を絶え間なく吐き続けた・・。その間 政府側からの反論は
いっさい認めずにだ」「カラカスの街頭は怒りに燃えていたが RCTVはアニメやメロドラマ、“プリティーウーマン”などの古い映画を流していた」「当時 RCTVはチャベス打倒をめざす4月11日のデモ行進への参加を国民に呼びかけるノンストップの宣伝を行い 事態の包括的な報道を流した。デモが最後に 暴力に発展すると RCTVやグロポビシオン(別の野党放送局)は(実際には クーデター勢力の狙撃犯が市民に向かって発砲したのが発端だったが)狙撃犯に反撃するチャベス支持者の姿だけを捉えた場面だけを 意図的に流した」と伝えている。日本で放送されたニュースは どうやらこの意図的に編集されたもののようだ。

 RCTV局内はどうだったか。「制作マネージャ―でクーデターに反対したアンドレス・イサーラ
は 共犯者にならないために即座に辞任した」という。
 いま ベネズエラはどうなっているのだろうか。
在ベネズエラ日本大使館のHP“安全情報”を見ると 「政府支持派デモ100万 6月2日」「学生
団体等によるRCTV閉鎖に抗議するデモ 15万、6月5日」「同様の女性のデモ5000人 6月10日」とあった。

 バート・ジョーンズ記者は「今回の問題は 検閲の問題ではない。ベネズエラではメディアの90%以上は民間が所有しており 敵意に満ちてチャベス政権に反対しているRCTVは 口封じされるどころか 衛星とケーブルを使って放送し続けることを許されているのである。ベネズエラでは英国と同様にテレビ局は放送できる内容を管理する法律を遵守しなければならない。BBCあるいはITV(英国の大手民放)が反政府クーデターの一翼であった場合の結果を想像してみるがいい。ベネズエラの件は 同様に考えることに値するこ
とだ」ともいう。

 ベネスエラの事態は他人事ではない。「言論・表現の自由」「放送局の役割」「ジャーナリズム」「民主主義」「メディアリテラシ―」・・・・。あらためて考えさせられる機会だ。
日本も「同様に考えることに値する」時代に入っているような気がする。
                   (これはJCJ機関紙「ジャーナリスト」“テレビの本音”
                    に書いたものです)