高橋邦夫/映画人九条の会事務局長/改憲手続き法案は修正されてどうなったか /07/01/23


改憲手続き法案は修正されてどうなったか

高橋邦夫(映演労連委員長/映画人九条の会事務局長)

 昨年秋の臨時国会で、 与党と民主党は改憲手続き法案の修正協議を繰り返し、ほぼ一致をみたと報じられた。しかしその修正の中身を検証してみると、改憲手続き法案の危険な本質はほとんど変わっていない。私が特に大問題だと思うのは、次の三点である。
 

 第一の問題は、テレビ・ラジオによる有料CMについてだ。与党修正案は「14日前から投票日まで禁止」、民主党修正案は「A案.14日前から投票日まで禁止」「B案.14日前から投票日まで禁止+放送業者への賛否平等取り扱いの配慮規定」「C案.発議した日から投票日まで禁止」となっている。「14日前から投票日まで禁止+賛否平等取り扱いの配慮規定」あたりが落とし所なのかもしれないが、テレビCMについての「公正なルール」など簡単にはできない。想定されている「平等取り扱い」は放送料金の平等程度のようだから、投票日2週間前までは金持ち政党は圧倒的な改憲キャンペーンができることになる。これでは、国民はマインドコントロールの嵐にさらされ、金で憲法が変えられる事態になりかねない。
 

 第二の問題は、憲法改正の承認要件だ。マスコミ報道等では与党と民主党とも「投票総数」の過半数にした、とされているが、それは間違だ。与党修正案では、「投票総数」とは名ばかりで、「投票総数は賛成票と反対票を合計したもの」となっていて、白票は無効とされる。これでは「有効投票数」の過半数と変わらない。「有効投票数」を「投票総数」と言い換えただけのごまかしである。
 民主党修正案も、「A案.投票総数の過半数」「B案.与党案と同じ、投票総数は賛成票と反対票を合計したもの」「C案.投票用紙に『棄権』記入欄を設けるものの、投票総数は賛成票と反対票を合計したもの」というもので、B案、C案は、実質的には与党案と同じように「有効投票数」を「投票総数」と言い換えたにすぎない。最低投票率の導入については、与党と民主党は一致して拒否しており、「少数の賛成で改憲」の危険性は変わっていない。改憲のハードルはあまりに低い。
 

 第三の問題は、公務員や教育者の運動についてである。与党修正案、民主党修正案とも、国民投票法上の罰則は設けないとなったが、「地位と影響力、便益を利用した運動の禁止」は残っており、行政処分の対象になる。東京都が「日の丸・君が代」で教職員の処分を乱発したような事態も想定される。
以上の三点だけでも、「修正」改憲手続き法案がどんなに危険なものか明白だ。加えて言えば、投票権は18歳以上になったが、与党案では国民投票時までに公選法や民法等の規定が18歳に変わらなければ、投票権は20歳以上のままだ。
 一括投票か個別投票か、という点に関しては、与党案、民主党案とも当初から「関連する事項ごとに発議する」とあり、修正協議の対象になっていない。しかし、何をどこまで「関連する事項」とするのか、は不明のままである。
 改憲手続き法が成立すれば、改憲へのレールが敷かれ、改憲への手続きが開始される。こんな改憲手続き法のままで改憲についての国民投票が行われるとなると、これは極めて危険である。こんな改憲手続き法案は絶対に廃案にしなければならない。