仲築間卓蔵/元日本テレビプロデューサ-/連載「六日のあやめ 十日の菊」(108)

8月6日の朝 14/08/06

仲築間卓蔵 (元日本テレビプロデューサー)

 8月6日 朝。このところ平和記念式典はテレビの前での参加である。
  8時15分、鐘の音を合図で黙とうした。
  原爆投下から69年。この日の広島は雨。43年ぶりの雨の中の式典だという。45000人が参加したという。ケネディ・アメリカ大使の姿もあった。

 松井一実・広島市長の「平和宣言」。「その年のうちに14万人が命を落とした」「戦争文化ではなく、平和文化をつくっていく努力を怠らないことの大切さ」「人類の未来を決めるのはみなさん一人ひとり」と。そして、日本政府に対して「日本国憲法の崇高な平和主義のもとで69年間戦争をしなかった事実を重く受け止める必要があります」(集団的自衛権容認については触れなかったが)「今後とも名実ともに平和国家の道を歩み続け、核保有国と非核保有国の橋渡し役としてNPT体制を強化する役割を果たしてください」と訴えた。

 安倍首相も壇上に立った。
  「世界恒久平和のために力を注ぎます」「核廃絶に力を尽くすことを惜しまない」「わたしたちには核兵器のない世界を実現する責務があります」と・・・・。言うこととやっていることの落差の大きさを、この場でも感じてしまう。彼の言う「平和」という言葉が空しく雨空に消えた。拍手があったが、まばらである。

 広島の小学校6年生の田村怜子さんと牟田悠一郎くんが作文を読んだ。原稿は用意していたが、二人とも見ることなく語りはじめた。
  「当たり前であることが平和なのだと気づきました。平和とは何か、自分で考え友だちとも意見を交流しています」「みなさん、広島で待っています。平和について、これからについて、共に語り合いましょう」と。
  田村さんの祖母、牟田くんの祖父は被爆者である。

 式典の中継はNHKだけ(8時~8時37分)。番組は「安らかに眠ってください。過ちは繰り返しませぬから」と刻まれた碑を映しながら、「あらためてかみしめる8.6のヒロシマです」と結んだ。

 民放キイ局にチャンネルを回してみた。どこも式典中継は なし。
  延々とやっていたのは理化学研究所の笹井氏自殺問題だった。

 『花子とアン』につづく『あさイチ』は”戦争を考える”終戦69年 子どもたちと戦争”。ひとりの子どもが紹介した「祖父の言葉」が印象的だった。祖父は、「(・・・・過ちは繰り返しませぬから)というこの誓いの言葉が生きている限り、平和はつづけられる」と言っていたという。
この「誓い」、あだやおろそかにはできない。


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