小中陽太郎/作家/いま問う!志としてのテレビ /07/02/26


いま問う!志としてのテレビ
「絶滅種テレビを発掘する」を3月17日名古屋ヤマハホールで

小中陽太郎(作家)

 

NHKの従軍慰安婦問題をめぐる「女性国際戦犯法廷」の番組をNHK上層部が改変したことに対して、東京高裁は、「国会議員などの意図を忖度して番組を改編(裁判用語らしい)」と認め、NHKと製作会社に対して「戦争と女性への暴力」バウネットに200万円の支払いを命じた。阿部晋三官房副長官らの政治家とNHK幹部の話は密室でうかがい知れないから、とここは闇の中。すると松尾総局長はかってに怯えて勝手に番組を改変した腑抜けということになる。抗議すべきだねと、しないかな。「取材される側の期待権」という乱用されると番組にチェックを与えかねない概念まで登場した。
え?NHKにまだ期待していたの?などとはひやかすまい。この言葉は「信頼関係」とでも解釈しておこうか。
わたしはこの一連の事件に大きな衝撃と感動を覚えてきた。衝撃は、政治家にお伺いを立てるのは、私の在任中からNHK内部で日常茶飯事であったからだ
感動は、高裁判決直前に勇敢に内部告発した長井暁の発言だ。こういう後輩もいたか。
発奮して、これまで書いてきたNHK論や、名古屋を中心とする「市民と言論」実行委員会の活動をあつめてこの3月に「一人『一人ひとりのマスコミ』」(創森社)を刊行することにした。趣旨は、テレビであれ、活字であれ、講演であれ、人類の営みは政治や戦争の波にも、消えることはない。もしそれを守ろうという強い意志さえあれば、というに尽きる。さらにそれを映像でも示したいと考えた。
それがこの3月17日に名古屋のヤマハホールで開く「絶滅種テレビを発掘する」である。名古屋市伏見、ヤマハホール3時〜7時(052−201−4757)。すると企業の中で努力する現場から「絶滅と決めつけられてはかなしい」という声が上がり、現在への提言を入れて「いま問う!志としてのテレビ」と副題をつけた。こうやってテーマが深まるのが準備の一番うれしい段階だ。
第1部として個人史としてわたしのかかわった映像を見てほしい。仲間の作品も。
第2部で、いまのテレビのなにが問題で、どう未来を切り開くのか議論しようではないかということになった。実は長井の直接の上司で、NHKスペシャルの担当部長だった中田整一からNHKスペシャルが解体されていく経過をつぶさに聞いていた。かれは怒って映像から活字に転じ、「満州国皇帝の秘録」で昨年の毎日出版文化賞を受賞した。快挙である。NHKにはまた「テレビは戦争をどう描いてきたか」で歴史の証言者としてのテレビを活字で記録した桜井均もいる。民放からは東海テレビプロダクションの元社長の大西文一郎、それに新聞から、護憲の立場を訴え続ける中日新聞編集局長の佐藤毅、市民運動からは市民メディア全国交流協議会共同代表の木野秀明が、発言してくれる。
その間にも、「あるある大辞典U」の捏造問題発生、総務省の介入を自ら招きそうな事態になり民放連は活動停止。
わたしは拙著で訴えたが、一人ひとりの製作者、ジャーナリストが、人間として、真実を追究することが、ジャーナリストの良心である。そのことを肝に銘じ、現場で学ぶ以外にない、それ以外にいくら組織をいじってもだめである、と思っている。
しかし個はそれだけでは完全ではない。信頼できる仲間がなければ真実は守れない。個の自覚と団結があれば負けることはない。
第3部で、この50年ともに表現に携わってきた芸術家を見てほしい。現役時代からの越智実は傘寿で「白鳥の湖」を振り付けした。その人が踊ってくれるし、小田実とのドラマのなかでモダンダンスを踊った関山三喜男も新作をもって駆けつけてくれる。真実と芸術が手を結ぶ。人々が心を合わせる限り、映像も戦いの記録も消えない。
これをムーブメントの滝沢篤が、ポスターにつくり名古屋大学の黒田光太郎教授がデジタル化して、僕の学生が一斉に配布を開始した。わたしも目下手作りのDM発送中。カッターでチケットを切り抜いて作る毎日だ。チケットは名古屋ヤマハか、インターネットで。
http://home.c01.itscom.net/ykonaka/
こんな楽しいことがあったかだ、胸が膨らむ。
もしうまくいったら次は東京だ。
小中陽太郎への連絡、ケータイ090−5753−5142
FAX03−3701−5701
Email: konaka@nagoya-ku.ac.jp