仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ-/連載「六日のあやめ 十日の菊」(109)

『花子とアン』とNHKと沖縄 14/09/05

仲築間卓蔵 (元日本テレビプロデューサー)

 8月18日。辺野古沖の海底ボーリング(掘削)調査が強行された。琉球新報は19日の社説“辺野古掘削開始 自然破壊恥じぬ政府の厚顔”と題して「あの美しい海に、ついに穴がうがたれた。(中略)沖縄に対し日米両政府がとっている姿勢は近代以前の専制君主的反民主主義だ。沖縄は民主主義的手段で民意をはっきり示し、国際社会に堂々と訴えればよい。国際社会の良識がどちらを支持するかは火を見るより明らかだ。沖縄の海に穴をうがつか否か、沖縄の土地に軍隊を置くか否か、決めるのはウチナーンチュである」と。

 同じ頃、沖縄で活動している人からメールが届いた。「海上保安庁のゴムボートが一斉に私たちの3艇のカヌーの方に、水しぶきをあげて向かってきた。真っ黒いゴムボートに黒いウエットスーツを着た保安員が7人づつ乗って何艇も向かってくるのにはさすがにゾッとした。“安全のため”と警告を発する。二度言ったかと思ったら、一斉に“確保っ”と襲いかかってきた」「海を埋めた船の数に、誰かが“沖縄戦の時(米軍の艦艇)もこうだったのか!”と叫んだ」「小さな抗議船と2隻のゴムボート、カヌー12艇(あと5艇は大浦湾側にいた)に、大型巡視船、ゴムボート、チャーター船が海を埋め、追いかけまわし襲いかかる。少なくとも10年前は、海上保安庁は“海での安全を守る”に徹して後方にいたが、今回は海上保安庁が前面に出て防衛局は後ろに引っこみ、(沖縄タイムスによれば)“抗議船排除に失敗したらおまえたちに未来はない”と脅しをかけられ、反対派に襲いかかる」「辺野古では国民の命が軽視されています。海上保安庁は防衛省や政府の方ばかり向いているんです」と。東京でウロウロしていて支援に行けない身としては“隔靴掻痒”である。

 テレビはどう伝えたか・・・。少なくともテレ朝、TBSは米軍キャンプ・シュワブ前抗議集会の模様をとりあげ、反対派の声を紹介していた。目を引いたのは8月24日の『サンデーモーニング』(TBS)だ。「ボーリング調査(21か所で予定)、最大50メートルの穴を掘り地盤の強化などを調べる」と説明。仲井真知事のコメントは「土地調査は予想されているプロセス。反対派の人もいることはわかっているが、お互いに抑制を利かせて、大のおとなはやるべきだ」とまるで他人事である。司会の関口宏さんが一言つぶやいた。「その大のおとなが11月の県知事選で(知事を)選ぶというわけですね」と。
  コメンテーターの一人の目加田説子さん(中央大学教授)は「既成事実化しようということですよね。悲しいのは、地元の方同士で対峙せざるを得ない構図がつくりだされていること」「高江でヘリパッド建設が進められている。沖縄の負担軽減になっていないことをわれわれは知っておく必要がある」と。

 NHKはどう伝えたか・・・。ボーリング調査開始の18日、『ニュースウオッチ9』はわずか40秒報道しただけ。日本地図を作った伊能忠敬と弟子・間宮林蔵の話は8分。「政府が右といったことを左というわけにはいかない」という籾井会長発言をいまだに忖度しているとしか思えない。ついでに言えば、安倍改造内閣が発足した9月3日の同番組。新閣僚インタビューを延々。そこに「意見」はない。その日の「日刊ゲンダイ」は“この国の政府は 愚者の集団か”と痛烈。イギリスのフィナンシャルタイムスは「安倍の第3の矢は、軍国主義か」と評しているという。NHKのあすは暗澹である。

 一方、朝ドラの『花子とアン』。花子の親友・蓮子(柳原白蓮のモデル)は、「戦地へやるために純平(息子)を生み育ててはいない」「わたしは時代の波に平伏したりしない。言いたいことを言い、書きたいことを書くわ」と言って花子と決別した。その後の番組『あさイチ』の出演者の一人が、「蓮さまの言っていること、よくわかる」とコメントしていた。“NHK 朝ドラだけは平和主義”という川柳そのままである。

◆余談だが
こんな話を聞いた。「広島の安佐南区八木地区は、かつて“蛇落地悪谷”(じゃらくあしや)と呼ばれていた」という。「“蛇が降りるように水害がおきる悪い谷”とされていた」という。「その地名が変更された。そして土地開発が進んだ」と。となると、被災者は騙されていたことになる。まさに「人災」である。土地開発地域だったという報道はなされたが、‘蛇落地悪谷“という伝え方はなかったのではないだろうか。知らなかったのか、知っていて伝えなかったのか・・・。気になることの一つだ。


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